日本共産党長野県会議員団

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議会質問

2022年9月定例会 山口典久議員一般質問

  1. 国政に対する姿勢について
  2. 県政運営の基本姿勢について
  3. 新型コロナウイルス感染症対応について
  4. リニア中央新幹線工事について

1.国政に対する姿勢について

【山口典久議員】

 おはようございます。日本共産党県議団、山口典久です。

 阿部知事の4期目の県政運営のスタートに当たり、初めに、国政に関する知事の見解について伺います。

 今年2月、ロシアのウクライナ侵略は世界に衝撃を与えました。そして、いまだに残虐な攻撃が続けられています。このウクライナ侵略を受けて、日本の国内では「日米同盟の抑止力強化」「防衛力増強」が強調され、そして岸田首相は、参院選後、できる限り早く憲法改正の発議に至る取組を進めていくと宣言しました。そして、「敵基地攻撃能力の保有」「軍事費を5年以内にGDP比で2%以上への増額」を進めようとしています。

 しかし、今回のウクライナ侵略の背景には、NATO諸国もロシアも、軍事力によって相手の攻撃を抑止するという戦略を進めてきたこと、力対力に陥ってきたことがあるのではないでしょうか。もちろん、国連憲章を蹂躙したロシアは責任を逃れることはできませんが、その上で、力対力の外交の失敗があったことを指摘しなければなりません。

 今、進められようとしている日本の大軍拡の路線は、東アジアと世界に新たな軍事的緊張をつくり出し、軍事対軍事の危険な悪循環を生み出します。軍事費の2倍化は、社会保障や教育予算をはじめ、暮らしを押しつぶすことになりかねません。今、必要なのは、戦争を起こさないための外交に知恵と力を尽くすことではないでしょうか。

 参院選後の共同通信の世論調査でも、「戦争を回避するための手立て」として、平和外交、憲法9条厳守が半数近くを占め、軍備拡大は十数パーセントでした。日本が軍拡の道に進むのか、それとも平和外交、憲法9条を生かして、話合いにより戦争を防ぐ道を進むのか、重大な岐路に立たされています。

 日本の進むべき道について、阿部知事の見解を伺います。

【阿部知事】

 私の国政あるいは県政運営の基本姿勢についての御質問に順次お答えしたいと思います。

 まず、国の安全保障政策についてでございます。

 今までの我が国は、日米安保の下で、国際的な紛争、防衛、安全保障ということについてかなりアメリカに依存してきました。今もその状況が続いているわけで、そういう中で沖縄の皆様方をはじめ、基地負担に苦しんでいる方々もいらっしゃるという現状があります。

 そういう中で、これから日本をどうしていくのかということについては、外交、防衛、やはり全般的にしっかり考えていかなければいけない時期に来ているのではないかというふうに思います。

 私は、自らの国の平和と安定は自ら守り抜く覚悟が必要だというふうに思っております。もとより、外交努力を通じて国際間の諸課題を解決していくということが、まずは基本だというふうに思っております。

 しかしながら、現在の国際情勢においては、国民あるいは国土を守るために、どのような防衛力が必要であるのかということについては、真摯な議論が必要だというふうに考えております。そういう観点で、外交を含めたこの防衛政策、安全保障政策全般について、総合的、戦略的な政策の在り方を、ぜひ政府、そして国会の場でしっかり検討いただきたいというふうに考えております。

【山口典久議員】

 ロシアのプーチン大統領は、核兵器使用の脅しを繰り返しています。これが単なるハッタリや脅しではなくて、不測の事態を招きかねないとして、世界で不安が広がっています。核兵器大国の指導者が、その先制使用を公言し、世界を脅迫する事態に、もはや核兵器が抑止力とならないことが明らかになったのではないでしょうか。

