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議会質問

2022年2月定例会 毛利栄子議員一般質問

    1. 「障がいのある人もない人も共に生きる長野県づくり条例」案と障がい者施策について
    2. 教員のわいせつ事案に対する県教委の対応について

1. 「障がいのある人もない人も共に生きる長野県づくり条例」案と障がい者施策について

【毛利栄子議員】

 「障がいのある人もない人も共に生きる長野県づくり条例」案と障がい者施策について知事に伺います。

 国内の障がい児者数は約936万人、国民の約7.6%とされていますが、国際的には15%以上は何らかの障がいがある人だといわれています。障がい者が長い間、障がいや病気や外傷等から生ずる個人の問題であるとして、自己責任、家族責任を押し付けられ、旧優生保護法下では不妊手術を強制されるなど、いわれなき人権侵害と差別に苦しんできました。

 日本が2014年に批准した障害者権利条約は、障がい者は障がいのない人と同様の当たり前の暮らしをするために、あらゆる権利を保障し、支援を行う社会的責任が国や自治体にあることを宣言し、障がい者自身に関わることを障がい者抜きに決めないでとの意思決定過程における障がい当事者の関与が定められています。

 知事初当選以来の公約であった障害者差別禁止条例は、関係者の長年の努力の中で、10年余を経てようやく形となって、今議会に提案されていることを心から歓迎します。

 振り返れば、阿部知事当選後初の2010年9月議会で、当時の石坂ちほ県議が、当県議団が全国に先駆けて制定した千葉県に調査に行き、障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例の制定過程や、施行後3年を経ての成果を引き合いに、障がい当事者を加えて幅広く意見を聞きながら、制定してほしいと求めてきた経緯もあります。当時条例を制定していたのは、千葉県と北海道だけでしたが、今では36の都道府県が既に制定しています。

 そこで、知事に伺います。今回の条例案は、関係者が大変な努力をされて、まずは差別事案を募集し、さらに社会福祉審議会の専門分科会で検討を重ね、条例骨子案報告書への意見募集を募り、骨子案公表後は、パブリックコメントを取り、現在に至っています。着手から10年、丁寧に取り組んでこられたこの間の経過と、時間をかけた理由についてお聞かせください。また長野県らしさ、知事の思いはどう反映されているのでしょうか。

【阿部知事】

 私には、「障がいのある人もない人も共に生きる長野県づくり条例」案と障がい者施策について何点か御質問を頂戴いたしました。

 まず、今回の条例案提案までの経過と時間をかけた理由、長野県らしさや私の思いの反映という御質問であります。御質問にも触れていただいたように、私が最初に知事選挙に立候補させていただくときの基本政策集「信州底力全開宣言」と称していましたけれども、その中で、「障がいのある人もない人も共に安心して暮らせる条例(仮称)」制定ということを掲げさせていただいたところであります。

 その後、当選した後、平成23年度から24年度にかけて、研究会を設けて障がい者差別をなくすための条例の検討を進めてきたところであります。ただその間、国においてその法律制定の動きが本格化してまいりました。そういう意味で、平成25年の6月に障害者差別解消法が成立をし、差別の禁止、あるいは合理的配慮の提供の規定が設けられましたことから、まずは法律の周知、あるいは相談員の配置、こうしたことに取り組んできました。またその後、平成27年度には長野県手話言語条例の制定であったり、あるいは福祉のまちづくり条例の一部改正、こうしたことを通じて、障がいのある方が暮らしやすい社会づくりを進めてきたところであります。

 その後、障害者差別解消法の施行から3年も経っても、なお県の相談窓口に対する相談件数が減らないという状況に鑑みて、令和元年度から今回の条例の検討を始めたところであります。実効性のある条例とするため、県民の皆様との意見交換など丁寧に時間をかけて進めてきた結果、このたびの条例案の提案ということにつながったところであります。

 法律のほうは、障がい者の生きづらさを解消するという、いわばマイナスをゼロにするという中身になっていますけれども、今回の条例案は、紛争解決の仕組みといったものを盛り込むことと併せて、県として取り組む11の政策分野の方向性を盛り込ませていただいています。いわば生きづらさのマイナスの解消、マイナスをゼロにするということにとどまらず、障がい者の方々の自立と社会参加、プラスにまで持っていくと、こうしたことを目指した条例案になっています。

