日本共産党長野県会議員団

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議会質問

2023年6月定例会 山口典久議員一般質問

  1. 学校給食費無償化について
  2. いじめ体罰等から子どもの人権を守るために
  3. 農産物の災害対策について
  4. マイナンバーカードについて

学校給食費無償化について

【山口典久議員】

 日本共産党県議団、山口典久です。

 初めに、学校給食費の無償化について質問いたします。

 しあわせ信州創造プラン3.0では、長野県を取り巻く状況として、真っ先に少子化と人口減少の急速な進行を挙げています。本県の出生数は、2007年以降減少傾向が続き、2021年は1万2,514人と過去最少を更新しており、少子化に歯止めがかかっておりません。

 こうした中で、将来の長野県の各産業の担い手の不足、利用者減少による地域公共交通網の維持困難、社会保障制度の持続可能性低下など、深刻な事態が懸念されています。新たな出生数目標1万3,400人、2027年は、並大抵のことではないと思われます。

 少子化問題に関して、長野県民の結婚、出産・子育てに関する意識調査では、理想の子供数を持てない理由として、経済負担、子育てや教育にお金がかかり過ぎるからと55.5%が回答をしています。

 私は、学校給食費の無償化は、子育て世代の強い要求に応え、少子化問題を解決する重要な施策として、以下質問いたします。

 この間、コロナの影響による保護者の収入の減少、物価、特に食材の高騰などが深刻になる中で、各地で給食費無償化の取組が広がっています。現在、全国、そして本県において無償化の実施状況はどうでしょうか。

 無償化の効果について伺います。2018年7月の文科省学校給食の無償化等の実施状況では、その効果について、児童生徒は、栄養バランスの良い食事の摂取や、残食を減らす意識の向上、また保護者は、経済的負担の軽減、安心して子育てできる環境の享受、または親子で食について話し合う機会の増加、教育への関心の増加など報告しています。

 昨年2月の県議会で、私の一般質問に対し教育長は、子育て支援が図られ、それを通じて、移住を希望する子育て世帯へのPRにもなっている。また、地産地消にも資している等の答弁がありました。この学校給食費無償化の効果について、この間の取組を踏まえ見解を伺います。

【内堀教育長】

 私に御質問を頂戴いたしました。

 まず、学校給食費の無償化等の実施状況とその効果についてのお尋ねでございます。

 全国の学校給食費の無償化の状況は、平成30年度に文部科学省が行った学校給食費の無償化等の実施状況等の調査によりますと、全国1,740自治体中、小学校中学校とも無償化が76、小学校のみ無償化が4、中学校のみ無償化が2で、合計82自治体、全体の4.7%が平成29年度に無償化を実施しております。

 本県の学校給食費の無償化の状況は、県教育委員会が行った令和4年度、学校納入金等調査によりますと、小学校中学校とも無償化が10、小学校のみ無償化が3、中学校のみ無償化が1で合計14町村、全市町村の18. 2%が令和3年度に無償化を実施しております。

 学校給食費の無償化の効果につきましては、子育て支援の充実や少子化対策、定住・転入の促進等に一定の効果があるものと伺っております。

【山口典久議員】

 必要な予算について伺います。

 給食費の無償化について、この間、教育長の答弁は、学校給食法に基づき、小中学校の学校給食は、学校設置者である自治体が人件費や施設などの経費を負担し、保護者は食材費、いわゆる学校給食費を負担することになっており、給食費の無償化は、地域の状況などを把握している市町村において判断し、実施することが適当である。こう繰り返されてまいりました。

 しかし、県内においては財政規模の小さな自治体も多く、無償化は市町村が判断し実施するとしても、県が支援することで大きく前進するものと考えます。

 そこで、小中学校の学校給食費の半額を県が支援する場合、必要な予算について伺います。また、特別支援学校の給食費の無償化は県の判断において実施できるものと考えますが、その場合に必要な予算はどれほどでしょうか。以上、教育長に伺います。