 核兵器の使用を止め、核戦争への恐怖をなくす唯一の方法は、全世界から核兵器を緊急に廃絶することです。今、唯一の戦争被爆国日本が果たすべき役割が重要になっています。日本が世界に広がる核兵器禁止条約に参加し、核戦争の危険をなくしていく、国際的な世論形成に大きな力を発揮すべきときと考えますが、いかがでしょうか。阿部知事の見解を伺います。

【阿部知事】

 核兵器禁止条約に参加し、核戦争の危機をなくすため力を我が国が発すべきと考えるが、見解を伺うという御質問であります。

 我が国は、世界で唯一の被爆国であるわけであります。そうした我が国にとりまして、核兵器の廃絶、そして恒久平和の実現は、全ての国民の願いだというふうに考えています。

 県議会におきましては、昭和59年に核兵器の廃絶と世界の恒久平和を実現するため、非核平和県民宣言が決議をされております。それ以来、核兵器廃絶を求める意見書を国に対して5回提出をされてきていらっしゃるわけで、こうした取組に敬意を表したいというふうに思います。

 私も広島、長崎の被爆者の方たちが訴える核兵器廃絶国際署名、これは、核兵器を禁止し、廃絶する条約を結ぶことを全ての国に求めるというものでありますが、この国際署名の趣旨に賛同し、署名をさせていただいたところであります。

 来年、我が国で開催されるG7サミット、首脳会合は、まさに被爆地広島で開催されるということになります。日本政府においては、実効性のある核兵器の廃絶に向けた取組を、ぜひ世界で唯一の被爆国としてリーダーシップを発揮していただくことを強く期待しているところでございます。

【山口典久議員】

 先日発表された長野市の8月の消費者物価は、総合指数はこの間上がり続け、前の月と比べて0.4%の上昇、1年前に比べると4%の上昇でした。食料は1年前に比べ5.1%、光熱・水道は17.7%の上昇で、物価高騰が一層深刻になっています。

 その大きな原因が、アベノミクスの異次元の金融緩和がもたらした異常円安にあります。為替の影響だけでも、輸入品価格は昨年に比べて2割も高騰しています。異次元の金融緩和の行き詰まりは明らかです。

 ところが、岸田内閣が6月7日に閣議決定した「新しい資本主義実行計画」は、当初掲げた分配重視が消えてしまい、大胆な金融政策等アベノミクスの3本の矢を堅持することを明記しました。所得倍増は、いつの間にか資産所得倍増にすり替わっています。

 同時に物価高騰で暮らしが苦しくなっている原因に、賃金が上がらない、低い年金、教育費が高過ぎる問題があります。また、消費税の連続増税で家計と景気が痛めつけられてきました。10月から370万人の高齢者を対象に、医療費の2割負担も実施されます。

 日本の経済の成長を止め、格差と貧困を拡大し、深刻な事態を招いた大元にあるアベノミクスや新自由主義から、賃金の上昇や社会保障の充実等、国民に優しい経済に転換してこそ、持続可能な経済の成長につながると考えますが、いかがでしょうか。阿部知事の見解を伺います。

【阿部知事】

 新自由主義からの転換による持続可能な経済成長の必要性についての御質問であります。本年6月7日に閣議決定されました新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画におきましては、昨日も少し言及いたしましたが、新しい資本主義を貫く基本的な思想として、市場も国家も、官も民もによって課題を解決していくということ。あるいは、課題解決を通じて新たな市場をつくる、すなわち社会的課題解決と経済成長の二兎を実現する。そして、国民の暮らしを改善し、課題解決を通じて一人一人の国民の持続的な幸福を実現するということ。こうしたことがうたわれているところであります。

 市場だけに頼ることなく、社会的課題の解決や国民一人一人の幸福追求、こうしたことを目指していくという方向性については、私としては共感をしているところでございます。

 また、同日閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太の方針でありますが、そこの中におきましても、人への投資が強調されておりますし、また、多様性に富んだ包摂社会の実現であったり、一極集中から多極化した社会への転換、こうしたことがうたわれているところであります。岸田内閣、現政権与党におきましては、ぜひこうしたことの実現を貫徹していっていただきたいというふうに期待をしているところでございます。

