日本共産党長野県会議員団

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議会質問

2023年6月定例会 藤岡義英議員一般質問

  1. 子どもの医療費助成制度について
  2. 教育費の保護者負担の軽減について
  3. 米軍機による低空飛行について

子どもの医療費助成制度について

【藤岡義英議員】

 日本共産党県議団の藤岡義英です。質問を始めます。

 最初に、子供の医療費助成制度について質問いたします。

 長野県は、2022年4月に通院に対する医療費助成が就学前から小学校3年生に引き上げられました。そのことにより県内の多くの市町村で子供の医療費助成制度が拡充され、5月1日時点で、県内では19の市町村が高校卒業まで自己負担金なしの完全無料化になっています。県の果たす役割が決定的であることは明らかです。

 県議会でも国に対し、「子ども・障がい者の医療費助成制度の創設を求める意見書」が22年10月に全会一致で採択されました。国、県、市町村が連携して子育て支援を強めてほしいとの世論が高まっています。

 そこで、市町村の制度拡充をさらに進めるため、県は、子供の医療費助成をさらに引き上げるべきではないでしょうか。健康福祉部長にお聞きいたします。

【福田健康福祉部長】

 子供の医療費助成制度につきまして私には御質問を頂戴しております。

 まず、子供の医療費助成の対象の引上げについてでございます。

 子供の医療費助成の対象範囲につきましては、現時点で18歳の高校卒業までとする市町村が74、中学卒業までとしているところが3市となっております。

 県といたしましても、少子化対策の観点から、子育て世帯の経済的負担の軽減に努めてまいりました。市町村に対する支援といたしまして、入院については中学卒業までを県費負担の対象とし、通院については従来未就学児としていた対象を、昨年4月から小学3年生までに拡大をしたところでございます。

 これをさらに、例えば18歳の高校卒業までに拡大する場合には、新たに多額の県費の追加負担が見込まれ、県財政への影響が大きいほか、県の支援がそのままでは市町村事業の単なる財源振替となり、県民サービスの直接の向上につながらないおそれがあるなどの課題もあるため、慎重な検討が必要になると考えております。

【藤岡義英議員】

 自己負担金500円の負担が重いとの声も多く聞かれます。この自己負担金を全県で撤廃するため、県が負担に踏み切るべきではないでしょうか。健康福祉部長にお聞きいたします。

【福田健康福祉部長】

 自己負担金を全県で撤廃すべきではないかという御質問でございます。子供医療費を含む福祉医療制度につきましては、将来にわたって県民の医療福祉を支えるため、持続可能な制度であることが大変重要であり、受給者の皆様にも、共に制度を支え合う一員としての負担をお願いしているものでございます。

 受給者負担金を見直した場合は、先ほど助成対象の引上げについての御質問に対しても申し上げたとおり、相当程度の県の財政負担の増加が見込まれることに加えまして、医療機関への受診行動に影響を及ぼす可能性もあり、その点について慎重に見極める必要があると考えております。

【藤岡義英議員】

 自己負担金ですが、子供1人が受診すると500円、薬局で500円で合計1,000円。子供が3人だど掛ける3で3,000円。複数の科にかかるとさらに掛ける2で6,000円。歯医者にもとなると、さらに増えて9,000円と、子供が多いほど大変なんですね。子育て支援に逆行する制度です。

 貧困家庭では受診をためらうとの声もあります。それを裏づけるような結果が出ているのが、県民文化部が行った「子ども(と)子育て家庭の生活実態調査」です。コロナ禍で過去1年間にお子さんを医療機関で受診させたほうがいいと思ったが実際には受診させなかったことがあったと答えた方は、困窮家庭で、なんと23.8%、4人に1人であります。周辺家庭では14. 5%。その理由について、医療機関で自己負担金を支払うことができないと思ったことを理由とする人が、困窮家庭で3.6%、周辺家庭で1.7%いるという調査結果です。この結果をどう分析されていますか。健康福祉部長にお聞きいたします。