【内堀教育長】

 小中学校の給食費を半額支援した場合に必要な予算についてでございます。

 県教育委員会が行った令和4年度の学校納入金等調査によりますと、令和3年度の学校給食費は、1人当たり年間で小学校が5万2,174円、中学校が5万9,762円となっており、この単価に児童生徒数を掛けて試算すると、約84億円となります。従って学校給食費の半額を支援する場合、約42億円の予算が必要と見込まれます。

 特別支援学校の給食費の無償化についてでございますが、現在給食を提供している県立特別支援学校の給食費を無償化するために必要な予算額を、実績に基づいて計算いたしますと、約2億2,000万円となります。

 以上でございます。

【山口典久議員】

 基本的人権、子供の権利に照らして、学校給食費無償化への知事の見解を伺います。

 2008年改正の学校給食法では、その目的に、学校給食を活用した食に関する指導を通じての食育の推進が加わりました。学校給食の役割、重みが増していることを受けての改正です。

 そもそも憲法は26条第1項で、教育を基本的人権の一つとし、第2項において、義務教育を無償とすることを明文化し、政府に命じています。この無償の範囲について、1951年3月19日の参議院文部委員会で、当時の辻田初等中等教育局長が、授業のほかに教科書と学用品、学校給食というような、できれば交通費も考えていると答弁しています。そしてこの趣旨は、現在も変わらないことを、柴山昌彦文科大臣が、2018年12月6日の参議院文部科学委員会で日本共産党吉良よし子議員に答弁しています。

 子供の学び、成長する権利を社会全体で保障する、基本的人権の保障に関わる制度は無償にすることにより、子供の権利が満たされ安心して過ごすことができるのではないでしょうか。長野県は、全国の先進として子供の未来を切り開いていただきたいと思いますが、学校給食費無償化に対する阿部知事の見解を伺います。

【阿部知事】

 私には学校給食無償化についての見解という御質問いただきました。

 まず憲法上の権利というか、憲法上どこまで無償化が定められているのかということをしっかり踏まえないと話がこんがらがってしまうと思いますが、仮に給食費が憲法上保障されているというふうになると、今、憲法違反になっているという話になってしまいますので、ちょっと確認してみたのですけれども、昭和39年の義務教育費の負担、「義務教育は、これを無償とする」という憲法26条2項の後段の解釈について争われた裁判の最高裁の大法廷の判決があります。

 これについては、教育提供に対する対価であると。国が義務教育を提供するにつき有償しないこと。換言すれば、保護者に対しその子女に普通教育を受けさせるにつきその対価を徴収しないことを定めたのが、憲法26条2項後段の「義務教育は、これを無償とする」というものであって、要は授業料を意味するというふうに判決が出ています。

 国会でのやり取りを見ても、例えば、平成30年の参議院の文教科学委員会におきまして、まさに山口議員から御質問があったように、かつて国会の答弁があるのを再確認されています。義務教育を教育として実施する場合に必要な経費は、これは公共のほうから出しまして、義務教育を受ける立場からはこれを無償とすることといたしたいというふうな理想を持っているわけでございますという、これは昭和26年の当時の政府委員からの答弁でありますけれども、要は理想という形になっています。

 そういう意味では、当時の平成30年の柴山大臣も答弁で明確におっしゃっていますけれども、「義務教育は、これを無償とする」という規定は、授業料の不徴収の意味というふうに解するのが相当という昭和39年の最高裁判所の判決に定まっておりますというふうに答弁されていますので、まず、憲法上の理解は、そこからスタートしなければいけないと思っています。

 だからといって教育費負担を軽減するべきじゃないというふうに私は思いませんけれども、まず憲法上の定まった解釈がそうなっているという状況であります。

 そうした中で、学校給食費について、これはここでも御答弁申し上げましたけれども、この少子化対策であったり、あるいは子育て支援についてはかなりいろいろ踏み込んだ検討を県としてもしていかなければいけないというふうに思っています。

