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議会質問

2022年6月定例会 毛利栄子議員一般質問

  1. 学校給食費の保護者負担軽減による子育て支援について
  2. リニア残土置き場候補地と盛土に係る新設条例について

学校給食費の保護者負担軽減による子育て支援について

【毛利栄子議員】

 学校給食費の保護者負担軽減による子育て支援について教育長に伺います。
 ロシアのウクライナ侵略や円安などにより、エネルギーや食品、生活必需品が高騰し、総務省の3月分の消費者物価指数では、前年同月比で、タマネギが74.9%、食用油が34.7%、小麦やパンなども10%、灯油は30.6%と軒並み値上がりし、消費税3%増税並みとも言われています。4月分の消費者物価指数を見ると、長野県は総合で全国4位、前年同月比較でトップが青森の5.5%、2番が秋田の3.7%、3番は沖縄の3.1%、長野は3.0%です。長野県民は、全国的に見ても物価高の影響でダメージが大きい暮らしを余儀なくされているということではないでしょうか。
 この県民の暮らしを今こそ支えることが求められています。物価高を収入増で補いたいと思っても、実質賃金指数は、令和3年10月から下がり続け、4月はとうとう最大の落ち込みで、前年同月比1.4%の落ち込みとなりました。給料は上がらず、ある医療機関では、収入を増やすために夜勤をもっと増やしてほしいという希望者が増えているとのことであります。
 県内で、私どもが行っている市民アンケートにも、食べたいものが買えない、子ども優先に生活すると私の衣類など何も買えない、子どもに食べさせるために必死ですと切実な声が寄せられています。
 学校給食も大きな影響を受けています。現場では栄養バランスと量を維持しながら、何とか値上げしないで対応しようと、豚のモモ肉を肩肉に替えたり、デザートの回数を減らしたり、食材の見直しなどを行って工夫に苦慮しています。さらなる値上げが続けば、給食費を上げざるを得ない選択を迫られています。
 学校給食は、食育を担う重要な教育の一環であり、子どもたちの成長、発育、健康にとっても重要です。食材費の高騰分に対する支援策として、地方創生臨時交付金が使えるとのことで、既に文科省から活用のための事務連絡も発出されています。
 特別支援学校など県立学校と市立小中学校への負担軽減策として、今議会に補正予算が提案されていることは歓迎します。1食当たり10円、20円と、交付金で対応している自治体もありますが、ぜひ、時限的な給食費の引下げ、無料化も可能とのことです。学校設置者に対し、交付金活用を周知していただくとともに、食材の調達についても、安全・安心の学校給食推進や、食育推進の立場から、地場産や国産を積極的に検討するよう周知していただきたいと思いますが、教育長いかがですか。

【内堀教育長】

 御質問いただきました。
 給食費への地方創生臨時交付金の活用と、地場産品等の積極的な使用の周知についてでございます。
 議員御指摘のとおり、国の地方創生臨時交付金は、学校給食費の高騰分や時限的な引下げ等に活用が可能であることから、県教育委員会では、4月14日付で市町村教育委員会に通知を発出いたしまして、その中で、全国の臨時交付金の活用事例の中から、給食費の無償化や保護者負担の軽減を図った市町村の好事例等を紹介するとともに、地場産品や国産品の積極的な活用を検討するよう依頼したところでございます。
 重ねて、6月9日に開催いたしました栄養教諭などが参加する衛生管理推進研修会でも、交付金の活用について呼びかけたところでございます。
 今後も学校設置者に対し、機会を捉えて交付金の活用や地場産品等の活用を呼びかけてまいりたいと考えております。

【毛利栄子議員】

 給食費は学校徴収金の約半分。子ども1人当たり年間約5万円、3人いれば15万円にもなり、負担感が大きくなっています。2月の議会の山口議員の学校給食費無償化を求める質問に対し、教育長は、無償化等に伴う効果について、子育て支援に対する経済的負担の軽減、町村への移住希望子育て世帯へのPR、地産地消、学校給食費徴収に係る教職員の負担軽減を挙げていますが、学校給食法に基づき、保護者は、食材あるいは学校給食費を負担することになっているとし、教育費の無償化は、市町村において判断し実施することが適当であろうと答えています。
 しかし、憲法は、義務教育は無償とすると定めていますし、食材費の高騰に伴い、今回政府が音頭をとって公費の投入も可能としていますので、保護者負担にこだわる県の言い分は、あまり説得力を持つものとは思えません。
 長野県は田舎暮らしの本のアンケートで、統計を取り始めた2006年から連続して移住したい県の1位にノミネートされています。活力ある長野県の創出や、子育てしやすい長野県をアピールするためにも、2017年の文科省調査でも、全国では完全無償化自治体が4.4%、一部補助など何らかの助成をしている自治体が24.7%と、4分の1を超えている現状があります。お隣の山梨県では40%の自治体が既に無料化していますし、長野県でも11の町村と、1組合立で無償化しています。
 コロナ禍で一層負担感の強い学校給食費の無償化を、この際市町村と協力しながら思い切って実施していただきたいと思いますが、教育長のお考えを伺います。