【福田健康福祉部長】

 自己負担金を支払えないことを理由に受診させなかったことがあったという回答についてどのように分析しているかという御質問でございます。

 御指摘の調査は、今後の子供子育て支援、次世代育成支援施策の参考とするため、令和4年6月から7月にかけて県民文化部が実施したものでございまして、無作為抽出した県内1万2,000世帯の子供本人とその保護者を対象に郵送調査を行ったものでございます。

 この調査におきましては、過去1年間に子供を医療機関で受診させたほうがよいと思ったが実際には受診させなかったことがあったと回答した保護者の割合は12.0%で、5年前の平成29年の前回調査から3.8ポイント減少いたしました。

 また、そのような回答した保護者のうち、医療機関で自己負担金を支払うことができないと思ったためと回答した割合は全体で0.8%でございまして、前回調査から4.1ポイント減少をいたしました。県では、この間、平成30年の8月に子供医療費の現物給付方式を導入しております。窓口負担が従前より抑えられるようになったことも、減少につながった要因の一つではないかと考えております。

 以上でございます。

【藤岡義英議員】

 公平と言う前に、それが原因で医療抑制が困窮家庭で起こっているということ認識していただきたいと思います。もう少し調査・分析を深めていただきたいと思います。

 これまで、県は市町村と2017年に立ち上げた県福祉医療給付事業検討会において、自己負担金について、医療サービスコストについて、受給者本人に医療費の一部を負担してもらうことにより、受益と負担の関係を明確にすること、また、共に制度を支え合う一員であることを自覚してもらうために、実施主体である市町村がそれぞれ設けていくとしてきましたが、6年以上経過し、子育て支援に対する重要性も変わってきています。

 国でも、自治体が小学生以上を対象に無料化などを実施した場合に補助金を減額するペナルティ措置を廃止する方針を打ち出しました。県として福祉医療費給付事業検討会を開き、市町村と話し合い、通院の助成を中学校卒業まで拡充すること、自己負担を廃止し完全無料の現物給付とすることに踏み切るべきではないでしょうか。知事にお聞きいたします。

【阿部知事】

 子供医療費の助成制度について御質問いただきました。通院の助成を中学卒業まで拡充すること、それから自己負担を廃止し完全無料の現物給付にすることに踏み切るべきではないかという御質問であります。

 御質問にありましたとおり、少子化対策、あるいは子育て支援の充実というのが強く求められている状況でありますので、我々としても幅広く子育て支援策についてはその在り方を考えていかなければいけないというふうに思っています。

 まず、この子供医療費助成については、本来、もう全都道府県市町村で実施している地方単独施策になっていますので、そろそろ国がしっかり制度化して、何て言うか、対象年齢引上げ競争みたいな形にならないようにしていく必要があるというふうに思っています。そういう意味で、国に対しては、全国一律の制度を早期に作るように要望してきています。

 その一方で、国が動かなければ何もやらないのかということではあってはいけないというふうに思っています。この子供(医療費)助成制度は、まず御質問にあったように市町村との共同事業でやっています。基本的に県が市町村を補助するという形で実施していますので、やはり市町村の皆さんの考え方は非常に重要だというふうに思っています。

 それからこの制度は、本県の場合は、都道府県によってだいぶ制度の在り方が違っていますけれども、所得制限なしという制度でありますので、どちらかと言うと低所得の方を支援するという視点よりも、幅広く子育て世帯を支援するという観点が強くなっています。

 そういう意味で、これから子供子育て施策を充実するに当たって、今申し上げたこの子供医療費の性格を踏まえてどういうふうに検討していくのか、どう考えているのかということについては大きな論点だというふうに思っています。

 ただ一方で、お話あった中学まで自己負担をなくして広げていくということになりますと、まずこの自己負担をなくすということで、約3.5億円の県負担増になりますし、通院を中学校卒業まで拡充するという形になると約7億円、合わせると10億円程度の財源が必要になってくるということもあります。