 そういう意味で、この学校給食費のみに着目するのではなくて、いろいろな費用負担があります。保護者の皆さんとお話しして出てくるのは、例えば保育料が大変だと、あるいは対話集会の中でも高等教育を受けさせる経費が高くて大変だと、あるいはこの場でも御質問いただいていますけれども、子供の医療費についてもさらに拡大すべきじゃないかという御意見もあります。そうしたことを、やはり全体として見極めながら、限られた財源であります。限られた財源は、県民の皆様方の税負担で成り立っているわけでありますので、場合によってはもっと踏み込んだ措置をやるということになれば、これは県民の皆さんから税金を負担していただくということも考えなければいけないケースもあるかもしれません。

 ただ、これは未来への投資になりますので、例えば過度な借金をして、将来世代のための支援を借金でやるということはこれは難しいと思いますし、また今行っているものを過度に切り詰めて、本当に必要なことが実施できないようになってしまっても困るというふうに思います。

 そう意味では、私としては全体像をしっかり考える中で、この少子化対策であったり、あるいは子育て支援については考えていかなければいけないというふうに思っています。

 ただ一方で、もう山口議員も重々御承知だと思いますけれども、その教育に係る経費を支援する制度としては、例えば生活保護を受けている方は教育扶助があります。生活保護を受けてない方でも、低所得層の方には就学援助制度があります。こうした低所得支援をどこまで充実するのかということと、それから子育て支援としてどういうふうなことを考えていくのか、これもあまり混同せずに、重複するところもありますけれども、やはりしっかり考え方を整理して取り組んでいくということが必要ではないかというふうに思います。

 そう意味で、学校給食の無償化については、まず、この憲法上の要請ではないということは前提としながらも、幅広くこれからの子育て支援を考えていく中で、我々として保育料であったり、医療費であったり、教育費であったり、こうしたもの全体の在り方をしっかり検討していきたいというふうに考えております。

 以上です。

【山口典久議員】

 学校給食費無償化に必要な予算は、長野県の一般会計予算の0. 5%にも満ちません。理想を現実にするために、それは決して多額な金額、予算ではないと思われます。ぜひ踏み込んだ検討をお願いいたします。

いじめ体罰等から子どもの人権を守るために

【山口典久議員】

 次に、子供の人権侵害への対応について質問します。

 長野県は、2014年7月に「長野県の未来を担う子どもの支援に関する条例」を制定いたしました。そしてこの条例に基づいて、子ども支援センターが設置され、子供が抱えるいじめ、体罰等の悩みのほか、保護者が抱える育児や子育ての悩みなど、様々な相談に応じてきました。さらに、子どもの支援委員会が設置され、いじめや体罰といった、子供の人権侵害に関し、解決が難しい案件について人権救済の申し出を受けて調査・審議が行われます。

 この長野県子どもの支援委員会は、今年3月、二つの事案で教育委員会に勧告を行いました。午前中の質問でも取り上げられておりますが、1件は、小学校においていじめ被害を受け、長期不登校になった事案です。委員会の調査結果は、いじめはいわゆる重大事態に該当するにもかかわらず、公平性、中立性が確保された調査組織を設けず、適切な対応がされなかったと指摘しています。そして当該小学校及び市町村教育委員会に対し、適切な対応の徹底、再度資料を精査し、再評価を行うよう求めること等を勧告しています。

 もう1件は、中学校における教員からの体罰です。子供の人権を乱暴に踏みにじる重大な体罰でした。

子ども支援委員会の調査結果は、正確な事実関係の把握など適切な調査が実施されなかったこと、実態として、加害当事者の主張に沿った形で加害の事実が認定されたとしています。そして県教育委員会に対し、再調査、再評価と認定、心身の苦痛への十分なケアを行うよう、当該中学校及び市町村教育委員会に求めること等を勧告しております。

 勧告があったこの二つの事案は、いずれも相談や訴えから勧告に至るまで、数年間経過をしています。この間、当事者や保護者は転居を余儀なくされたり、心的外傷後ストレス障害、PTSDに苦しみ続けました。そして、もっと早急な対応、積極的な活動を求めておられます。