 また、検討の過程では、コミュニケーションの格差、やはり人間として生きていく上でコミュケーションは一番重要だということで、こうした観点での話を多くの方々からお伺いをしました。聴覚、あるいは視覚に障がいがある方の情報へのアクセス、非常に重要な要素だというふうに認識をしておりますし、また、障がいに加えて、例えば女性であるゆえの生きづらさなどの切実な話。これは複合的要因という形になりますけれども、こうした問題意識を承った中で、今回の条例案の基本理念の中にも情報のバリアフリー、あるいは性別や年齢など複合的要因のある障がい者の方への配慮、こうしたことを特徴的に盛り込ませていただいているところであります。

 そういう意味では、時間をかけさせていただきましたが、その間当事者の方々の思いも承り、また有識者の方々の御意見をいただく中で、いろいろな観点を盛り込ませていただいたところであります。10年以上前に、私がこうした条例が必要だというところから大変時間が経ってしまって申し訳ないなというふうに思っておりますけれども、ぜひご議決をいただいて、しっかりと適切な運用を行うことによって、障害がある人もない人も、本当に希望を持って生きられる長野県づくりに努めていきたいというふうに思っております。

【毛利栄子議員】

 条例案では、差別解消のための手立てとして相談体制が規定されています。障がい者が差別されたと感じ、葛藤や悩んだときに、個人の問題として解消されるのではなく、行政が関わって対応してもらえる中に大いなる安心感と信頼があると思います。

 そのために現在も相談を受け付けていただいていますが、差別されたと感じた障がい者が気軽に相談ができ、紛争になった場合の対応など、条例の趣旨に沿った役割を十分果たすことができるワンストップの相談センターとしての機能を持ったものにしていただきたいが、いかがでしょうか。

【阿部知事】

 ワンストップの相談機能についてという御質問であります。平成28年4月の障害者差別解消法の施行に合わせて障がい者差別相談窓口を設けさせていただき、障がいを理由とした差別や合理的配慮に関する相談に対応してきたところであります。今回、条例案の提出に先行する形で、昨年の10月から相談員を増員をさせていただき、相談対応の強化を図らせていただいているとこであります。今回御提案させていただきました条例案におきましては、相談窓口の機能として、必要な助言及び情報の提供、関係者間の調整、関係行政機関への通告・通報等こうしたことを規定をさせていただいたところでございます。

 障がいを理由とする差別の解消を図るためには、相談に対応してきめ細かな対応を行い、当事者双方の合意形成を図っていくということが大変重要だというふうに考えています。条例案を御議決いただければ、この障がい者差別相談窓口をワンストップの相談センターとしてより強力に周知をさせていただき、県民、事業者の皆様方が相談できる体制をしっかり整えていきたいというふうに考えております。

【毛利栄子議員】

 障がい者差別が解消し、障がいのある人もない人も共に生きる人権尊重の長野県にしていくためには、あらゆる差別の禁止や、合理的配慮を行うことは当たり前だという行政や県民、事業者への啓発が重要だと思います。啓発活動をどう行っていくのか伺います。

【阿部知事】

 障がい者差別の禁止や合理的配慮の啓発についてという御質問であります。私も、多くの皆様方が思いを共有していただくということが大変重要だというふうに考えています。当事者の方々とお話をさせていただき、なかなかの当事者でないと分からない、気づかない、そうしたことも多いなというふうに実感をしているところであります。

 今回提案させていただいております条例案は、障がい者が感じている生きづらさの原因は、障がいのない人を前提につくられた社会の仕組みにあり、是正するのは社会の責務であるとする障がいの社会モデルの考え方をベースにさせていただいております。こうした考え方は、ぜひ広げていきたいというふうに思っております。

 そのため、庁内連携会議を立ち上げて、健康福祉部のみならず、県職員全体の研修に努めていきたいというふうに思っておりますし、また組織の意識改革を図っていきたいと思ってます。また所管する部局を通じて、県民、事業者皆様にも、こうした条例の考え方や内容の周知を図っていきたいというふうに考えております。

