日本共産党長野県会議員団

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議会質問

2022年2月定例会 両角友成議員一般質問

    1. 農業問題米政策について
    2. 持続可能な林業をどう目指すかについて

1.農業問題米政策について

【両角友成議員】

 日本共産党県議団の両角友成です。質問に先立ち、ロシアによるウクライナ侵略を断固糾弾し、軍事作戦をただちに中止することを求めます。それでは質問に入ります。

 まず初めの質問項目は、農業問題、コメ政策についてであります。長野県として、新型コロナウイルス感染症拡大などによる、米価下落にどんな対策を講じてきたのか、講じようとしているのか、伺ってまいります。

 本年1月14日臨時議会での、我が会派、和田質問に対しての答弁を聞いていると、コメが国内で余れば外国に輸出と簡単に言われるが、家族農業、兼業農家などは現実味がありません。また、県は、生産コスト削減と高品質で差別化を図り販路開拓していこうとしているようですが、コメ1俵(60キロ)当たりの生産コストは平均1万5,000円です。しかし、2021年度産は1俵1万円を下回る銘柄が続出しています。農家の努力、機械化、あるいはスマート農業への転換などを図ったとしても、コスト削減で乗り切れる価格の状況ではなく、しかもコメづくりの中核をなす大規模経営ほど打撃を受けています。

 長野県議会として、昨年11月定例会にて全会一致で国に求めたように、政府備蓄米の買い入れ数量の拡充を国に求めていただきたいがいかがか。

【小林農政部長】

 私には、コメ政策について、質問をいただきました。初めに、政府備蓄米の数量の拡充を国に求めることについてでございますが、コロナ禍によりコメの需要が減少を続ける中、県では、令和2年11月と昨年6月3日に国に対し、予測し得なかった事象により発生した在庫について、国の責任において、市場隔離対策を講じるよう要請したところです。

 今後も需要動向を注視するとともに、コロナ禍など、不測の事態により需要が落ち込む状況が継続する場合には、必要に応じて、改めて国に要請してまいります。

【両角友成議員】

 伊那市では、コメ農家に対して、水稲作付面積10アール当たり4,500円を支給することを今年1月に決めました。県内、他の自治体にも動きがあります。山形県では、10アール当たり1,000円を支給します。長野県も市町村と連携し、直接支援策を講ずるべきと思うがどうか、農政部長に伺います。

【小林農政部長】

 コメ農家への直接支援についてでございます。コメ農家の経営安定を図るためには、主食用米の適正生産による需給調整に取り組むことが重要と考えており、国の事業等最大限活用しながら、需要の見込めるムギ・大豆や園芸作物などの収益性の高い品目の導入拡大を進めているところです。

 さらに今議会においてお願いしております令和4年度予算において、県単独事業により、飼料用米への転換や海外の需要を取り込むため、輸出用米の取組の強化などを支援してまいりたいと考えております。県といたしましては、今後もこれらの取組などにより、稲作農家の体質強化と経営の安定を図ってまいります。

【両角友成議員】

 ずっと国の転作政策に協力してきた農家が、今後5年間で一度もコメを作付けしないと水田活用の直接支払い交付金の対象から外すとする見直しの動きがあります。この交付金は、麦・大豆・多年生牧草は10アール3.5万円、ソバ・ナタネは2万円ですが、5年間作付けしない場合、これが全てなくなる。長年、政府の方針に従って転作に協力してきた農家を交付金の対象から排除し、経営の継続さえ危うくするもので重大な裏切りです。あまりにもひどい見直しです。農家の立場に立ち、撤回を求めるべきと思うがいかがでしょうか、農政部長に伺います。

【小林農政部長】

 水田活用交付金の見直しについてでございます。今回の見直しについては、現在国において今後5年の間に一度も水稲の作づけが行われない農地は交付金の対象としないとする方針が示されております。

 一方、その見直しに当たっては、今後現場の課題を検証することとされており、国は毎年度交付対象水田の除外状況など、各地域の課題把握のための調査を予定しているところです。県としましては、引き続き国の動向を注視するとともに、今後生産者の声も十分にお聞きし、生産現場の実態に合った制度となるよう、必要に応じて国に要望してまいります。以上でございます。

【両角友成議員】

 知事に伺います。昨年11月26日、長野県町村会の皆さんが上京し、国会議員に要請。その中で、北安曇郡松川村平林明人村長いわく、日本国内は「コメは余っているけれど足りないところが、国が、いっぱいある。そんな時に日本が無理にミニマムアクセス米77万トンを輸入しないで、足りないところに回してほしい」。村民のためになれば何でも言うべきだとの思いからの発言だそうです。 