【内堀教育長】

 子育て支援策としての学校給食費の無償化についてでございます。
 学校給食法に基づき、小中学校の学校給食の実施に当たっては、学校設置者である自治体が、人件費や施設などの経費を負担し、保護者は食材費、いわゆる学校給食費を負担することになっております。
 県内の町村の中には、子育て支援策の一つとして、保護者負担の軽減を図っているところがあることは承知しておりますけれども、給食費の無償化は、地域の状況などを把握している市町村において判断し、実施することが適当であると考えているところでございます。
 以上でございます。

【毛利栄子議員】

 教育委員会は、今も教育長から御答弁ありましたように、学校給食は、設置者、つまり市町村の責任で対応すべきとの考えをずっと示されております。
 しかし、保護者にとっては、国であっても、県であっても、どこでやっていただいても構わないわけです。このまま物価高騰が続き、値上げという選択がされれば、たとえ1食10円であっても年間3,000円弱上がることになり、3人子どもがいれば1万円にもなります。これが1食20円上がれば、その倍の負担になるということであります。これでは子育てに不安が広がるばかりではないでしょうか。
 子育てに希望が持てる長野県にしていただくためにも、学校給食費の無償化に足を踏み出し、保護者の応援をしていただけるよう切に要望いたします。千葉県では、この6月に知事が、子どもの多い世帯を対象に市町村と協力し、年度内に実施できるよう無償化の検討を始めると答弁されていることも御紹介をさせていただきます。

リニア残土置き場候補地と盛土に係る新設条例について

【毛利栄子議員】

 リニア残土置場候補地と盛土に関わる新設条例について、知事並びにリニア整備推進局長、建設部長に伺います。
 初めに、残土置場候補地の問題です。リニアの残土置場候補地が土砂災害の危険区域にあるとの新聞報道は、関係する住民の皆さんにとって大きな衝撃をもって受け止められました。近年の異常な降雨や、死者27名、行方不明者1名の大惨事となった熱海の土石流災害を見れば、流域に住む皆さんにとって、そんなところに埋め立てられたら何が起こるか分からない、命の危険にさらされないか不安になるのは当然です。
 リニア残土置場の候補地が危険区域にあるのは、阿智村のクララ沢、飯田市の清水沢川、下條村の火沢ということですが、他にもあるのか。リニア整備推進局長に伺います。

【斎藤リニア整備推進局長】

 御質問をいただきました。  まず、リニア発生土置場候補地における土砂災害のおそれのある箇所の有無についてのお尋ねでございます。
 事業者であるJR東海では、発生土置場の候補地として14か所を決定し、さらに20か所について、各市町村が開催するリニア対策委員会やJR東海が開催する住民説明会において、地元説明が行われておりますが、これらのうち土砂災害のおそれのある箇所は、議員御指摘の3か所を含め、19か所でございます。

【毛利栄子議員】

 新聞報道では、知事は、候補地が土砂災害の危険渓流であることは県のホームページでも公開しており、市町村が知らない状況ではないと思うと述べたとされていますが、ホームページを見ても、あまりに細かい上に、箇所数も多いため場所を特定するのは容易ではありません。熱海の土石流災害を機に、盛土の危険から命を守ることが最大の課題になっている中、そのような発言をされているとしたらあまりに不適切ではないかと思います。
 現に、阿智村議会は、3月30日、住民に寄り添う姿勢がないと指摘し、大変遺憾として、情報の扱い方や丁寧な説明を求め、県とJR東海に抗議と要望書を提出しています。その後慌てて説明の機会を設けたとされますが、県行政への信頼は大きく損なわれたのではないでしょうか。
 そこで、リニアの残土処分置場の候補地選定過程の中で、県はなぜ地元に積極的に情報を提供し、丁寧な説明をしてこなかったのか。知事に伺います。