 また、障がい当事者の方にも御協力をいただきながら、市町村はもとより、県民、事業者の皆様に対して合理的配慮の具体的事例について周知を図るとともに、優良事業者の認定制度を設けることなどにより民間の優れた取組を広げていきたいというふうに考えております。こうしたことを積み重ねながら、県民の皆様の自主的な取組も促進して、様々な主体が共生社会づくりを進めていただく担い手となるよう後押ししていきたいというふうに考えております。

【毛利栄子議員】

 条例が制定されれば、県が差別解消や合理的配慮に努めなければならない責務が生じてきます。さしあたって2点について、早急に対応していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 一つは、同じ福祉医療なのに子どもの医療費は窓口無料となり喜ばれていますが、障がい者の医療費は現物支給となっていません。年金も下げられ、物価の上昇も続く中、継続した治療が不可欠なため、いったん全額払うのは負担、ぜひ窓口無料にしてほしいとの要望も長年いただいていますので、条例制定を契機に、障がい者の医療費も現物支援にしていただきたいが、今後の見通しについて伺いたい。

 二つは情報保障の在り方です。条例では、障がいのある人が容易に県政に関する情報を取得することができるようにするため、手話、要約筆記、点字、その他の障がいの特性に応じた意思疎通並びに情報の取得、利用及び発信のための手段を利用して情報を発信するよう努めるものとすると規定されています。和田県議が11月議会で取り上げましたが、知事会見は手話だけではなく、リアルタイムでの字幕表示をすぐにでも実施していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

【阿部知事】

 障がい者の医療費助成の現物給付化についての御質問でございます。福祉医療制度につきましては、医療費の窓口負担を軽減する現物給付を行った場合には、国が国民健康保険の国庫負担金等の減額調整措置、いわゆるペナルティー的措置を講じているところであります。

 私もこうした措置はやめてほしいということをずっと言ってきているわけでありますが、いまだに一部残っているわけであります。子どもの医療費の現物給付化については、これも再三、国に働きかけた結果として、平成30年度から未就学児までの医療費助成に対するペナルティーが廃止をされました。その動きを踏まえて、本県では県と市町村とで足並みをそろえて、子育て支援、少子化対策を一層推進するための観点で、中学校卒業まで、これは一部ペナルティーがかかっている部分も含めて、広めに現物給付化を実施をさせたところであります。従ってペナルティー分はまだ県民の皆様の税負担で賄わせていただいているという現状が続いているわけであります。

 一方で、この障がい者の医療費助成については、依然としてペナルティー措置がそのままかかり続けているという状況であります。国に対しては、引き続き全ての年齢を対象としてこのペナルティーの廃止を強く求めていきたいというふうに思いますし、また国レベルでの社会保障として、この医療費助成制度、子ども医療費助成はもう全ての県が行っていますので、もう国の制度としてぜひ創設すべきだということも引き続き求めていきたいというふうに考えております。

 現物給付化を行うことによって、その利用者の自主的な負担は変わらないですけれども、県としての負担が変わってしまうということでありますので、そういう意味で、まずは国の対処をしっかり求めていきたいというふうに考えております。

 続きまして、知事会見のリアルタイム字幕表示の実施についてという御質問であります。平成31年の4月の会見から手話通訳を導入をさせていただいておりますが、中途失聴者など手話を理解できない方々もいらっしゃいますので、字幕表示等を行うことの必要性については私どもも認識をしているところであります。

 新型コロナの感染拡大防止への協力のお願いなど、収録して行う映像については、手話通訳と字幕を挿入し配信等を行っているとこるでありますが、会見、私の会見のようにリアルタイムで配信するものの字幕表示については、正確性を確保するため、今の時点でまだ実現できてないという状況であります。

 これちょっと私の話し方を音声認識アプリでやると、少し誤変換したりするということもあります。また正確な表記を、例えば要約筆記を行っていただく上では、私の発言メモを事前に提供するというようなことで対応することも可能ではありますけれども、ほとんど私の会見は時前の原稿なしで行わせていただいているということもあって、なかなか課題がたくさんあるなというのが今の認識であります。今後様々な手法の検証を行いながら、導入の可能性について検討していきたいというふうに考えております。以上です。

【毛利栄子議員】

 私の障がい者に係る質問の肝は、二つの最後の要望の実現ということだったのですけれども、障がい者医療費の現物給付に対しては、国のペナルティーがあるということなどの理由を挙げられて、まだまだ時間がかかるということを実感いたしました。とても残念に思います。障がい者の立場に立った施策として、1日も早く実現できることを求めます。