 また、センターや委員会において、申立人に非があるかのような対応等、納得できないこともあると聞いています。様々な相談に適切に応じ、人権侵害から救済する役割を本当に果たすために子ども支援センターの相談体制や子ども支援委員会の調査、審議体制の見直しが必要と考えますが、いかがでしょうか。

【高橋県民文化部こども若者局長】

 私に御質問いただきました。

 まず、子ども支援センターと子ども支援委員会の体制の見直しについてのお尋ねでございます。

 子ども支援センターでは、現在、教育や児童福祉分野の相談経験がある3名の相談員が、電話やメール等による子供や保護者からの相談に対応しているところであります。平成27年度のセンター開設以来、年によって多少の変動はありますが、毎年度平均800件程度の相談を受け付けております。

 午前中の寺沢議員の御質問に対する知事答弁にもございましたが、子供たちの悩みに幅広く対応するため、相談窓口の周知にさらに努めてまいります。今後の体制につきましては、相談数や相談内容など、今後の相談状況も踏まえて検討する必要があると考えております。

 また、子ども支援委員会は、法律、福祉、医療等の専門家5名の委員で構成をされており、子供の人権救済に関する申し出事案について調査・審議を行うほか、子ども支援センターに寄せられた相談について相談員が相談者に寄り添い、的確な対応ができるよう個々の事案について協議を行っております。

 今回初めて勧告を行いました実績も踏まえまして、次の申出事案の調査・審議に当たりましては、条例において認められている特別委員の活用など、より効果的、効率的に調査・審議を行う方策について、子ども支援委員会と検討を行ってまいりたいというふうに考えております。

【山口典久議員】

 子供の権利に関係して伺います。

 県のこども支援条例が制定され、国ではこども基本法が成立し、本年4月から施行されました。こうした中で子供の最善の利益を保障するために、現場において一層の取組が必要と考えるものです。こども支援法では、子供関連施策に対する子供の意見を反映させるために必要な措置を講ずることが規定されましたが、県においても、子供の権利として意見表明の場を積極的に位置づけ、広げていくことが必要と考えますが、いかがでしょうか。以上、こども若者局長に見解を伺います。

【高橋県民文化部こども若者局長】

 子供の意見を反映させるために必要な措置を講ずることについてのお尋ねでございます。

 議員からお話もございましたとおり、こども基本法においては、年齢や発達の程度に応じた子ども・若者の意見表明の機会の確保、子供の意見尊重が基本理念として掲げられるとともに、子供施策の策定・実施に当たって、子供等の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする旨が規定をされております。

 県では、これまで子供の居場所や学校等に職員が直接出向いて個別に御意見を伺い、子ども・若者支援総合計画等に反映させるなど、取組をしてきたところでございますが、これからはより一層、子ども・若者の意見を施策に反映させていくことが必要と考えておりまして、新たに子ども・若者モニター事業を実施し、これまでニーズを把握する機会がなかった18歳未満の子供へのアンケート調査を行うほか、様々なテーマで、子ども・若者との意見交換の場を設ける予定です。

 また、今後は子供の相談窓口との連携やSNS等の活用など、より多様な手段を生かして子供の意見表明の機会の確保に努めてまいります。

 こうした機会を通じて、子ども・若者からの様々な提案や意見を丁寧にお聞きし、施策づくりに反映させてまいりたいと考えております。

 以上です。

農産物の災害対策について

【山口典久議員】

 続いて、4月の低温、遅霜による農産物の被害、凍霜害について質問します。

 4月に入ってからのこの低温、遅霜で、リンゴや梨などの花が枯れて落ちたり、実が傷つく被害が発生しました。私も被害を受けた各地に赴き、農家の皆さんから直接お話をお聞きしましたが、壊滅的な畑、農家の皆さんの落胆した姿には本当に胸が痛みました。今回被害を受けた地域の中には、2019年以来、凍霜害が2回、また千曲川の決壊と、4年間で3回の大きな被害を受けた場所もあります。リンゴを作れないことが一番つらい、こうした声もお聞きしています。今、農業を続けること、食料生産への希望、展望が求められています。