2.県政運営の基本姿勢について

【山口典久議員】

 続いて、阿部知事の県政運営の基本姿勢について質問します。

 知事は4期目のスタートに当たり、「スタートダッシュ・アクション2022」を掲げ、県内77市町村の訪問や住民らと対話などに取り組むとしています。

 この間、東日本台風災害、新型コロナ感染症の拡大、異常な物価高騰等、経験したことのない重大な出来事が相次ぎ、長野県と県民を巡る情勢は大きく変化しています。県民は、打開の展望を切実に求めています。格差と貧困の拡大が一層深刻になる中、県民の苦難をしっかり受け止めて、力強く支えるメッセージと施策を求めています。

 知事は、どのような問題意識を持って県民の中に入り、また、県政運営に当たるのでしょうか。

【阿部知事】

 県政運営の基本姿勢ということで、まず「スタートダッシュ・アクション2022」で県民の皆様と対話をするわけでありますが、どのような問題意識を持って県民の中に入っていくのか、また、どういう問題意識で県政運営に当たるのかという御質問であります。

 今回の県知事選挙で県内各地を回らせていただく中で、先日も少し御答弁したように、本当にコロナ禍、物価高騰をはじめとした身近な生活課題、そして災害への不安、本当に様々な課題や不安を抱えていらっしゃる県民の皆様方が大勢いらっしゃるということを実感をしているところでございます。

 私としては、まずは対話をしっかり行うことにより、こうした県民の皆様との思いをできるだけ受け止めていきたいというふうに思いますし、また、県民の皆様方と問題意識や方向性、これは県だけで取り組めることばかりではありませんので、問題意識や方向性をぜひしっかり共有をして、共に行動できるような環境づくりに努めていきたいというふうに思います。もとより我々県行政が取り組めることについては、しっかり責任を持って進めていかなければいけないというふうに思います。

 今後の県政運営に当たりましては、まず当面は、確かな暮らしを守り抜くということを訴えさせてきていただいておりますので、このコロナ禍からの再生であったり、あるいは物価高騰をどう乗り切るかということ、さらには災害に強い県づくり、こうした多くの県民の皆様方が不安として感じていること、今、直面している課題、そうしたことにまずは全力で向き合って、県民の民様方の暮らしを支えてまいりたいというふうに考えております。

【山口典久議員】

 市町村との連携の在り方について伺います。

 子供の医療費は、県と市町村との検討の中で、中学卒業まで現物給付、いわゆる窓口無料が実現しました。さらにその財源ともなる通院費の県の負担分が、今年度未就学児から小学校3年生まで拡大されました。これを受けて、500円の受給者負担金も撤廃し、文字どおり完全無料を実施する自治体が17町村に広がっており、大いに歓迎するものです。

 今、市町村においては、生活が困難な方への灯油や電気代の支援、物価高騰手当が広がっています。また、学校給食は食育の重要な一環であり、給食費の無償化が、現在22市町村に拡大していることは貴重な前進だと考えます。

 これまで、こうした施策は市町村が実施することが適切とされてきました。しかし、県民の要望が強く、市町村行政の重要性も増しています。従来の、県と市町村の役割分担にとらわれず、県と市町村が協働しながら県民要望に応えるなど、関係性を見直すことが必要と考えますが、いかがでしょうか。

 以上、阿部知事の見解を伺います。

【阿部知事】

 従来の県と市町村の役割分担にとらわれず、県と市町村の関係性を見直すことが必要ではないかという御質問でございます。

 これまでも、市町村の皆様方とは率直な対話をさせていただく中で、例えば権限移譲を進めたり、あるいは税の滞納事案を一緒に処理するための地方税滞納整理機構を共同で設置したり、また、新しいデジタル社会に向かっていくために、77の市町村が参加をいただく中での先端技術活用推進協議会の設置であったり、市町村の皆様方と協力する中で、いろいろな施策を進めてきたところであります。