2. 教員のわいせつ事案に対する県教委の対応について

【毛利栄子議員】

 続いて、教員のわいせつ事案に対する県教委の対応について教育長に伺います。暮れに検証結果が報告された教員のわいせつ事案に対し、校長や対応した県教委の認識があまりに一般社会の認識とかけ離れていることに驚きました。

 そもそも生徒と車に乗って日帰り温泉施設に行くこと自体尋常ではないし、耳たぶを触ったり手を握ったりすること自体、セクハラ、わいせつ行為です。県教委に報告もせず、事件をもみ消そうとした校長の対応は全く不適切であり言語道断ですが、報告を受けた県教委の対応も、平成18年以来、「懲戒処分等の指針」を策定し、平成25年からは「非違行為に係る公表ガイドライン」を運用、平成28年からは、「わいせつな行為根絶のための特別対策」を講じ、信州教育の信頼回復に向けて対応してきていただいているにもかかわらず、わいせつ事案だとの認識や受け止めもなく、生徒と教員を引き離すために退職か休職を勧めるなどとんでもない指導であり、厳しい自己分析が求められます。

 そもそも県教委の中に通報相談窓口があるのに、通報した教員は、教育に関わることをなぜ総務部のコンプライアンス行政経営課に相談したのか。県教委に相談してもまともに取り扱ってもらえないと判断したのではないかと思わざるを得ません。

 その後の新聞報道によれば、3月末まで療養休暇を取り退職した教諭は、4月から私立の学校に再就職し、事件が社会問題化した昨年12月に辞職したとのことです。事案をまともに対応しなかったことで、教諭は何の処分も受けず、知らずに就職させた私立高校は、そのまま在職していれば生徒が同じような被害に遭っていたかもしれないことを考えれば、県教委の指導には重大な落ち度があったと思います。

 そこで伺います。教育長は今回の一連の出来事に対し、当時から継続して関わっていた唯一の教育行政のトップとして、どう責任を感じ、どのような見解をお持ちですか。通報した教員は、教育委員会幹部がわいせつ行為を行った学校の関係者であったために隠蔽が行われたのではないかと訴えているようですが、教委の隠蔽疑惑に関して報告書は触れていません。見解をお伺います。

【原山教育長】

 教員のわいせつ事案に対する県教委の対応についての御質問でございます。

 まず、今回の事案の責任と見解についてというお尋ねでございます。このようなわいせつな行為を教員が行ったこと、そしてその事実を校長や教育委員会事務局職員が把握しながら、処分せずにそのまま退職させるに至ったことは、長野県教育の信頼の根幹に関わる重大な事態であり、特に直属の部下である当時の高校教育課長を処分することになったことは、教育長としての責任を痛感しているところでございます。本事案により被害に遭われた生徒及び保護者、県民の皆様に対し、改めて心からお詫びを申しあげます。

 教育委員会の隠蔽の疑惑に関しての見解でございます。今回の事案において、当時の高校教育課では、元教諭の行為がわいせつな行為に当たらないと判断し、その後の事案の対応を進めたものであり、議員御指摘のような隠蔽は行われていないものと認識しております。また、当時の高校教育課職員に対する聞き取りの中で、学校の関係者であったことがわいせつな行為の判断に影響したということはないとの確認をしているところでございます。

【毛利栄子議員】

 当時の高校教育課長は、減給10分の1、3ヶ月、校長は10分の1、2か月の処分を受けました。教育長は特別職のため処分対象にはなりませんでしたが、自主返納とのことで、給料の10分の1、3か月との対応を取られました。減給処分となった2人の処分理由について伺うとともに、自主返納の返納割合と月数を、元高校教育課長と同じにした理由について伺います。

【原山教育長】

 当時の高校教育課長、校長の処分理由についてでございます。高校教育課長については、元教諭のわいせつな言動について、高校教育課の部下職員に事案の内容を詳しく把握し、必要な調査等を行うよう命じることなく、わいせつな行為等とまでは至らない内容であると認識し判断を誤ったこと。その結果、当該教諭に対する懲戒処分等を行うことができた立場にもかかわらず、当該教諭が定年退職し、懲戒処分等が行われないという事態を招いた。これにより長野県教育への信頼を大きく失墜させたことから、不適正な事務処理を理由に処分したところでございます。