 4月の凍霜害の被害の状況について伺います。

 毎年のような災害、また農産物価格の低迷で、農家は大きな打撃を受けています。長野県農業は、危機的な状況と考えますが、見解を伺います。

【小林農政部長】

 私には農作物の災害対策について、御質問をいただきました。

 まず、凍霜害の被害状況と見解についてですが、4月以降の断続的な降霜、遅霜、低温によりまして、23億3,000万円余に及ぶ甚大な農作物被害が発生をいたしました。被害状況として、松本地域をはじめ県内40市町村におきまして、リンゴ、梨などの果樹を中心に20品目の農作物に被害が発生し、収穫量の減少や、品質低下が懸念されているところでございます。

 近年は温暖化による気候変動によりまして、災害の発生頻度が高まっており、令和3年にも大規模な凍霜害が発生するなど、資材価格の高騰なども併せ、農業経営にも影響が及んでいるものと認識してございます。

【山口典久議員】

 被害農家への支援について伺います。

 被害を受けた農家は、この秋の収穫が見込めなくても木を放っておくことはできません。来年のためにも肥料を施したり、消毒、手入れも必要です。しかし農業用資材の高騰で、農家の経営は逼迫しております。他県においては、肥料や農薬の経費を支援するところもあると聞きます。

 長野県においても、今回の被害に対して、これまで以上の手厚い支援が必要と考えますが、県の支援策について伺います。

【小林農政部長】

 県の支援策についてでございますが、今回の凍霜害を受け、県では、農業農村支援センターに相談窓口を設置し、技術面、経営面の相談に対応するとともに、生産者団体と連携し、被害状況に応じた栽培管理などの技術指導をきめ細やかに行っているところでございます。

 また、農業団体などからの要請や相談窓口に寄せられている声を踏まえ、被災された農家の皆様が意欲を持って営農が継続できるよう、被災農家の経営安定に向けた資金融資、被害果実の有利販売対策、防霜ファンの設置などの支援策を検討してまいります。

 さらに温暖化による影響などを踏まえ、長期的な視点で新たな被害防止対策や必要な支援についても検討を行ってまいります。

【山口典久議員】

 事前の対策について伺います。

 県はこの間の凍霜害を踏まえ、事前対策として動画等を作成し、燃焼剤の使用、防霜ファンの設置などを推奨してきました。これを見て、実際に今回被害を免れた農家もおられました。同時に、農家からお話を聞くと、こうした事前対策がまだまだあまり知られていなかったり、防霜ファンを設置したいが補助の条件が厳しい、設置したが電気代が高くて使えなかった、全部の畑に燃焼剤を使用することは不可能など様々な声があるのも事実です。

 県として、そうした声を受け止めてほしいと思いますが、いかがでしょうか。さらに、燃焼剤購入への支援を求める声もありますが、見解を伺います。

【小林農政部長】

 事前対策の周知についてでございますが、事前の被害防止に関する技術情報につきまして、農業農村支援センターから、事前にメールマガジンなどを活用し、農業団体や農家の皆様へお知らせをしているところでございます。特に、令和3年の凍霜害を踏まえ、燃焼資材の使い方などの動画やパンフレットを緊急的に作成し、動画投稿サイトなどで広く啓発をしてまいりました。今後も報道機関と連携など様々な機会を捉え、被害防止対策を周知してまいります。

 防霜ファンの設置につきましては、国庫補助事業を活用し設置を支援しており、十分な予算の確保や修繕費も補助対象となるよう国へ要望しているところでございます。

 また、今年の春に使用した燃焼資材につきましては、市町村の支援状況などを踏まえ、県の農作物等災害緊急対策事業での対応を検討してまいります。

【山口典久議員】

 セーフティーネットについて伺います。

 災害や様々な要因による農家の収入の減少をカバーし、経営を支援する果樹共済や収入保険制度があります。この間、制度の見直しや改善も行われていますが、支払われる基準や金額、納める保険料、また加入条件などをめぐり、見直しや改善を求める様々な声や要望があります。