 そういう意味で、子育て政策で求められている部分はたくさんあります。経済的負担の軽減であったり、あるいは支援をする、例えば保育の保育士配置の充実であったり、いろんな観点がありますので、そうした観点を幅広く検討する中で、どこに財源を重点的に配分していくことが最も今の時代に求められているのかということをしっかり考えていきたいというふうに思っています。

 以上です。

【藤岡義英議員】

 子供の医療費助成は、女性活躍にもつながるとの意見もいただいています。女性はおおよそ6年生から中学2年生くらいまでに初潮を迎える。しかし産婦人科に受診するのに結構ハードルが高い。だから中学卒業まで無料だったらお金の心配なく受診できる。結構体調不良になったりと、生理が重いのが普通の子も多いからとのことです。ぜひ、その視点も入れて検討していただきたいと思います。

 隣の群馬県は、18歳までの医療費無料化を10月から実施するそうであります。自己負担金なし、所得制限なし、窓口支払いなしでの画期的な実施です。ぜひ、子育て支援の市町村との共同作業として位置づけ、拡充していただくことを要望し、次の質問に移ります。

2.教育費の保護者負担の軽減について

【藤岡義英議員】

 続いて、教育費の保護者負担の軽減について質問いたします。

 2月定例会の毛利栄子県議団長の学校徴収金以外のいわゆる隠れ教育費について、教育長は、既にあるものを活用するなど、購入については各家庭の判断に委ねており、その経過を調査・把握することは、家庭事情にまで踏み入ることになるため難しいと回答していますが、確実に学校で使うものを学校があっせんしているのであり、毎月引き落とされる徴収金も苦しく、実際に困っているとの保護者の声に対し、あまりにも無責任だと感じます。まず、現状把握の調査をすべきではありませんか。教育長にお聞きいたします。

【内堀教育長】

 教育費の保護者負担の軽減につきまして御質問頂戴いたしました。

 まず、いわゆる隠れ教育費の現状把握についてでございます。

 学校徴収金以外の学校のあっせんにより購入する物品費につきましては、令和5年2月定例会で毛利議員にお答えいたしましたとおり、既にあるものを活用するなど、購入の判断を各家庭に委ねており、県教育委員会として、実際に購入したか調査・把握することは家庭事情にまで踏み入ることになるため、難しいと考えております。

【藤岡義英議員】

 既にあるものと言っても大抵は購入しなくてはならないものが多く、兄弟関係のものも汚れていたり、欠けていれば購入しなくてはいけません。水着だとか運動着、給食着、上履きもサイズが変わっていくので再度購入したりしています。学校で使うものを用意するようにとしているのだから、それがなくては授業にならないものは教育費です。

 憲法で義務教育は無償としています。必要な教材は全て学校が用意し、無償で提供すべきです。小中学校の実施主体は市町村ですが、保護者に対して負担は様々であり、その状況を市町村と共有し、保護者の負担の軽減のために取組を行うべきではないですか。教育長にお聞きいたします。

【内堀教育長】

 隠れ教育費に関する市町村の状況の把握と、保護者負担軽減の取組についてのお尋ねでございます。議員御指摘のように、様々な理由で教育費の負担に苦慮されている御家庭があることは承知しており、県教育委員会としては、学校教育活動に関する費用について公費で負担すべきものと個人に負担を求めるものとの区分を明確にした上で、可能な限り保護者負担の軽減を図ることが必要であるというふうに考えております。

 そのため、各市町村教育委員会に対し、県教育委員会の学校徴収金に関する基本的な考え方をお示しし、同一市町村内の学校間で保護者負担に著しい差が生じないようにすることや、学用品等の再利用や有効活用を一層推進することなどにより、保護者負担軽減の取組を進めていただくよう要請しております。

 また、県教育委員会が毎年実施している学校納入金等調査の結果を提供し、各市町村の状況を把握するとともに、校長会において、鍵盤ハーモニカや画板を共有で使用する等の事例を紹介しているところでございます。