 校長については、当該教諭の行為を把握した際、県教育委員会で報告すべきものであったにもかかわらず、保護者から申し立てがあるまで報告を行わなかったこと、さらに当該教諭による被害生徒への詳細な発言内容について報告しなかったこと。これらのことから非違行為の隠蔽に当たると捉え、処分したところであります。

 私の自主返納を高校教育課長と同じとした理由であります。今回直属の部下である当時の高校教育課長の誤った判断によりこのような事態を招いたことは、私の管理監督責任であり、自らの判断で自主返納を行うことといたしました。その額や期間については、私自身が管理監督責任の重さを熟慮し、その結果として今回の自主返納をさせていただいたところでございます。

【毛利栄子議員】

 検証結果報告書では、性暴力根絶のための対策が示され、中でもわいせつな行為について、昨年6月に公表された「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止に関する法律」の目的を引用しながら、児童生徒の尊厳や権利を擁護するという基本認識が徹底されていなかったことを挙げています。

 性暴力に対する考え方は、刑法の性犯罪に対する改正や当事者が勇気を持って声を上げることで、日々変化しています。その変化に県教委の時宜を得た対応ができているのか疑問に思わざるを得ません。生徒はどんなに人権を傷つけられ、恐怖を感じ、その後の生活の中でトラウマを引きずりながら苦しい生活をしているのかと思うと、取り返しがつかない思いです。

 教職員によるわいせつ事案が後を絶たない中で、現場の教職員への研修や啓発の必要性は当然ですが、私は今回の事案を踏まえ、県教委事務局や教育事務所など指導的立場にある部署が私ごととして捉え、性暴力に対する子どもの権利を主体とした厳格な捉え直しをすることがまず大事だと思いますが、見解を伺います。

 さらに、県教委事務局として、今回の事案を踏まえ、身内が身内を調査するのではなく、客観性を持たせるために、調査段階から第三者を加えて対応すること、さらに、今後同様の対応を絶対に起こさないための再発防止策と決意について伺います。

【原山教育長】

 指導的立場にある部署における性暴力の捉え直しについてであります。今回の事案を検証する中で、県教育委員会の組織の中での生徒の人権に対する意識の希薄さを痛感したところでございます。今後は、県教育委員会事務局や教育事務所の全ての職員が、児童生徒への性暴力は児童生徒に対する人権侵害であるという認識を共有し、自分のこととして根絶に取り組む必要があるというふうに考えております。

 第三者を含めた調査についてでありますが、今回の調査結果報告を踏まえて、児童生徒への性暴力事案を調査するに当たりましては、児童生徒への聞き取りに当たって、必要に応じスクールカウンセラー等の専門家に聞き取りを依頼し事実確認を行うこと。被害を訴えた行為が性暴力等に該当するかの判断に当たっては、コンプライアンスアドバイザーの協力を得るといった、調査や判断に客観性を持たせるための第三者の関与の仕組みなどを構築したところでございます。

 今後の再発防止策につきましては、今後同様の対応を絶対に起こさないため、児童生徒が上げた声が担当課にとどまることなく、私を含めた関係者に確実に伝わるような情報伝達のプロセスを構築すること。児童生徒、保護者及び教職員が、学校を通さずに直接通報できる窓口の周知といった取組を行ってまいりたいと思います。

 再発防止に向けた決意についてでありますが、児童生徒への性暴力は、児童生徒に対する人権侵害であるという意識を徹底するとともに、再発防止の仕組みを確実に運用し、二度とこのようなことが起こらないよう、県教育委員会全体で取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

【毛利栄子議員】

 フランスの詩人、ルイ・アラゴンの名言の中に「学ぶとは心に誠実を刻むこと。教えるとは共に希望を語ること」があることはあまりに有名ですが、この言葉は時代を経てもなお、真実をもって迫ってきます。教師と子どもということで、子ども権利を主体として捉えるのではなく、教えてやる対象、管理の対象として捉える子ども観から脱却し、魂の殺人と言われる性暴力が一日も早く教育現場からなくなり、とかく閉鎖的と言われがちな教育委員会が風通しの良いものになることを願って、質問を終わります。

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