 収入保険について、より加入しやすいように保険料を補助する市町村が県内でも広がっており、それが加入率の向上につながっているとお聞きしますが、助成している県内の自治体数は幾つあるでしょうか。

 また県が収入保険料への助成などにより、市町村、農業団体等と力を合わせてセーフティーネットの充実に取り組んでいただきたいと考えますが、いかがでしょうか。以上、農政部長に伺います。

【小林農政部長】

 収入保険の保険料への助成についてでございますが、保険料の助成を行っている県内の自治体は42市町村となっています。

 近年は頻発する自然災害などの不測の事態に備え、農家の経営安定を図るため、収入保険や農業共済など、セーフティーネットへの加入の重要性が増しております。県としましては、まずは自然災害などのリスクに対し、農家自らが備えることが重要であると考え、農家が集まる様々な機会で加入促進の周知をした結果、令和5年の収入保険の加入件数は3,058件と、令和4年に比べて約2割増加しております。

 今後も、NOSAI長野や市町村、関係団体と連携しながら、加入要件である青色申告が行えるよう農家支援を強化するとともに、研修会などを通じて加入促進を図ってまいります。

 以上でございます。

【山口典久議員】

 農産物の凍霜害の被害について農家の皆さんからお話を聞くと、この被害の実態をよく調べてほしい、私たちの思いを聞いてほしい、受け止めてほしい、そして希望を語ってほしい、こういう声が強くあります。もうぎりぎりのところで頑張っている農家は少なくありません。

 県はこれまでも、もちろん現地に足を運んでいただいて様々な取組をしていただいていると思うわけですけれども、ぜひ、農政部の皆さんが一層現地に足を運び、本当に希望が持てる、これまでの延長線上でない農家への支援、これを行っていただくことを要望をいたします。

マイナンバーカードについて

【山口典久議員】

 次に、マイナンバーカードについて質問します。

 この間様々なトラブルが続出しています。こうした中で、今の健康保険証の廃止などを定めた改正マイナンバー法が国会で成立しましたが、長野県保険医団体連合会が行った調査では、マイナ保険証について、67%の医療機関でトラブルがあり、中でもシステムの不具合で、医療費の全額負担を請求した事例も6施設でありました。マイナンバーカードに別人の保険情報が登録されていた事例もあり、別人情報に基づいて医療行為や薬剤投与が行われることは生死に関わる重大事案です。

 県内の介護施設等では、施設入居者に対して、マイナ保険証の暗証番号の保管が困難であることなどを訴えています。今の健康保険証の廃止に関し、反対や撤回を求める声が現場で上がっています。

 そこで伺います。

 県内におけるトラブルの発生状況はいかがでしょう。

【清水企画振興部長】

 私にはマイナンバーカードに関してお尋ねがありました。

 まず、県内におけるトラブルの発生状況についてお答えいたします。

 マイナンバー制度及びマイナンバーカードに関連して、5月以降、全国各地で様々な事案が報告されていると承知をしております。これらの事案は、システムエラーに起因するもの、人為的ミスに起因するもの、二つに大別されると認識をしております。

 まず、システムエラーによるものとして、コンビニ交付サービスにおいて別人の証明書が交付された事案については、県内の市町村は、不具合が生じたシステムとは異なるシステムを採用しており、同様の事案が県内で発生していないことを確認しております。

 そして、人為的ミスによるものとして、公金受け取り口座に他人の預貯金口座を登録した事案については、国による直接点検の結果、誤登録の可能性が高いものは全国で748件とのことでありますが、都道府県別の内訳までは公表されておりません。

 マイナポイントを別人に付与した事案につきましては、国の調査に対して、県内の市町村からは該当ない旨の回答があったところです。

 また、健康保険証のひもづけ誤りについては各保険者が、障害者手帳のひもづけ誤りについては各自治体が、現在国からの要請に基づきそれぞれ点検を実施しているところであり、今後結果を国に報告することになっていると承知しております。

