2021年2月定例会 山口典久議員一般質問
1.コロナ禍におけるケア労働への支援について
- 【山口典久議員】
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日本共産党県議団の山口典久です。
新型コロナウイルスの感染拡大による危機の中で、医療、介護、福祉、保育など、いわゆるケア労働の役割、価値が改めて見直されました。
ケア労働なしに人は生きていくことはできませんし、尊厳ある生活は保障されません。また、未来を、社会の土台を支える仕事でもあります。
しかし今、そのケア労働に関わる人たちが困難に直面をしています。
以下2点伺います。
最初に、保育所や学童保育等で働く皆さんです。子供たちはすぐに密接・密集状態になり、真冬でも窓を開けっ放しにして換気しています。子供たちのマスクに常に注意を払い、ドアや机、遊具やおもちゃも消毒する毎日で、大変な苦労とストレスの中で働いています。
しかし職員の皆さんへの慰労金や手当は、支給されているところでも、一日、例えば100円など僅かなものにとどまっています。
保育士は、多くの知識や高い専門性が求められるにもかかわらず、一般職に比べても10万円も月収が低いなど、保育士不足の解消のためにも処遇改善は喫緊の課題です。
本議会では、そのための対策を強く要請した意見書が採択された経過もあります。同じく放課後児童クラブの職員についても、子供たちの健全な育成と安全かつ安心な生活の場所を提供するため、専門職員の確保に向けた処遇改善に必要な財政措置を拡充するよう国に求める意見書も採択されています。
こうした中で、関係部局を先頭にした様々な取組が行われながらも、なかなか待遇の改善が進まないのが現状ではないでしょうか。本来ならば、ケア労働への支援は国が行うべきでしょうが、県としての支援も必要と考えます。県民文化部長の見解を伺います。
- 【県民文化部長】
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私には、コロナ禍を踏まえて保育所や学童保育等の職員に対する県の支援についてご質問いただきました。
賃金構造基本統計調査によりますと、平均年齢等が異なるため単純な比較はできないものの、福祉の賃金は全産業と比較して月収換算で約10万円低い状況にございます。
これまで各種加算の導入等によりまして処遇改善が図られてきてはおります。保育士の年収は、平成25年の310万円から、令和元年には364万円に約2割アップ。また、放課後児童支援員につきましても、経験年数あるいは研修実績等に応じた処遇改善が行われているところでございます。
しかしながら、待機児童を解消し地域の保育ニーズに応えるという観点、また職員の生活、モチベーションを向上させる観点から、さらなる処遇改善が必要と認識しているところでございます。
保育所等の人件費を含みます運営費は、国が公定価格等で定め、これを基に、国・県・市町村等で負担しているところでございますので、全国知事会を通じ、また県独自で国に対して処遇改善を求めてきておりまして、今後も一層の充実を要請してまいります。
コロナ禍への対応につきましては、これまで職員が時間外に消毒等を行った場合の手当、感染対策の研修受講、衛生用品の購入等の経費の支援をしてきたところでございます。
引き続き職員の皆様、施設設置者、市町村等のご意見を伺いながら、コロナ対策の支援策を検討し必要な対応を取るとともに、職員がやりがいと誇りを持って勤務できるよう、キャリアアップ研修の充実、巡回指導による職場環境の改善促進等の支援をしてまいります。
以上です。
- 【山口典久議員】
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保険薬局で働く皆さんについて伺います。医師や看護師は、この間、新型コロナ感染症対策として慰労金などが支給されてきました。ところが国は、保険薬局の仕事は感染者との直接的接触が少ないことなどを挙げて、支援の対象から外されてきました。
こうした中で先日、現場の皆さんの声を聞かせていただきました。「感染の疑いのある患者さんが多くやってきます。PCR検査で陰性だとしても、まだ陽性が出ていないだけの可能性もあります。薬局も最前線だと感じています」。また別の方は、「病院で働く従事者と同じように自分の生活も制限しています。
しかし、保険薬局の職員はまるで医療従事者ではないと言われているようで悲しくなります」など、切実でもっともな声ばかりでした。
医療従事者が一体となり、新型コロナに立ち向かっていただくことが本当に求められている今、県として支援策が必要ではないでしょうか。健康福祉部長の見解を伺います。
- 【健康福祉部長】
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お尋ねをいただきました。
最初に薬局従事者に対する支援についてでございます。
これまで、薬局においてもできる限り感染リスクを軽減した上で安心して従事していただけるよう、パーテーションやアクリル板等の設置や、個人防護具、消毒剤の購入等に対して県として助成をしてまいりました。
一方、慰労金につきましては、在宅医療を提供するために利用者宅を訪問した場合を除き、薬局従事者は支給の対象にはなっておりません。
しかしながら、調剤など医療に不可欠な役割を担っていただく中で、突然訪れる発熱者等への対応に苦労をされている状況もお聞きをしているところでございまして、薬局従事者も含めた慰労金支給対象の拡大について、全国知事会を通じ国に要望しているところでございます。