 また、コロナ対策、価格高騰対策についても、市長会、町村会の皆様方とは随時意見交換をしてきたところでございます。また、市町村と人材共同確保の仕組みづくりを行っていきたいと思いますが、今後は、率直な意見交換を通じていい仕組みをつくっていきたいというふうに思っています。

 県と市町村との関係は、基本的な法令で定まっている部分もたくさんありますので、そこはしっかり押さえていかなければいけないと思いますが、ただ、これは県がやってもいいし、市町村がやってもいいといったような課題もあります。そういう意味では、ぜひしっかりとした対話を行う中で、県と市町村の適切な役割分担、あるいは連携・協力の在り方については、常に考え続けていきたいというふうに考えております。

 私への質問以上でございます。

【山口典久議員】

 市町村との連携や協働は、とりわけ財政規模の小さい町や村が多く、少子化が進行しているこの長野県においては特に重要かと思います。給食費無償化をはじめ、様々な県民要求を実現するためにも、ぜひ市町村との積極的な協働をお願いをいたします。

3.新型コロナウイルス感染症対応について

【山口典久議員】

 新型コロナウイルス感染症対策について、健康福祉部長に伺います。

 第7波の急速な拡大の中で、陽性者が過去最高を更新し、病床使用率が一時68%になりました。感染防止対策、感染者への対応等、医療機関、高齢者施設、保健所、そして関係する皆さんの長期にわたる過酷な中での御奮闘に、心から感謝するものです。

 第7波は、各地の診療検査医療機関に受診者が殺到し、まさにパンク状態でした。私は6か所の医療機関からお話を聞きましたが、電話がつながらない、長時間の順番待ちが生じ、とりわけ休日の当番医は予定した枠の倍以上、120人、150人、中には200人が殺到し、対応しきれなかったということです。また、一般外来の診療や入院の制限等も行わざるを得ない事態が発生し、関係者からは「もう医療崩壊の寸前」と悲鳴が上がっています。

 第7波を通じて、県内の医療はどのような状態に置かれていたのでしょうか。医療提供体制は逼迫し、まさに危機的な状況だったと考えますが、見解を伺います。

【福田健康福祉部長】

 私には、新型コロナウイルス感染症対応につきまして、御質問をいただいております。御答弁申し上げます。

 第7波の県内医療の状況でございます。

 第7波におきましては、新規陽性者数が過去最多を更新し、療養者数が一時2万7,000人を超えるなど、過去に例のない感染状況となりました。このため、特に外来診療で厳しい状況が生じ、地域の身近な医療機関において当日の来院を断らざるを得ない、あるいは電話がつながりにくいなどの事例が増加をいたしました。

 また、確保病床使用率は8月21日に68.1%となり、過去最高を更新したほか、確保病床外にも、最高で1日当たり225人の方が入院しておられました。さらに御自身の感染や陽性者との濃厚接触による医療スタッフの欠勤、高齢要介護者の入院の増加によるスタッフ不足などにより、一部の医療機関では患者の受入れを制約せざるを得ない状況になるなど、本県の医療提供体制は、一時的に逼迫した状況にあったと認識をしております。

【山口典久議員】

 こうして必死に医療の提供を行ってきた医療機関に、混迷や不信が広がったのが、国の各種補助金が9月末の期限になっていたことでした。各種補助金等の打ち切りや縮小は、感染医療や医療体制の強化に逆行するものです。困難な中で奮闘する医療機関が安心して医療提供を行うためにも、補助金を安定的に支給することが絶対に欠かせないと考えます。県独自の補助金の状況も含めて見解を伺います。