【阿部知事】

 発生土置場に関連した地元説明について御質問をいただきました。
 まず、なぜ積極的に情報提供をしてこなかったのかという御質問であります。
 議員御指摘の土石流、危険渓流等でありますけれども、これは、林野庁であったり国土交通省の容領に基づいて、住民への周知等を目的に調査をして、県が公表し、市町村にも通知をしている箇所であります。既に市町村には通知をしているところであります。
 この地域・区域でありますけれども、法律等により盛土の設置が規制されているという箇所ではありません。盛土を行う場合にあっては、必要な対策を行うことで安全が確保され得るものと考えています。
 そのため、リニア事業の説明会におきましては、この対策の説明に力点が置かれ、土石流、危険渓流等であるということ自体の説明は、必ずしも行われてこなかったというふうに承知をしています。

【毛利栄子議員】

 さらに県内のリニア工事で発生する残土は、974万立方メートルと言われて膨大な量ですが、公共事業では、処分先を確保してから工事を始めるのに、民間工事はそのルールがないために、処分先も決まらないのにJR東海は工事を始めています。
 そこで、リニア整備推進局長に伺います。最終処分先が決まっている量はどのくらいでしょうか。

【斎藤リニア整備推進局長】

 リニア工事の発生土のうち、最終処分先が決定している土量についてのお尋ねです。リニア発生土置場候補地のうち、県はJR東海から決定の都度連絡を受けており、現在14か所の決定済みの候補地では、長野県内から発生する土量の約3割に相当する容量が確保されている状況です。
 このほかJR東海では、地元説明を行っている20か所を含め約30か所で調整中としており、これらの箇所全てにおいて搬入可能となった場合の用量は、県内で発生する土量の約9割に相当すると説明しております。
 以上でございます。

【毛利栄子議員】

 処分先は引き続き探していくと思いますが、今回の事案を踏まえ、関係住民に今後どのように対応していくのか。知事の見解を伺います。

【阿部知事】

 今後の対応についてでありますが、先ほど申し上げたように、そもそも規制をされている区域ではありませんが、一連の今回の経過から、やはりこうしたことも含めて地元に説明するのが適切だということで、県からJR東海に対しましては、説明内容の改善を求めたところであります。JR東海が行う地元への説明の際には、土石流、危険渓流等に関する説明も追加をすることとしてもらったところであります。
 なお、これは市町村との関係でありますが、本来こうした地域については、市町村あるいは地域の皆様方が認識をしていただいていることが必要だというふうに考えておりますので、県としては、4月に市町村に対して改めて文書を出させていただきまして、土砂災害のおそれのある箇所の周知徹底を図っていただくようにお願いするとともに、市町村担当課長会議においても説明を行わせていただいたところであります。
以上です。

【毛利栄子議員】

 長野県土砂等の盛土等の規制に関する条例案に関わって建設部長にお聞きします。
 今まで盛土をするに当たっては、森林法、農地法、土砂災害防止法、砂防法、河川法、宅地造成等規制法、廃棄物処理法など、個々の法律に照らして行われてきたと承知しています。
 しかし、危険な盛土に対する全国統一の基準・規制がないことから、災害も起こる中で、全国知事会も法整備を求めてきましたが、さきの通常国会で全会一致で盛土規制法が可決し、成立しました。
 条例案では、面積が3,000平方メートル以上、または盛土高さが5メートル以上の場合は、知事の許可が必要としています。国の新法と相まって、今回の条例が制定されることにより、住民の生命・財産が守られ、安全・安心がきちんと担保されるのか。建設部長の見解を伺います。

【田中建設部長】

 私には、盛土等の規制に関する条例案について御質問いただきました。
 初めに、盛土規制法と条例による県民の安全・安心の担保についてのお尋ねでございます。
 盛土規制法は、重点的に規制が必要な宅地や森林、傾斜地など区域を指定し、その区域内における盛土を厳格に規制することになりますが、本条例は、この法に基づく指定区域外の場所をカバーすることになります。
 また、本条例では、土砂崩壊などによる災害の発生防止に必要があると認める場合の措置命令や、地方自治法に定められている上限の罰則などを規定することで、条例の実効性を担保することとしています。
 各種法令などに加え、本条例を適切に運用することにより、盛土等に起因する災害を未然に防止し、県民の皆様の安全・安心な暮らしを確保してまいります。