 続けて、松川村民の方からです。令和に入ってから新規就農しました。穀類を主とした経営をしていますが、輸入されてくる穀類の存在が日本の農業に大きなダメージを与え続けている現状が見えていて、将来の経営が不安です。村は努力している姿勢があると感じているが、国はどうなんだろうか? 国は「コメがダメなら他の作物がある」と言い「コメ+他の作物」を推奨するが農家には様々な事情がある。兼業農家が多く「コメ+他の作物」と言われてもできない。コメづくりをやめてしまえば離農が増えてしまう。こうして荒廃農地が増え美しい景観が壊されてしまう。持続可能で時代に求められる農業に取り組む農家を増やしてほしい。一部ですが、村長の、農家の訴えです。

 ミニマムアクセス米を毎年1トン当たり10万円でアメリカから買い、このコメを2万円で飼料用に販売。外米処理に毎年300億円の国費を使っている。本来、コメは穀物の中でも自給が基本の作物です。この際、ミニマムアクセス米の輸入削減、廃止とコメ農家救済のために、コメの直接支払い交付金を復活させることも国に求めるべきと思うがいかがでしょうか。

【阿部知事】

 米政策に関連して御質問いただきました。

 まず、ミニマムアクセス米の輸入制限廃止についてという御質問であります。ミニマムアクセスは、GATT、ウルグアイラウンド交渉においてWTO全加盟国の合意のもとで設定された国際ルールであります。一定量を無関税で受け入れ、それ以上の輸入は高関税にするということで、国産米への影響を最小限にしていくものと考えております。そのため、輸入らの削減を求めるという考え方はございません。

 次に、コメの直接支払交付金についてでございますが、これは行政主導の生産調整の枠組みの中で運用され、協力した農業者に対して支援が行われていたところでありますが、その後、平成30年のコメ政策の改革によりまして、生産者自らが需要に応じた生産を行う制度へと見直され、農家の収入減少に対しては、収入保険などのセーフティネットが措置されたものと受け止めています。

 現在のコメ政策では、多品目への転換など需要に応じた生産を支援する制度になっておりますことから、引き続き現行制度を活用して農業者の経営安定を図っていきたいと考えています。

【両角友成議員】

 地球規模での環境破壊に加え、世界情勢が悪化しており、輸入が止まれば、食料危機になることが現実味を帯びています。食料自給率が37%しかない現実もあります。米価下落によりコメ農家の離農が進めば農村が崩壊し、社会全体に大きな影響を及ぼすことが心配です。

 今年1月15日にトンガ沖で海底火山噴火。噴火の影響による寒冷化も危惧されます。影響は限定的との報道がありますが、1993年、フィリピンの火山噴火に伴う記録的な冷夏により、タイ米を緊急輸入したりと、私たちは「平成の米騒動」を経験しています。備えは必要だと考えます。これらコメを取り巻く諸問題について、知事の思いを伺います。

【阿部知事】

 コメを取り巻く諸問題の思いという御質問でございます。私も、今日、朝ご飯を食べてまいりました。お米を食べてまいりましたけれども、我が国の主食であるわけであります。そういう意味で、安定供給の確保ということは非常に重要でありますし、またコメ生産、水田を中心として美しい農村景観の形成であったり、水源の涵養、さらには国土の保全、そして農村コミュニティの維持などにも大きな役割を果たしている重要な品目だと考えています。

 少子高齢化の中で食生活も多様化し、コメを取り巻く環境は非常に厳しい状況になりつつあると受け止めています。そうした中で、本県としても高収益作物等への転換であったり、あるいはスマート農業の導入の加速化であったり、さらには県産米の消費・販路拡大の対策であったり、こうしたことを行うことによって稲作農家の皆様方が希望を持って営農を継続できるように支援をしてきているところであります。

 今後ますます食料安全保障の観点が重要になってくると考えております。県としては、気候変動にも対応できる品種の育成であったり、技術支援などを進めていきたいと思いますし、また政府に対しては不測の事態にも備えたコメの備蓄等、適正に運営していくよう、必要に応じて要請を行っていきたいと考えております。以上です。

2.持続可能な林業をどう目指すかについて

【両角友成議員】

 次の質問項目は、「持続可能な林業をどう目指すか」についてであります。国土面積の3分の2を占め、木材供給とともに、環境保全、水源の涵養、生物多様性など公益的機能を有し、「低炭素社会」の実現にも欠かせない森林。長野県を見ても県土の8割が森林です。「ウッドショック」に対応できる国産材の安定供給体制の確立を目指すなど、持続可能な森林づくりを進める必要があると考えています。