 今後これらの取組を推進し、市町村教育委員会と連携しながら保護者負担の軽減に取り組んでまいります。

 以上でございます。

【藤岡義英議員】

 シングルマザーの方の話を紹介いたします。中学入学と高校入学が重なったので大変だった。4月までに50万円を準備しないといけなかった。コロナの幾つかの支援金のお陰で何とか乗り越えた。子供たち高校に行くのも、定時制に行くように頼むか、私の仕事量を増やすかどちらかだった。昼間の仕事で残業する。週末はスナックで、平日の夕方はバイト3時間のトリプルのときもあった。家庭事情だから踏み込みませんみたいな話は理解できない。ひとり親なので就学援助金をいただくんです。申込用紙を提出するときに、非課税であることを証明するために課税証明書も学校に出すんです。それを出している時点で家庭事情を分かっていますよね。いろんなところで踏み込んでくるのに、どうしてここでは踏み込めないのか。貧困家庭は体を壊すまで働けってことですか。学校で彫刻刀、習字セット、絵の具セットを生徒分購入してくれたらいい。名前をつけないで番号をつけて、次の使う学年に回せばいい。一括購入してまた足りなくなったら補充したらいい。そうしたらどの家庭も平等になりません? リユースするよりもったいなくない。提出するのが面倒くさい家は捨てちゃう。もったいない。学校のものは勝手に捨てられないじゃないですか。物を大事にする。無駄にならない。必要なものだけ新しくする。個人持ちにする必要はないと。また、物価高で生活がきついが、必要だから買わざるを得ない。逃げ場がないとの声もあります。

 このような家庭の声と県教委のギャップを強く感じました。実態把握と県独自の取組を強く求めまして、次の質問に移ります。

 高校のタブレットについて、公費端末の貸与だと使用を制限せざるを得なくなるとありますが、小中学校ではその対応でも何ら問題はありません。そもそも生徒が日常生活で自由に使えるようにするという理由で個人負担としていますが、それらは個人のスマホ等で十分足りるものであり、公費で貸与しない理由にはなりません。他の県では、令和4年の文部科学省の調査によりますと、24県が設置者負担で生徒に貸与しています。教育県にふさわしい対応として公費での貸与とすべきではないですか。教育長にお聞きいたします。

【内堀教育長】

 1人1台端末としてのスマホ利用と公費負担についてのお尋ねでございます。

 日々の学習や生活において、生徒の判断で必要とする教材の利用や動画視聴等を自由に行うためには、利用に関する制限のない端末が必要と考えております。また、愛着を持った個人所有の機器を自由に活用することで、生徒の興味関心や探究心の向上にもつながると考え、BYODがより望ましいと判断いたしました。

 また、スマホの利用については、画面が小さいことや、スライド等を作成する場合の細かい作業が難しく、また長期間動画を見続けたときの身体的負担が大きいといった難点があるため、操作性の高いタブレットなどの購入を勧めているところでございます。

 ただし、奨学給付金受給世帯や、家計急変世帯等低所得世帯等の家庭には、端末を貸与することも行っております。

 県教育委員会では、今後も学校徴収金等の見直しを通して、各家庭の負担軽減に努め、BYODを進めてまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

【藤岡義英議員】

 タブレットについての保護者の声を紹介します。

 動画編集、カスタマイズ、そんなことをする暇があったら親としてはテスト勉強してほしい。そうしたことを学びたい人は専門に学べる学校に行って学べばいい。全ての高校生に当てはめようとするのは無理な話。スマホも学校の授業で使う。課題や様々な連絡などで活用されるスマホは、ないと高校生活ができない。スマホとタブレットの二重持ち、この負担が重過ぎるとのことです。やはり公費で貸与すべきですと要望し、次に進みます。

 高校3年で学習した内容について、高校の卒業と同時にこのタブレットにアクセスできなくなり、振り返って見直したくてもできないという声があります。こうした問題についてどう対応されますか、教育長にお聞きいたします。