【山口典久議員】

 世論調査では、今後の利用拡大について、7割を超える人が不安と回答したものもあります。これまでの県の関与する事業における利用状況、今後の利用拡大の計画はどのようになっているのでしょうか。以上、企画振興部長に伺います。

【清水企画振興部長】

 業務における利用状況と今後の利用拡大の計画についてお答えいたします。

 まず、マイナンバーについては、いわゆるマイナンバー法に基づき、異なる行政機関等の間で専用のネットワークシステムを用いた個人情報のやり取り、情報連携が行われております。本県においても、高等学校就学支援金事務、福祉関係各種給付事務など法定の事務に加えて、条例により独自の利用事務を定めて情報連携を行っております。

 令和4年度は34事務でマイナンバーの情報連携を活用し、本県からの情報照会は16万件余り実施され、これまで必要であった添付書類の提出が削減されるなど、手続の簡素化に寄与しているものと認識をしております。

 マイナンバーの利用については、これまでマイナンバー法により、社会保障、税制、災害対策に限られておりましたが、本年6月に一部改正が行われ、国家資格に関する事務等についても今後利用可能となります。

 今般の法改正を契機とした情報連携の効果的な活用について、県民の利便性向上と行政事務の効率化を図る観点から検討をしてまいります。

 また、マイナンバーカードについては、現在県独自に八つの手続におきましてオンライン申請を可能とし、本人確認書類の添付を不要としており、県民の皆様がさらに多くの手続で簡便に申請ができるよう検討を進めてまいります。

 以上です。

【山口典久議員】

 マイナ保険証に関する阿部知事の見解を伺います。

 マイナ保険証はトラブルだけでなく、重大な問題があると考えます。厚生労働省は、保険証を廃止した後、マイナ保険証のない人には資格確認書を発行するとしています。

 しかし、この確認書は有効期間が1年で、その都度更新が必要です。障害者の生活と権利を守る全国協議会は、これは国民皆保険制度を崩壊させかねない、特に日常的に医療を必要とし、自己決定や意思疎通が難しい障害者や高齢者などへの申請等への対策が全く想定されていないため、医療権が奪われかねないことを指摘しています。

 全国知事会は5月30日、「マイナンバーカードの安全・安定的な運用に向けた緊急提言」を行い、国として、各省庁、地方公共団体及び関係事業体が一体となったチェック体制や誤った情報のひもづけの防止を担保する制度の構築等に取り組むことを求めています。

 しかし、連日報道にあるように事態は深刻です。健康保険証の廃止は中止して、今の保険証を残すことなど、仕組みを全面的に見直すべきと考えますが、知事の見解を伺います。

【阿部知事】

 私にはマイナンバーカードを健康保険証として利用する仕組みを見直すべきではないかという御質問でございます。

 健康保険証のデジタル化につきましては、診療や検診、投薬情報の一体的利用による医療の質の向上、あるいは医療機関の窓口での利便性の向上など、よりよい医療提供のためのメリットがあるものというふうに考えています。

 しかし一方で、御指摘のとおり、健康保険証のひもづけ誤りなど、国民のマイナンバー制度そのものへの信頼を損ないかねない事案が多く発生しています。このうち健康保険証のひもづけ誤りは、保険者が適切な確認を実施しなかったことによるものでありますけれども、現在判明している7,372件について、データが補正されるとともに、国においては新たな誤登録の発生防止に向けた対策、あるいは既存データの総点検などが講じられているところであります。

 国においては、今月21日にマイナンバー情報総点検本部を設置して、関係省庁を挙げて健康保険証をはじめとする、マイナポータルで閲覧可能な情報を有する全ての制度について点検を行うこととされております。

 県としても、こうした点検が着実に実施されますよう、市町村等と連携して適切に対応していきたいと考えております。

 以上です。

【山口典久議員】

 マイナンバーカードについて、この間利便性、効率性は強調されてきました。しかし結局、導入ありき、事実上の強制が、今の深刻な問題を引き起こしていると考えます。今の健康保険証を残すために、阿部知事が積極的な役割を果たしていただくことも期待して、私の質問を終わります。

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