今後、国の動向も注視しつつ、薬局従事者や関係する皆様のご意見もお聞きをして、必要な支援策を検討してまいりたいと考えております。
- 【山口典久議員】
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ケア労働の支援について、命を守る大切な仕事が、やはりもっと重視されるような対策を改めて求めたいと思います。
2.障がい者施策について
- 【山口典久議員】
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障害者施策について健康福祉部長に伺います。
最初に、働く場における工賃に関して質問します。
長野県は現在、長野県障がい者プラン2018を踏まえて、例えば就労継続支援B型事業所では、令和元年度の月額平均工賃1万5,970円を、令和5年度に2万1,000円とすることなどを目標に、様々な取組を支援しています。
工賃の引き上げは切実な課題です。しかし、新型コロナウイルスの影響により受託していた業務がなくなるなど、工賃の大幅な減少が余儀なくされていることをお聞きします。
国は事業者に対し、給付金の算定における支援策を打ち出しているということですが、今年度激減した利用者の工賃への補填を望む声は切実です。障害を持つ皆さんを温かく支えていくことが求められているのではないでしょうか。県の支援策について伺います。
- 【健康福祉部長】
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障害者就労施設の工賃減少に対する支援策についてであります。
先頃、県内の就労継続支援B型事業所に対して、昨年3月から本年1月までの月額平均工賃を調査をいたしました。回答のあった事業所の平均で、前年と比べ約9%減少したとの結果でございます。
一方、3割を超える事業所からは工賃実績は前年と同じか、増加しているとの回答もございました。そうした事業所では、コロナの影響を受けにくい農作業での収入増や、新たに始めた布マスク販売等を要因に挙げているところであります。
県では本年度、利用者の工賃を確保するため、事業所の生産活動の活性化に要する経費を最大50万円助成する事業や、販路拡大を図るための通信販売サイト「長野まごころネット」の運用を先月から開始するなど、取組を行ってまいりました。
来年度も引き続き、企業からの受注拡大や自主製品の販路開拓への支援、農業分野で就労機会の拡大を目指す農福連携の推進、新分野進出を図るための民間の専門人材の派遣、そういった取組を通じまして、就労事業所の利用者の工賃確保を支援してまいりたいと考えております。
- 【山口典久議員】
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家庭で生活することが困難な障害児、障害者への支援について質問します。
障害児放課後デイサービスは、その事業所が増えて地域の学校の特別支援学級等に通う児童・生徒に歓迎されているとお聞きしますが、一方、事業所の閉鎖などもあり、養護学校に通う、また、医療的ケアが必要な児童・生徒が行き場を失うなどの例も生まれています。
また、障害者の入所施設やグループホームなどのサービスを希望しても、数十名の待機者がいて家族が支えきれない例もお聞きします。
昨年11月定例会では、同僚議員の皆さんから、強度行動障害をめぐる課題についての質疑も行われましたが、家庭で生活することが困難な障害者を安全・安心に受け入れられる施設の数や専門家が少なすぎることがあり抜本的な対策が必要と考えます。現在の支援の現状と課題について伺います。
- 【健康福祉部長】
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家庭での生活が困難な障害者への支援の現状と課題についてであります。障害があっても地域で自分らしく暮らしていける社会を目指し、入所施設からの地域生活移行を進める一方、重い行動障害のある方を家庭で支えることの困難さなどは、これまでも関係者からお聞きをしているところであります。
これに対して県としては、専門人材の育成と受入施設の拡充、この二つの面から取組を進めております。
平成26年度から実施している強度行動障害支援者養成研修では、これまで延べ1,000人を超える施設職員にご参加をいただき、適切な支援についての知識や技術を学んでいただいております。
また施設の拡充では、真に必要な方が入所できるよう、地域での生活を支えるグループホームの整備を支援して、最近の5年間で事業所数で73か所、定員で543人増加をしているところであります。
さらに身近な地域で緊急時の対応ができるよう、様々な社会資源を組み合わせて、障害者の生活を支える地域生活支援拠点の整備も、市町村とともに進めているところであります。
一方で事業者の皆様からは、重度の障害のある方に対して適切な支援を行うためには、現在の報酬体系では不十分といった声も伺っており、引き続き、さらなる報酬の見直しを国に対して要望してまいりたいと考えております。
以上でございます。
3.国民健康保険運営方針について
- 【山口典久議員】
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国民健康保険運営方針について質問します。
国民健康保険は、加入者の年齢構成が高く医療水準が高い等の構造的な課題を抱えており、持続可能な制度として安定的に運営するため、平成30年度から制度が見直されました。