【内堀教育長】

 御質問を頂戴いたしました学習した内容を卒業後見直すことができないことへの対応についてのお尋ねでございます。

 県立高校におきましては、生徒が個別のデータをインターネット上に保存できるよう、県教育委員会が在学中のみ使用できるアカウントを付与しており、卒業と同時に削除することが必須となっているため、卒業後のアクセスができなくなります。各校へは事前にマニュアルを送付し、アカウントが卒業後に削除されることや、必要なデータをそれまでに移行することを生徒に伝えるようお願いしているところでございます。

 しかしながら、インターネット上に保存した成果物等を卒業後に見直すことができなくなるといった声も幾つか届いておりますので、今回の御指摘を踏まえ、改めて各校への周知を徹底してまいります。

【藤岡義英議員】

 ある高校ではWi-Fiの電波が弱すぎて、授業で必要なアプリ等をダウンロードする際に、自分の通信回線を使わなければならないことがあるという話を聞きました。各生徒の通信回線は、それぞれが購入したものであり問題です。県内の高等学校のWi-Fi環境が適正に機能しているかどうか、総点検すべきではないでしょうか。教育長にお聞きいたします。

【内堀教育長】

 Wi-Fi環境の改善についてでございます。

 県立高校におけるWi-Fi環境につきましては、通常の学習活動の範囲内であれば安定した通信状況を保つことができると認識しております。

 しかしながら、同一箇所で大勢の生徒が一斉に動画を閲覧する等の場合、通信速度が遅くなることもあるため、このことについて配慮をするよう各校へお願いしているところでございます。

 また、Wi-Fiのアクセスポイントの故障など通信設備に不具合が生じ、学習に支障を来す際には、GIGAスクール運営支援センターが点検・調整などを行うとともに、その対応について県教育委員会と共有することで各校の通信状況を常に把握できるようにしております。

 各校には相談先としてGIGAスクール運営支援センターがあることや、問合わせに対応できる体制を整えていることを改めて周知徹底し、ICTを効果的に活用できる学習環境の整備に努めてまいります。

 以上でございます。

【藤岡義英議員】

 ぜひ、その対応を周知徹底のほうをお願いしたいと思います。

 保護者の声を紹介します。

 高校のタブレットの使用頻度ですが、ある高校です。テストでレポート提出するときに使用する程度。1か月から2か月に1回だけ。通常の授業では、教科によって動画を見たり検索したりすることがありますが、タブレットだとWi-Fi接続ができなければ見られないため、自分のスマホを使用せざるを得ません。また、授業で一斉に動画を見ようとすれば、やはり学校のWi-Fiでは弱く遅過ぎるため、自分の通信回線を使わないといけません。

 一方、スマホは間違いなく必要不可欠です。コロナ禍では毎朝体温チェックの回答がオクレンジャーで送られてきましたし、タブレットはほぼ、娘と同様に家に置きっ放しの生徒が大半のようですとのことでした。スマホとタブレット、二重持ちの負担は重い。やはりタブレットは貸与を求めて次の質問に移りたいと思います。

3.米軍機による低空飛行について

【藤岡義英議員】

 米軍機による低空飛行問題について質問いたします。

 2019年5月30日に米軍輸送機2機がごう音で超低空飛行したことが多くの県民に目撃されたことをきっかけに、大問題となりました。当時動画を撮影した目撃者から提供を受け、私たちは測量調査を行い、日米合意で定められた最低安全高度を下回る約230 mの高度で飛行していたことを明らかにしました。当時、メディアでも大きく報道されました。

 その後、県は、この問題で同年10月1日に県市長会、県町村会と共同で防衛省、外務省に要請されています。その要請された内容はどのようなものか。危機管理部長にまずお聞きいたします。