【福田健康福祉部長】

 補助金の実施期間についての御質問でございます。

 医療機関に対する県独自の補助金では、期限を9月末までとしたものはございませんが、ただし、国の新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業につきましては、年度当初、当面の対応として9月末までの実施とされておりました。

 このことから、県といたしましても、国に対し、医療機関に対して計画的に支援するため、早期に継続する方針を示してほしい旨を要望してまいりました。先般9月22日付で、国から令和5年3月末まで継続するとの通知がございました。

 現在、補助要件等制度の詳細の確認を進めているところでございますが、いずれにいたしましても、今後とも医療機関や行政が長期的な見通しを持って新型コロナウイルス感染症にしっかりと対応できるよう、必要となる財源等について国に求めてまいります。

【山口典久議員】

 年末にかけて、新型コロナウイルス感染症の第8波、インフルエンザの同時流行、さらにこの先新たな感染症も懸念されます。こうした中、今回、発生届提出対象の変更に伴い、報告から漏れる患者の把握や、症状が悪化した場合の対応など、不安が医療関係者からも出されています。

 第7波では、重症化しにくいと言われてきました。しかし、軽症と診断されても高熱が続いたり、咳や喉の痛みが引かない人も多いと報告があります。オミクロン株では肺炎は減ったと言われますが、一方で、持病が悪化する傾向が目立ち、回復せず亡くなる高齢者も少なくなく、死者数は過去最多になりました。若い人や基礎疾患のない人の死亡例が一定程度あることも、専門家が指摘をしています。

 第7波における検査体制や、診療検査医療機関の体制、入院治療、在宅治療など、この間の教訓や今後の課題について明らかにした上で、医療体制を強化し、万全の備えを確立することが必要と考えますが、見解を伺います。

【福田健康福祉部長】

 第7波での課題と第8波等に向けた医療体制の強化についての御質問でございます。

 第7波につきましては、まだ新規陽性者数が高い水準にあり、今後感染が落ち着いた段階で、発生状況や対策の振り返りをきちんと行ってまいりたいと考えておりますが、現時点での認識について申し上げますと、第7波の大きな特徴は、一部の医療機関で当日の来院を断らざるを得ないとか、電話がつながりにくくなるなど、外来診療の逼迫が生じたことであると考えております。

 こうした状況に対しては、自己検査の活用促進、軽症者登録センターの対象の拡充や、診療検査医療機関を増やすための取組などを実施して、外来診療の負担軽減に努めてきたところであります。今後も引き続き、療養体制などを含めた様々な面におきまして、県民の命と健康を守る医療提供体制の整備を進めてまいります。

 なお、発生届対象外となった方々に対しては、医療機関や軽症者登録センターでの県作成のリーフレット配付、説明をいたしまして、健康観察センターの連絡先や療養上の注意事項を確実にお伝えするとともに、体調悪化時に直ちに相談できる体制をつくったところでございます。

【山口典久議員】

 続いて、高齢者施設について質問します。

 第7波では、医療機関だけでなく、高齢者施設においても集団感染が発生をいたしました。感染した入所者の施設内療養への対応、施設従事者や家族の感染で人員が確保できない事態等、現場の大変な苦労をお聞きしてまいりました。こうした中で、介護が必要な人がサービスを受けられない、いわゆる介護危機が深刻な問題になりましたが、長野県の状況はどうでしょうか。

【福田健康福祉部長】

 次に、第7波における高齢者施設の感染状況でございます。

 施設からの報告によりますと、8月14日から8月20日までの週がピークとなっておりまして、79施設、234人の感染事例が確認をされました。以降減少傾向とはなっておりますが、これまで全体で延べ405施設、1,490人の感染が確認されております。

 これは第6波のピークである1週間当たり25施設、103人、あるいは第6波の合計ですと、延べ337施設、980人、これと比較をいたしますと、感染者数はピーク時で2倍、全体数で1.5倍程度となっております。第7波は、オミクロン株の特性として、重篤度が低いものの伝播性が高く、以前と比較して高齢者施設における療養が必要となった事例が多数発生をしております。また、事業者の感染事例も多く、大変厳しい状況に置かれていたと認識をしております。