 丸太や製材品などの林産物は、WTO(世界貿易機関)協定では、自動車や電化製品と同じ「鉱工業製品」扱いになっていますが、多くの国が林産業育成や環境保全などのため、丸太の輸出規制を行っており、実質的には自由貿易品目ではなくなっています。

 森林生態系や自然環境は、人間の生存に関わる問題であり、林産物を市場任せにする時代ではないはずです。信濃毎日新聞に連載されていた、林材ライター上田市在住の赤堀楠雄さんの「信州カラマツを宝に」を興味深く、読ませていただきました。その中で紹介されている、南佐久中部森林組合の取組。

 個人所有林を対象に、伐採後10年間にわたる保育作業を1ヘクタール当たり21万円で請け負う取組。苗木を植えて10年生まで育てた山を所有者に返すことで、「伐ったら植える」林業のサイクルを維持しようとしている事例です。

 「植えなければカラマツ林業が途絶えてしまうから」。これに取り組む森林組合の管内では、伐採跡地の7割以上で再植林が実現しているとのこと。この方法が長野県林業に定着すれば、持続可能な林業に一歩近づくと考えますがいかがでしょうか。

【井出林務部長】

 お尋ねをいただきました。持続可能な林業の推進についてでございます。

 主伐後の再造林における森林所有者の負担が課題となっている中で、議員御紹介の取組については、持続可能な林業を進める方法の一つとして有効と考えております。

 一方で、森林や地形等の状況から、主伐による木材の販売収入、再造林や保育に係る経費等は異なり、所有者の負担額によっては、こうした取組自体が難しくなります。

 こうしたことから、県では、主伐と主伐後の再造林をさらに推進するため、令和2年度より、再造林等に対する補助率をかさ上げし、支援しているところでございます。また、令和4年度予算では、再造林費用の低コスト化を目指し、主伐後の造林や保育の支障となっている枝等の林地残材の利用に向けた検証を行うこととしており、こうした取組も含めて、持続可能な林業を推進してまいります。

【両角友成議員】

 市町村は、森林・林業の基本となる「林地台帳」の整備や森林整備計画の樹立などをはじめ、2019年の森林管理経営法によって、民有林の経営管理権の設定などが制度化され、地域の森林管理に責任をもって当たらなければならなくなりました。しかし、専任の職員を配置できない市町村も多く、森林・林業行政全般の研修など、林務職員の育成・確保を図れるよう市町村への支援が必要と思うがどうか。

【井出林務部長】

 林地台帳の整備等の市町村への支援についてでございます。林地台帳及び森林整備計画は、森林法で市町村が作成及び樹立し、公表することとされています。市町村の業務を円滑に進めるため、県では、林地台帳管理システムと原案データを作成し、平成30年6月に全ての市町村に配付しています。またシステム操作や運用に関する研修会を、平成30年度から延べ9回開催し、支援しています。

 森林整備計画につきましては、毎年制度に関する説明会や各地域振興局の林業普及指導員による計画作成の支援を行っているところです。林地台帳の整備や森林整備計画の樹立のためには、専門的な技術や知識が必要なことから、今後も積極的に市町村支援を進めてまいります。

【両角友成議員】

 森林整備の中心的な役割を担う森林組合に対しても、市町村や素材生産業、製材業などと連携を促進し、地域林業の確立のため力を果たしてもらえるよう支援すべきと思うがどうか。以上3点について、林務部長に伺います。

【井出林務部長】

 森林組合への支援についてでございます。県内に18ある森林組合については、組合員の所有面積が民有林の66%を占め、林業就業者も全体の35%を占めるなど、地域林業の中心的な役割を担う存在と認識しております。

 県が定める森林組合指導方針では、森林組合の役割を、森林づくりの中核的な担い手として地域の持続可能な森林の管理・経営をコーディネートすることと位置づけ、業務のIT化や経営改善研修等の支援策を講じております。

 また、令和3年4月には、多様な連携手法の導入や業務執行体制の強化等を柱とする森林組合法の改正がなされ、現在森林組合では、市町村等の関係機関との連携強化や販売力の強化、人材の育成等について、中期経営計画である運動方針の策定を進めております。

 今後とも森林組合の主体的な取組を促しつつ、改正法の適切な運用や運動方針に基づく関係機関との連携等により、名実ともに森林組合が地域林業の中核的な担い手としての役割をはっきできるよう、県森林組合連合会と連携しながら指導支援を行ってまいります。以上でございます。