【前沢危機管理監兼危機管理部長】

 2019年10月に要請を行ったその中身についてのお問い合わせでございます。

 要請は、知事、市長会、町村会長の連名によりまして、外務大臣及び防衛大臣に行ったところでございまして、その内容は3点ございました。

 一つには、米軍機の訓練ルートや訓練を行う時期について、必ず速やかな事前情報提供を行って、関係自治体や地域住民の不安を払拭した上で実施するよう十分な配慮を行うこと。二つ目、在日米軍に対しまして、米軍機は、県内上空を飛行する際には、飛行高度や区域等に関する日米合同委員会合意事項を遵守し、消防防災ヘリやドクターヘリ等の安全な運行に影響を与えない。県内の市街地やスキー場等観光地の上空の飛行を避ける。県民や観光客に不安や恐怖を抱かせるような飛行は厳に慎むといったことを強く求める。それから3点目、日米地位協定を見直し、航空法などの国内法を原則として米軍にも適用させるという中身でございました。

 以上でございます。

【藤岡義英議員】

 県民にとって大事な要請の内容だと思いました。2019年の申入れから3年以上経過していますが、いまだに米軍機の低空飛行が強行され続けています。県は申入れ後、どのような対応を取っているでしょうか。危機管理部長にお聞きします。

【前沢危機管理監兼危機管理部長】

 お尋ねをいただきました。

 まず、2019年の要請からその後県の対応はいかにということでございます。

 私ども県では、県民から航空機等の騒音や低空飛行に関する情報が多数寄せられて、県民の安全安心が脅かされる際には、適宜、北関東防衛局へ要請を行ってまいりました。

 具体的には、令和2年11月には関山演習場、それから相馬原演習場等における日米共同訓練について、訓練に関する事項について早期に事前の情報提供を行うよう要請をしたところでございますし、令和4年5月11日には、やはり北関東防衛局を訪れまして、米軍機の訓練ルートや訓練が行われる時期について、必ず速やかな事前情報提供を行うこと。それから関係自治体や地域住民の不安を払拭した上で実施するよう十分な配慮を行うことなどを要請したところでございます。

【藤岡義英議員】

 2023年に入っても事態は改善されていません。今年に入り、私たちが確認しているだけで4回目撃情報が寄せられています。3月15日、20日は佐久市内で、4月5日はちょうど県議会議員選挙中でしたが、立科町で私が街頭宣伝中に目撃しました。5月4日の日は、佐久バルーンフェスティバルが開催されている会場上空で目撃されています。ちなみに昨年も目撃されています。2年連続です。その時間にたまたま気球がその高度で飛行していなかったため、大事には至りませんでしたが、明らかに、県の要請の内容に反する軍事訓練が強行されています。

 この4日間の飛行物体は何だったのか。どこの軍用機なのか。危機管理部長にお聞きいたします。

【前沢危機管理監兼危機管理部長】

 本年3月、4月、5月にかけての飛行の実態でございますけれども、県では県民から航空機等の騒音や低空飛行に関する情報が寄せられた場合には、幾つか項目がございまして、目撃日時、目撃の場所、機体数、騒音の程度など可能な範囲でお聞きしまして、その都度速やかに自衛隊の長野地方協力本部や北関東防衛局に照会しまして、回答内容を関係市町村や問合せのあった方へ適宜情報を提供しているところでございます。

 このうち3月20日、5月4日につきましては、県に目的情報が寄せられたものですから問合わせをいたしまして、長野地方協力本部からは自衛隊機ではないという回答があり、北関東防衛局からは米軍機であるかどうか明確な回答はありませんでした。3月15日、4月5日については、その時期には、県民から私どもには目撃情報がなかったものですから、照会は行っていないものでございます。

 以上です。

【藤岡義英議員】

 いまだにこの4日間飛行した目撃された飛行物体は、どこの国の軍用機が分からないということであります。ちなみにこの4日間の飛行物体について、北関東防衛局から事前の連絡はなかったのではないですか。確認ですが、危機管理部長にお聞きいたします。