【山口典久議員】

 県は、感染状況に応じて、高齢者施設の従事者を対象にPCR検査を実施するとともに、当該施設での自主検査を奨励し、経費を補助するとしてきました。これは、感染拡大の防止に一定の効果があったと現場でも言われています。

 一方、絶えず集団感染と入所者の重症化への不安等にさらされている中で、感染状況のレベルや検査の対象者に制限があることなどに対して、改善を求める声があります。高齢者施設において、必要な検査、希望する検査が行われていたのでしょうか。対象検査や対象範囲の基準の拡大と、検査体制の改善についても見解を伺います。

【福田健康福祉部長】

 高齢者施設の従事者を対象とした検査についての御質問でございます。

 高齢者施設の入所者は感染による重症化率が高く、集団感染が発生した場合に、施設運営に与える影響が大きいことから、県としては、行政検査の一環として集中的検査を行うとともに、感染警戒レベルの高い地域においては、施設による自主検査への支援を令和3年1月から行っております。

 令和3年12月末から第6波が始まり、感染力が強いオミクロン株が主体となったことを踏まえまして、集中的検査として、令和4年2月から3月における高齢者施設の従事者等に対する4回の検査を実施するとともに、第7波においても、高齢者施設の従事者等に対し、8月第1週から第3週までの間、感染状況に応じ柔軟に使用していただけるよう、約19万個の抗原定性検査キットを配付いたしました。

 あわせて、高齢者施設における自主検査費用の補助金を、7月28日から、補助率を3分の2から10分の10にするなど支援策も強化したところでございます。

 以上、申し上げました対応を取っておりまして、必要な検査が行われていたと考えておりますけれども、今後も高齢者施設の団体からの御意見などもお聞きしながら、適切かつ柔軟な対応を図ってまいります。

【山口典久議員】

 深刻な問題になっているのが、施設内の集団感染の発生等で、新規入所者や通所利用者の受入れ中止の措置が取られた高齢者施設において、経営上も大きな損失が生じ、運営に困難をきたしていることです。今後のいわゆる介護危機を招かないためにも、何よりも必要な介護サービスの提供を続けるためにも、県としての対応が必要ではないでしょうか。

 第7波の中で、医療体制と同様に、介護分野でも、この間の教訓や今後の課題について明らかにした上で新たな事態に備えることが必要と考えますが、いかがでしょうか。

 以上、健康福祉部長の見解を伺います。

【福田健康福祉部長】

 利用者の受入れ中止による損失についての御質問でございます。

 これまで県では、例えば緊急的な人材確保や、施設内療養を行う場合のかかり増し経費に相当する財政支援を行っておりまして、令和3年度の補助金の実績は、101事業所、1億355万8,000円でございました。令和4年度につきましては、7月末時点で164の事業所から相談があり、今後速やかに必要な支援を行ってまいります。

 一方、受入れ中止の措置による収入減に対しては、通所サービスについて、感染症や災害の影響による利用者の減少があった事業所が請求する介護報酬の額に3%を加算する制度がございまして、県では、その周知に努めているところでございます。

 今議会では、価格高騰対策の一環として、県独自に社会福祉施設の支援のための予算をお願いしております。コロナ禍におきましても、介護事業所が安定した経営ができるよう、国に対しても支援を拡大するよう、引き続き粘り強く働きかけをしてまいります。

 それから、これまでの教訓を踏まえた今後の対応についての御質問でございます。

 第7波の経験を踏まえますと、高齢者施設の支援としては、施設内の療養体制の確立、それから感染者の拡大を防止するためのゾーニング管理の徹底がとりわけ重要であると考えております。