【毛利栄子議員】

 5月13日に出された熱海の土石流災害の行政対応検証委員会の最終報告書では、県、市など行政の対応は大失敗だったと厳しく指摘し、その本質は、盛土が崩壊した場合にどういう最悪の事態が起こるかを想定すべきであったが、それができなかったとしております。
 また、その中で、行政職員の知見のみでは深刻度の認識や対応に苦慮するため、土木、地質の専門家に現地調査を依頼し、災害発生の危険性の確認や行政対応の助言を求める体制整備が望ましいとしていて、私は、この指摘は長野県でも検討に値するものと受け止めました。
 盛土の主なものは建設残土だと思いますが、長野県では、やはりリニアに関わっての残土処分が当面の大きな課題だと思います。クララ沢の件でも、阿智村では、独自に盛土の安全に詳しい専門家を招いて現地を視察。専門家は、設計図やクララ沢の環境を分析し、見解を示すとのことですが、今後、地元市町村はリニア工事に関連して、残土処分が進むにつれ、住民の不安の払拭のために専門家に調査、分析、見解を依頼するケースが増えてくると思われます。
 その際、市町村がばらばらに専門家に調査等の委託をするのではなく、リニアのような大規模な一定規模以上の盛土に関しては、県が専門家からなる第三者委員会を設置し、そこで出された意見に基づき、許可権者としての知事が判断できる仕組みづくりが必要だと思います。
 条例案には規定がありません、地質や水象、気象や成り立ちなど、全体を専門的に県職員だけで分析、判断するのは無理があると思われます。第三者委員会の必要はないのか。建設部長の見解を伺います。

【田中建設部長】

 第三者委員会の必要性についてのお尋ねでございます。
 本条例による許可に当たっては、大規模な盛土の場合、安定計算のみならず、近隣における施工実績などにより、盛土の安全性について十分検討し、安全な盛土等の構造となるよう、盛土を行う者に求めることを考えております。
 砂防法で指定地内の盛土を許可する際には、担当部局で構造を審査しておりますが、大規模な盛土で高度な技術力が必要な場合には、担当部局と調整の上、事業者が有識者の意見を聞いた事例がございます。
 本条例においても、現地の地形・地質、盛土の構造や規模等を踏まえ、大規模な盛土で許可に当たり高度な技術的判断が必要な場合には、第三者の専門的知見を活用することを検討してまいります。

【毛利栄子議員】

 政府が設置した盛土検討会の第1回会議の資料によると、都道府県で盛土に関わる条例を設置しているところは26、そのうち住民説明会を規定しているところは、ほぼ半分の12とされています。
 長野県で住民説明会を義務づけていることは評価しますが、条例案第10条では、説明する対象者を周辺地域住民とされていますが、周辺地域住民とはどの範囲を指すのでしょうか。直接的に関係する周辺住民という狭い範囲だとしたら、土石流の被害の大きさから考えれば、下流域の住民の不安のほうが大きい場合もあります。
 リニアの工事現場や残土埋立予定地など、何度も現地調査させていただきましたが、三六災害では、土石流が沢を下り、下流域に大きな被害が出たことが口々に語られています。
 ぜひ、谷を埋める場合など、下流域に住む住民も対象に加えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。建設部長に伺います。

【田中建設部長】

 住民説明会の説明対象となる周辺地域の範囲についてのお尋ねでございます。
 説明の対象範囲としては、盛土を行う土地や隣接地が属する町内会・自治会のほか、土地の形状や土砂災害警戒区域などの指定の状況なども踏まえ、災害の危険性が及ぶおそれがある地域の住民の皆様も含まれると想定しております。
 したがいまして、議員の質問にございました、谷を埋めるなど、盛土を行う土地の下流域に盛土が流出するおそれがある場合などにおいては、下流域が属する自治会などの住民も説明の対象となると考えています。
 本条例を適切に運用することにより、住民の皆様の御意見への対応に努めるよう盛土を行う者に求めるなど、住民の皆様の不安を払拭し、盛土の安全性を確保してまいります。
以上でございます。

【毛利栄子議員】

 飯田市の清水沢川などでは、本当に埋立てを心配される皆さんがグループをつくって、専門家を呼んで何回も何回も学習会をやられたり、それからまたそのことを住民の皆さんにお知らせするということで、チラシ配布を身銭を切ってやられてきたというふうな経過もあります。村を二分するような形で、事前にここは本当にちょっと大変なところだよということが分かっていれば、そんなことはなかったのではないかなとも思われます。
 知事は、今後は丁寧に説明されていくということですので、ぜひ、リスクも含めてよく説明していただきながら、対応をしていただきたいと思います。  条例の性格上、必要最低限の提案がされているわけですが、例えば、盛土の許可基準や土砂等管理台帳に記載される内容など審査の上で知りたいこと等は、規則で定めるとされています。規則や要綱は、執行権者の権限で定めることになっているため、今、並行して御検討いただいているとは思いますけれども、議会が関与することはできません。ぜひ、該当の委員会で適宜御報告をいただければと要望させていただき、質問を終わります。
 ありがとうございました。

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