【前沢危機管理監兼危機管理部長】

 お答えいたします。ただいまの4日間の飛行については、米軍機の飛行があったかどうかというのは定かではありませんけれども、事前の連絡というものはございませんでした。

 以上でございます。

【藤岡義英議員】

 事前の連絡がなかったと、どこの国の軍用機か分からないと。異常な状況だと思いますね。県の要請が、私、全く受け止められていないという状況だと思います。

 同じくアメリカと軍事同盟を結んでいるドイツ、イタリア、ベルギー、イギリスでは、条約に米軍の訓練、演習の関与について、自国側の調整、承認、低空飛行は禁止などの規定がしっかり明記されています。アメリカ本国ではどうでしょうか。アメリカ国内では、低空飛行訓練は市街地上空では禁止、海外でも野生生物、野生動物の保護の観点から、人がいないところでも低空飛行訓練は禁止されています。アメリカ政府は、米軍に対し、国内外の米国民の人権と環境と野生生物を保護するように厳しく規制しています。

 しかし、そこには日本国民は含まれていないようです。改善を求める動きを強めなければならないと感じています。

 横田基地が隣接する福生市などでは、北関東防衛局がメールや電話などで米軍の訓練・演習が予定される際に事前連絡があるとのことです。同様に、長野県内の該当自治体にも事前にメールを送信するよう要請すべきです。いかがでしょうか。危機管理部長にお聞きします。

【前沢危機管理監兼危機管理部長】

 お答え申し上げます。

 まず、事前のメールの連絡ということでございますけれども、福生市によりますと、大きな演習等が行われる場合には、横田基地の周辺市町連絡協議会という団体がありまして、その自治体に対してメール等で情報提供されているものと伺っております。

 本県については、先ほど申し上げた令和4年5月に本県から要請をいたしましたけれども、その要請を受けて、同じ5月26日に北関東防衛局から回答がありまして、今後大きな演習等で米軍機の訓練飛行がある場合には、北関東防衛局のホームページで訓練等について事前情報の提供を行うというもので、現在もそのページで情報提供がなされているものと承知しております。

 加えまして、令和4年9月に予定されていた訓練の際には、本県に対して、メールにより訓練情報のホームページ掲載について事前情報提供が行われたところでございまして、少し前進をしたというふうに認識をしております。引き続き、北関東防衛局に対しては速やかな事前の情報提供を行うように依頼をしてまいりたいというふうに思っております。

【藤岡義英議員】

 これからの質問は、令和元年9月定例会において、山口典久県議が質問された内容を再度取り上げるものとなります。今回は、明らかに日米合意を逸脱するような危険な超低空飛行訓練が仮に目撃された場合と限定して質問いたします。県として、画像や動画も含めて、さらに広く情報の提供を、住民や市町村に呼びかけるべきではないですか。また、そうした情報を基に、高度や飛行ルートなどの分析を県として行うべきではないですか。危機管理部長にお聞きします。

【前沢危機管理監兼危機管理部長】

 低空飛行について県民に広く呼びかけて情報を募るべきではないかということでございますが、県では、先ほど申し上げましたように、目撃の日時、高度ですとか、騒音みたいなものについて、広く様式を定めまして住民から情報をいただくという取組を既に始めております。

 ただ撮影された画像などを基にして高度測定するための確立された調査方法私は、私どもとすればないというふうに承知しておりますので、それよりも大事なことは、やはりそういった飛行によって不安や恐怖を感じられた県民がいらっしゃる場合には、その不安をいかに払拭していくかということが大事だというふうに考えておりますので、今後もそういった、県民、それから私ども観光県でございますので、観光客の皆様にも不安や恐怖を抱かせるようなことがあった場合は、これはもうちゅうちょせずに、国への要請等をきちんとこれからも行ってまいりたいというふうに考えております。