 これまで県では、施設内の療養体制の確立を図るため、療養者が施設にいる場合に、1日1万円、最大30万円までを補助するほか、経口抗ウイルス薬であるモルヌピラビルが処方できるよう施設の登録を進めてまいりました。

 また、ゾーニング管理の徹底としては、長野県看護協会と連携した感染管理認定看護師による施設への個別指導や、第6波の県内集団感染事例を踏まえて、県で作成をいたしました研修動画の視聴を徹底していただくことなどの対策によりまして、第7波に対応できるよう努めてまいりました。

 今後、モルヌピラビルに関しては、従来の登録制度から一般流通品として9月16日から処方できるようになったことから、引き続きその普及に努めるとともに、事業所団体の御意見を伺いながら、必要な支援を行ってまいります。

 以上でございます。

4.リニア中央新幹線工事について

【山口典久議員】

 続いて、リニア中央新幹線工事について質問します。リニア中央新幹線の建設残土の処分場に関し、とりわけ急峻な谷や沢を埋め立てる盛土の崩落や土石流災害の不安が各地で上がっています。

 その一つに、豊丘村本山の残土処分場があります。ここはトンネル工事の残土130万立方メートルを埋め立てる計画で、保安林解除が行われ、現在工事が進行しています。

 ところが、この工事がずさんではないかと、問題を指摘する声が住民の間で上がっています。具体的には、下流に洪水調整池、埋設工、土留擁壁工等をつくった後に、下流側から盛土の造成を始めるという施工手順が、令和2年6月の保安林解除森林審議会において報告されていますが、実際は、下流部の施工が行われないうちに造成が始まっている可能性があるということです。

 放置すれば、大雨の際に盛土崩落等の大きな災害の危険性があることからも、8月26日に、3名の地元の村会議員の皆さんがJR東海に質問書を提出しています。なお、いまだに返答はないということです。

 私自身、昨年9月になりますが、工事が始まっているこの本山残土処分場を見ましたが、その規模の大きさと谷の深さが強く印象に残りました。この工事は、県が保安林解除について関与しているため、盛土工事の施工について、調査等に積極的に関わるべきと考えますが、いかがでしょうか。

【斎藤建設部リニア整備推進局長】

 リニア中央新幹線工事に関し、御質問をいただきました。

 まず、豊丘村本山における発生土置き場の工事への県の関与についてのお尋ねでございます。

 本山の発生土置き場については、県では、事業者であるJR東海から提出された、保安林解除申請書の内容を確認した上で、国へ進達し、国が保安林の解除を行っております。盛土工事は、事業者において責任をもって行うこととなりますが、本山につきましては、事業者であるJR東海立会いの下、県南信州地域振興局とリニア整備推進事務所が連携し、現地確認により工事状況を把握しております。

 今後も工事の進捗を踏まえ確認を行ってまいります。

【山口典久議員】

 豊丘村神稲(くましろ)のリニア中央新幹線伊那山地トンネル、戸中・壬生沢工区で9月8日発生した労災事故について伺います。

 報道では午前0時過ぎに事故が発生し、県や豊丘村には午前7時40分頃、JRから一報が入ったとのことです。ところが、JR東海広報部は、マスコミの問合わせにも事故を認めず、午後3時の金子社長の記者会見後に初めて事実を認めたとのことです。事故から半日以上たってのことです。

 今年3月に国土交通省は、労災事故の発表の在り方を検討するようJR側に指示し、長野県も対応をただしてきたと思いますが、長野県は具体的にどのような対応を行ってきたのでしょうか。

 リニア整備推進局長に伺います。

【斎藤建設部リニア整備推進局長】

 JR東海の労働災害の公表に係る県の対応についてのお尋ねでございます。

 県としましては、今年の3月に伊那山地トンネル坂島工区で2度目となる労働災害が発生し、再発防止の報告を受けるに当たり、地域の関心の高い情報として積極的に公表していくよう要請しました。JR東海では、労働災害の公表は内容を考慮し判断するとの方針としていますが、その後続いて発生した同工区での3回目の発生時、また今月発生した戸中・壬生沢工区での発生時にも、県では積極的な公表を要請しております。