【両角友成議員】

 知事に伺います。林業が抱える課題の中に、植林後50年程度で伐採する短伐期一辺倒の見直しの必要があるやに思います。地域の森林資源の実態に対応し、長伐期や複層林など多様な施業方式を導入し、持続可能な林業にすることが必要と考えています。林業は、森林の多面的機能や生態系に応じた育林や伐採などの専門的知識や技術が必要な業種でもあり、林業労働者の育成と定着が課題となっています。

 現場の声ですが、夢を持って山に入っても現実の厳しさにリタイヤしてしまうケースも多々見られるとのことです。基本的技術の取得を支援する「緑の雇用」や「緑の青年就業準備給付金」事業を取り入れるなど、事業体への支援を強め、安全基準などILOの林業労働基準に即した労働条件や通年雇用、特に月給制の導入など、生活条件の改善に取り組んで安心して働ける環境をつくるのは不可欠ではないかと思いますが、どう進めていくか伺います。

【阿部知事】

 林業に関連して御質問をいただきました。林業労働者の皆様方が安心して働ける環境づくりをどう進めるかという御質問であります。林業労働者の皆様の取り巻く環境につきましては、労働災害の発生率の高さが大きな課題となっていることに加えまして、小規模零細で処遇や就業環境等に課題を抱える事業体が多く、就業される方が安心して働ける環境を整えていくということが重要だと考えております。

 このため、効率的な林業経営を目指す林業事業体を中心として、安全対策の強化をはじめ、機械化やスマート化等による生産性の向上を図るとともに、退職金共済への加入促進や福利厚生に対する助成措置等によりまして、就業環境の改善に取り組んできたところであります。この結果、現行森林づくり指針の基準年であります平成21年度と比較しますと、労働災害発生件数で、平成21年が81件であったのが、令和2年は48件、また林業従事者の若返りが見られております。平成21年が49.5歳が、令和2年は46.9歳、また、通年雇用や月給制の割合も増加してきているという状況であります。

 今後とも、こうした取組を着実に進めますとともに、さらなる安全対策の強化、また林業の生産性の向上を図ることによりまして、林業労働者の皆さんが安心して働き続けられる就業環境の整備に取り組んでいきたいと考えております。

【両角友成議員】

 先ほど紹介した、連載の中に、大木に育ったカラマツ。樹齢は決して追い越せない。追随を許さぬ高樹齢の林に、天然カラマツに匹敵するプレミアムカラマツを生む可能性が書かれています。国は約50年での伐採を進めているが、近年の研究成果で、なお成長する若い森林であるとの認識が示されています。150年前後まで成長が続くと、その間多面的機能も向上する。優良な資源になる森林を育成することも必要と考えるが、持続可能な林業に対する知事の見解を伺います。

【阿部知事】

 持続可能な林業に対する見解という御質問であります。最近の林業総合センターの研究におきましても、100年生を越えたカラマツについて、樹高の成長が依然として続いているものがあるということが報告をされているところであります。樹齢が100年を越えるような天然のカラマツ材は、狂いが少なく、木目が美しいなど、歳月の経過による付加価値と希少性により市場で高く評価されているところでございます。

 その一方で、戦後に植林された人工林の多くは50年が経過し、柱や梁など、通常の建築用の資材として伐採・利用できる時期を迎えております。また、森林の二酸化炭素吸収量は、植えてから20年前後でピークを迎え、その後徐々に低下していくという形になります。

 こうしたことを考慮しながら、計画的に木材を生産していくということも重要だと考えております。今後とも木材の付加価値向上につながる森林づくりに加えて、林業経営に適した森林においては、主伐、再造林を集中して実施し、樹種や地形に応じ、多様な樹齢の森林を育成することによりまして、持続的な林業経営ができる森林づくりを進めていきたいと考えております。以上です。

【両角友成議員】

 それぞれ答弁をいただきました。知事の胸にも、私の胸にも、SDGsのバッジが着いております。誰一人取り残されることなく、この地球で幸せに暮らし続けるにはどうすれば良いのかを定めた国際的な目標SDGs。17の目標のうち15番、「陸の豊かさを守ろう」に、今回の農業問題、持続可能な林業が含まれていると考えています。

 長野県における里山の絶滅危惧種は、私はマツタケと思っていましたら、先頃のNHKのテレビの放送で、里山を取り上げた番組の中で、里山における絶滅危惧種は人間の子供だと言われドキッとしました。目標15番「陸の豊かさを守ろう」は大きな課題ですが、皆で知恵を出し合い、乗り切らなければなりません。

 以上を申し上げ、質問といたします。ありがとうございました。

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