 以上です。

【藤岡義英議員】

 北関東防衛局から少し事前通告の前進があったという答弁いただきました。さらに前進を促していただきたいと思います。

 1966年、133人が亡くなった全日空機の東京湾墜落事故について、調査の中で、事故機の目撃情報を基に、目撃場所からの仰角を測量器のトランシットで測量し、三角法を用いて高度を計算したという話が柳田邦男さんの書かれた『マッハの恐怖』という本に紹介されています。三角法は測量などで使われる歴史的に確立された計算方法です。限られた目撃情報を基に飛行物体の仰角と水平距離を確定させれば、高度を割り出すことができます。県民の安心安全を確保するために調査・分析することは、危険な飛行訓練をやめさせるために必要なものと考えます。重ねて検討を求めて、次に進みます。

 政府に要請しても事態が全く改善されていません。2015年の6月議会でも紹介しましたが、1988年に南信地域で問題になった米軍機による超低空飛行訓練について、県の池田東京事務所長が、神奈川県横須賀市の在日米軍海軍司令部と外務省に訪問。米軍機の低空飛行訓練を中止するよう、知事名の文書で申し入れています。さらに現地調査、騒音測定に乗り出しています。当時の県議会でも、米国軍用機の低空飛行訓練に関する意見書を全会一致で採択させています。

 このように当時、吉村午良知事も先頭に立たれておられました。いよいよ知事自ら、在日米軍に対して直接要請を行うべきだと考えますが、いかがでしょうか。知事の御決断をお聞きいたします。

【阿部知事】

 米軍機の飛行について知事の御決断をという御質問でありますが、非常に何か切迫感があるかのような御質問でありますけれども、先ほど危機管理部長からも答弁申し上げておりますように、我々も飛行機の飛行の状況等、県民目線から情報をいただくような形にさせていただいておりますけれども、近年何か非常に不安をかきたてるような飛行が頻発しているというような状況では、必ずしもないというふうに認識をしています。

 ただ一方で、我々長野県としては、皆様の安全安心な暮らしをしっかり守っていくということは、これは重要な責任だというふうに思います。質問でも引用いただきましたように、令和元年のときには防衛大臣、外務大臣宛に要請をさせていただきました。また令和4年の段階では、北関東防衛局に私どものほうからお願いをして全く改善されていないというお話がありましたが、先ほど部長からも答弁したように、大規模な演習等が行われる際には事前に情報提供されるという形になってきているわけですので、何も進んでないということでありません。

 先ほど来私どものほうからの要請内容も冒頭答弁させていただいておりますけれども、やはり日米地位協定も含めた見直しということも要望させていただいています。引き続き、県民の皆様方の安心・安全な暮らしを守るという観点でしっかり立脚をさせていただいて、ケース・バイ・ケースでありますけれども、どこに、誰に対して、どういうような要請をすべきなのかということについては、その状況をしっかり踏まえて判断していきたいと考えております。

 以上です。

【藤岡義英議員】

 何も起こらないことが一番大事なのでありますが、何かあってからでは遅い、このように感じています。

 私が問題にしているのは、バルーンフェスティバルに2年連続米軍機が飛行したと。去年は2機だったと、今年は3機飛行したと。その飛行時間はたまたま気球が飛んでいなかったからよかったのですが、気球と同じ高度800mから1,000mで飛行していたと。私は大変重要だなと感じています。危機感を私は覚えています。ですので、何がないことを私は本当に祈っておりますが、その前に手を打っていただきたいなと、このように感じております。

 当時吉村午良知事は会見で、いくら安保条約があるといっても住民生活に影響を与える飛行は即中止してもらいたい。中略しまして、続くようならさらに強く中止を要請すると述べられたそうであります。2019年7月26日の阿部知事の会見で記者から、在日米軍に対して直接的な行動を取らないのか、意見を申し述べないのかとの質問に対し、知事は必要があれば対応も考えると答えられています。

 この会見からもうすぐ4年が経過します。ぜひ近い将来、阿部知事自ら直接行動を取っていただくことを期待申し上げ、質問を終わります。

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