そして、県と市町村が共同で運営する都道府県単位化がスタートして3年が経過し、現在、運営方針の改定に取り組んでいます。
最初に、この3年間の新制度の運営をどのように評価されているのでしょうか。あわせて、1人当たりの年間保険料負担の推移についても伺います。
- 【健康福祉部長】
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国民健康保険運営方針につきまして、ご質問を頂戴いたしました。お答えをいたします。
まず、新国保制度の運営についてでございますが、県が国保運営の財政責任主体となった以降、平成30年度、令和元年度の決算がございました。平成30年度は、歳入歳出差引額49億459万7,000円、令和元年度は、歳入歳出差引額70億4,891万3,000円、うち単年度収支21億4,431万6,000円であり、令和2年度も予算の範囲内で推移していることから、おおむね順調に運営されているものと認識してございます。
この間の保険料の推移でございますが、1人当たりの保険料額は、平成29年度、9万3,597円、対前年比4.1%、平成30年度、9万4,113円、対前年比0. 6%、令和元年度、9万6,345円、対前年比2.4%となっており、毎年増加しているところであります。
この間の1人当たり医療費の伸びを見ますと、平成29年度、対前年比2. 2%、平成30年度、2. 3%、令和元年度3. 0%と増加しており、被保険者の高齢化や医療の高度化が影響しているものと考えているところであります。
- 【山口典久議員】
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運営方針では、県内加入者の負担の平準化、保険料の水準の統一を図るとしていますが、現段階では各市町村によって様々な意見があり集約することができないとして、今後、課題の解消状況を把握し、また、段階的な取組の方向性及び目標年次を含めたロードマップについて、市町村と意見交換をしながら検討するとしていますが、現在の検討状況はどのようになっているでしょうか。今後の計画についても伺います。
- 【健康福祉部長】
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ロードマップの検討状況と今後の計画についてでございます。
保険料水準の統一につきましては、これまでの市町村との協議結果を踏まえて、いわゆるロードマップ案を策定し、現在パブリックコメントを行っております。今後、県国保運営協議会からの答申を踏まえて、年度内にロードマップを策定する予定としております。
主な内容といたしましては、納付金算定の際に反映する医療費指数を、令和9年度で原則2次医療圏に統一をいたします。また、資産割の廃止や、応益割保険料の平準化を図ってまいります。
- 【山口典久議員】
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保険料負担について、最終的にどの程度になるかは最も肝心な問題だと考えます。中期的改革方針を見ると、所得に占める保険料の割合が高い村では、平成29年ですが、40万円弱の年間所得で8万8,000円の負担をしているところもあります。所得の20%を超えています。
保険料の負担の重さは限界です。加入者の負担する保険料は、県が示す納付金によって事実上決まるわけですが、保険料水準の統一を進めることで、この納付金がどのようになるか、市町村、加入者に示すべきだと考えますが、見解を伺います。
- 【健康福祉部長】
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納付金の影響額を市町村、加入者にお示しするといったことについてでございます。
今後ロードマップに係る進捗状況は、県・市町村の関係者はもとより、被保険者にもご理解をいただく必要がありますので、2次医療圏の指数を用いた納付金の額とこれまでの個別市町村の指数を用いて算出する金額との差異についても、公表の対象としてまいりたいと考えております。
- 【山口典久議員】
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医療費適正化の取組について伺います。
運営方針では持続可能な健康づくりの促進のため、ACEプロジェクトの推進、糖尿病性腎症重症化予防プログラムを策定するとしています。これら積極的であり、健康診断、早期発見、早期治療は、1人当たりの医療費が全国でも低い水準となっている長野県の誇るべき取組だと考えます。
医療費適正化のこの間の取組の効果と、今後の課題について伺います。
- 【健康福祉部長】
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医療費適正化の取組についてであります。
医療費適正化の取組につきましては、ACEプロジェクトの推進を図りますほか、平成28年度に策定した糖尿病性腎症重症化予防プログラムを基に、保健所が郡市医師会と具体的な協力体制を構築してきた結果、重症化予防事業を実施する市町村は、平成29年度の57から令和2年度は全市町村となっているところであります。
あわせて、保健師が1人しかいないとの理由で県の支援が必要な小規模町村に対しては、専門知識等を持つアドバイザーの派遣を行い、保健事業水準の底上げを図ってまいります。
- 【山口典久議員】