 また、議員お尋ねの今月の労働災害発生時のJR東海の報道対応の経過についても、現在確認しているところでございます。

 以上でございます。

【山口典久議員】

 戸中・壬生沢工区は、昨年11月に岩盤が崩落。坂島工区でも昨年11月に岩盤崩落。今年3月にはコンクリート吹付機の配管が外れ、4月にも労災事故が発生をしています。そのたびに安全対策がされたとして工事が再開されてきましたが、事故は相次ぐばかりです。このような事態は、安全対策や地元の信頼が軽視されていると言わざるを得ません。

 早期開業ありきのJRの姿勢を抜本的にただす必要があると考えますが、JR東海の事故に対する安全対策、情報開示について、阿部知事の見解を伺います。

【阿部知事】

 リニア中央新幹線に関連してJR東海労災事故の安全対策、情報開示についての御質問でございます。

 県内のリニア中央新幹線工事での労働災害は、トンネル工事特有の掘削面の肌落ちによるものが1件、その他は様々な作業工程の中で、一般的な工事でも発生し得る不注意が原因のものというふうに承知をしております。

 県としては、発生した労働災害に対し、原因の究明と再発防止の徹底、他の工区も含めた再発防止を要請し、JR東海においては、全工区で原因と再発防止策を共有する協議会の設置や、作業手順書の見直しなど、安全対策を強化してきているところであります。

 JR東海と工事の施工会社には、安全教育による安全意識の向上や安全管理の徹底など、より一層労働災害の防止に努めていただきたいというふうに考えております。また、積極的な情報公開、あるいは地域への丁寧な説明、地元の市町村や地域の皆様との信頼関係を築いていく上では、最も基本なことだというふうに思っております。

 そうした観点で、JR東海には、事業主体として積極的な情報開示に努めていただくよう、県としても引き続き要請してまいりたいと考えています。

 以上です。

【山口典久議員】

 斎藤リニア推進局長からは、本山の施工工事に関しては状況を把握しているというお答えだったと思うのです。

 そこで再質問をさせていただきます。

 状況を把握していただいた結果、特に問題はなかったということでしょうか。そして、もし問題がなかったのであれば、その旨を不安を持っている地元住民の皆さんにも報告していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。リニア推進局長に伺います。

 リニア中央新幹線は、その必要が問われる情勢の変化が今起きています。気候危機の下で、既存の新幹線の4倍もの電力を消費すると言われています。新型コロナ感染症の拡大により、テレワーク等の普及で、住まい方、働き方にも変化が現れ、ゆとりを持った社会への転換の流れが広がっています。高速鉄道を使った出張等のニーズも減ってきています。スーパー・メガリージョンと言われますが、巨大都市圏にヒト、モノ、カネ、情報を移動・集中する構想は、今、地方の過疎、衰退を加速させるもので、既に破綻していると言わざるを得ません。

 JR東海に対して、この情勢の変化を踏まえ、一旦立ち止まって事業の必要性を検証することを引き続き求めていくことを申し述べて、質問を終わります。

【斎藤建設部リニア整備推進局長】

 本山の状況につきましての再質問がありましたのでお答えさせていただきます。

 今回の本山の事業につきまして、JR東海に県のほうからも確認をしておるところでございますが、下部工事に必要な搬入路を上部から入れる必要があると。その部分のアクセス道路からの搬入路の工事、こういったものが必要だったということをお聞きはしております。ただ、こういった説明は、実際には質問書が出ておりますので、村を経由していただいてる質問書がございます。JR東海には、この点も含めまして、しっかり住民の皆さんに説明していくということを改めて要請してまいりたいと思います。

 以上でございます。

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