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医療関係者からお話を聞くと、糖尿病などの診断を受けても仕事が休めない。または経済的な問題から受診をためらうなど、様々な理由により重症化してしまうケースが指摘されています。
例えば、治療と仕事の両立支援について長野労働局が企業を対象に行った調査では、県内の取組はまだまだで、将来を見越して早い段階から着手していただきたいと指摘していますが、国保の加入者に関して、実際に医療機関の受診、治療まで支援していくために、追跡、課題の分析や対策を検討するべきではないでしょうか。
- 【健康福祉部長】
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重症治療までつなげるための追跡と課題の分析といったお尋ねでございます。
県と市町村で確認をいたしましたところ、特定健診を受けずに治療も中断している国保被保険者が県内に3,000人ほどいることが分かりました。
そこで、来年度新たに、こういった方々の過去の受診状況や保健師の訪問記録等について、AIも活用しながら分析を行い、どうすれば受診につながるか検証を行うことによって、効果的な受診勧奨の方法を確立するよう取り組んでまいります。
- 【山口典久議員】
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保険料の減額免除、納付の猶予の特例措置について伺います。
コロナ禍で収入が減少した世帯について特例措置が導入されました。これは減収については見込みで判断する、適用の可否は各市区町村の判断に任せる、また、市区町村特例を実施したことにより、保険料徴収が減少した場合、減少分は国が全額手当てするとしている非常に柔軟な制度です。
県下におけるこの特例措置の利用実績について伺います。
- 【健康福祉部長】
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保険料の減免等の実績についてであります。
新型コロナウイルス感染症の影響により一定程度収入が下がった方々に対し、国民健康保険料の減免等を国の緊急経済対策により実施しております。
具体的には、収入が前年より30%以上減少した世帯主等に対する令和2年2月から令和3年3月納期分までの保険料を減免と、収入が前年より20%以上減少した世帯主に対する令和2年2月から令和3年1月納期分までの徴収猶予となります。
これまでの保険料減免の実績でございますが、4,862件、5億9,340万円であり、徴収猶予の特例は955件、1億3,617万円でございます。
- 【山口典久議員】
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新型コロナウイルス感染症は落ち着いてきていると言われますが、大きな影響を受けた県民の暮らしは一度に立ち直れないことは明らかです。この特例措置の期間を延長してほしいと考えますが、いかがでしょうか。
- 【健康福祉部長】
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特例措置の期間延長についてのお尋ねであります。
保険料の徴収猶予の特例は、令和3年1月納期分をもって制度の適用は終了しておりますが、通常の規定でも延滞金の減免や担保を徴しない取扱いは可能でございますので、柔軟かつ適切に対応していただくよう市町村に助言してまいります。
保険料の減免につきましては、令和3年度以降の適用に関し、田村厚生労働大臣が1月29日の衆院本会議で、今後の感染状況等を踏まえながら検討していくといった旨の答弁をされておりますので、今後、国の動向を注視してまいりたいと考えております。
- 【山口典久議員】
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決算剰余金について伺います。
令和元年度の決算では、歳入歳出差引額が70億4,891万3,000円、繰越金を除く単年度収支、21億4,431万6,000円となっています。この令和元年度の決算剰余金は、市町村、加入者にどのように還元されていくのでしょうか。
以上、健康福祉部長に伺います。
- 【健康福祉部長】
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決算剰余金の活用方法についてでございます。
新型コロナウイルス感染症による経済への影響から、令和3年度は被保険者の所得の減少が見込まれるところであります。令和元年度、単年度収支21億4,431万6,000円に、国庫支出金の精算等を加味した実質的に黒字額約41億円の全額を納付金総額の圧縮財源として使用し、これによって還元を図ったところでございます。
以上でございます。
- 【山口典久議員】
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市町村への納付金を公表の対象としていただくということは、多くの市町村が望んでいたことでありますので、ぜひお願いしたいと思います。
国民健康保険制度見直し3年、おおむね運営は順調だというお話でした。国民健康保険を持続可能な制度に改革する重要性は、これはもう言うまでもありません。しかし、そのために所得の低い加入者の暮らしが追い詰められるようでは、社会保障制度としては本末顛倒であり、構造的問題も解決することはできないでしょう。
全国知事会、全国市長会も、国に対して公費投入で構造問題を解決することを強く要望してまいりましたが、暮らしや健康を支える制度となるような改革を強く期待して終わります。