日本共産党長野県会議員団

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議会質問

2023年9月定例会 両角友成議員一般質問

  1. 信州F・POWERプロジェクトについて
  2. 現行の健康保険証の存続について

1.信州F・POWERプロジェクトについて

【両角友成議員】

 日本共産党県議団の両角友成です。私は、発言通告に沿って一般質問を行います。
 まず初めの質問項目は、信州F・POWERプロジェクトについてであります。
 本年8月10日に更新された林務部のウェブサイトには、「信州F・POWERプロジェクトとは」と題し、こう書かれています。「豊富な森林資源を無駄なく活用し、その利益を山側に還元することで、森林の再生や林業・木材産業の振興を図るための取組です。また、再生可能エネルギーの普及に向けて、木質バイオマスによる発電を行うことで、化石燃料に依存しない環境負荷の少ない循環型社会の形成を目指します。このプロジェクトの推進に当たり、県は原木の安定供給に向けた関係者間の調整や素材生産増加へとつながる林業従事者の支援を行います」。
 皮肉にも、同日8月10日、信濃毎日新聞の1面トップに、F・POWER中核、再生手続。征矢野建材燃料供給停滞で経営難。県や塩尻市、民間が連携して、森林資源の有効活用を目指す信州F・POWERプロジェクトの中核を担っている征矢野建材は、9日、地裁松本支部に民事再生法の適用を申請した。代理人弁護士によると、負債総額は65億円。プロジェクトの木質バイオマス発電事業への燃料供給が滞り、補償の支払い等で経営が圧迫されたという内容です。
 私たち日本共産党県議団は、当初から本当に信州F・POWERプロジェクト木質バイオマス発電の規模は適正か、分散化すべきと方向性を示しながら質問を重ねてきました。
 平成30年6月定例議会では私が質問に立ち、この年の2月定例議会代表質問で、備前光正県議が素材生産量の49万8,000立方メートルという数字は、長野県全県の総量なので、これが全てF・POWERに来るわけではないと思う。恒常的に半径50キロからの材料の供給がどのくらい可能で、しかも搬出の路網整備や林業従事者などどのようになっているのか。あわせて、実際にこの規模で製材と木質バイオマス発電とで採算が取れ、成功しているところがあるのか。
改めて適正規模で分散化させるべきとしました。
 部長答弁で、塩尻市から半径50キロ圏内で、生産量が2015年28万5,000立方から、2020年は46万5,000立方が見込まれるので、安定的に供給ができるとし、また成功例は、宮崎県日向市の事例、集成材製品の製造と木質バイオマス発電を一体で行って、発電施設の規模は1万8,000キロワットで、年間19万3,000トンの木材を消費している。今後発電施設を増設し、規模を2倍にする意向と示されました。
 私たち県議団は、早速宮崎県日向市の木材を扱う会社を視察させていただきました。それは、9万坪の広大な敷地に土場や大規模加工工場、九州南側全域から集材し、営業内容は木材の製材及び販売、乾燥材・集成材の製造販売、プレカット加工、その他付帯する業務、そして最後にバイオマス発電事業となっていました。
 基本にしっかりした製材事業があり、この会社1社で、プレカット加工、製材量は年間1万4,000戸相当、長野県内の住宅新築数1万から1万2,000戸に匹敵する。バイオマス発電では、木材の無駄のない利用、CO2のリスクの少ない環境発電とされ、発電は工場内で発生するおが粉などの燃料で全て賄う。県が示した成功例は、あくまで発電は余剰、残ったもので行う事業でありました。
 これに対して県のF・POWERプロジェクトは、製材部門がしっかりしない中での大規模発電施設計画であり、この際いまいちど国・県の指導も行い、建材の製造販売を軌道に乗せ、そこから生まれる燃料となる端材、木材から7%出るとされるおが粉、バーク、枝葉に至るまで副産物の量を積算し、それに見合う適正規模の発電施設に軌道修正する必要性を強く感じますとただしましたが、部長答弁では、2月定例議会での備前質問にも、6月定例議会での私の質問に対しても、本県の豊かな森林資源を多段階に利活用し、森林所有者や林業・木材産業に利益を還元していくことを基本に、地域の森林資源の現状、加工施設の配置状況などの特性を踏まえ決定されたもので、適正な規模である。製材事業につきましては、現在事業主体におきまして、製品販路の確保を着実に進め、安定した生産体制の構築に取り組んでおりますので、今後の発電施設の稼働に向け、県として引き続き円滑な運営ができるよう指導を行いますとのことでありました。
 この年9月定例会で山口典久議員から、信州F・POWERプロジェクトに関し、4点質問がされました。その中で、平成25年6月18日、阿部知事、小口塩尻市長、櫻井征矢野建材代表取締役の連名によるプロジェクト宣言が出されました。
 この宣言は、この事業は長野県総合5か年計画・しあわせ信州創造プランに位置づけて推進していくこと。さらに、本県から全国に向けて、林業再生と再生可能エネルギーの利用における先駆的なモデルを発信できるよう推進していくとうたっています。
 この事業は、県として積極的に深く関与している事業であり、補助金も25億円と多額。事業を計画とおり進捗しているか、責任ある体制で検証・確認する必要があるとただしました。
 山﨑部長答弁では、副知事を中心にプロジェクトチームをつくり、補助事業施設であるという点から、指導と県産材振興としての支援の両面から役割を果たしていくことを目的と考えています。このため、事業者が取り組む原木調達や製品販路拡大について、進捗状況は課題等について共有しながら、必要に応じて指導や情報提供などの支援を行っているところでございます。今後も関係者間で情報を共有しつつ、県産材利用の拠点としての役割を果たすよう取り組んでまいります。
 プロジェクトチームにおいては、毎月の進捗管理、3か月ごとに取組の有効性をチェックし、事業者への指導、支援を実施し、製材事業を安定的に運営されるよう取り組んでいきたいと考えてございますと、総じて大丈夫ですの答弁でした。
 しかし、本年6月定例会林務委員会の質疑で、木質バイオマス発電向けの燃料材は、F・POWERプロジェクトにおいて一体どのくらい不足していると理解したらよいかなどの質問に対し、個別の企業の状況については県として回答を控えるとの答弁で、委員からは、これでは議論にならないと指摘されるほど、本事業に対する県の姿勢が変わりました。
 今回、征矢野建材が民事再生法の適用を申請する4か月前、5月12日、ソヤノウッドパワー普通株主の北野建設株式会社が、特別損失の計上に関するお知らせで、電気事業燃料調達が困難な状況。なお長期化が予想される状況だとして、7億5,300万の特別損金を3か月決算に計上しています。
 本事業を、県は民間事業者に係る問題だとしてきましたが、知らなかったでは済まされません。民事再生法の適用を申請するに至ったこの事業に対し、なぜここに至ってしまったのか。要因を知事に伺います。

【阿部知事】

 信州F・POWERプロジェクトについて御質問をいただきました。
 まず、征矢野建材が民事再生法の適用を申請したが、ここに至った要因という御質問でございます。
 征矢野建材は、このプロジェクトの中で製材事業を担ってきたわけでありますが、この製材事業につきましては、事業主体である征矢野建材において、無垢フローリング材を主要製品として設定をしていたところでございます。
 しかしながら、品質の安定したプリント材の普及といった市場動向の変化等によりまして、販路拡大が思うように進まない状況にあったというふうに受け止めております。
 また、新型コロナの拡大による素材生産活動の停滞の影響であったり、あるいはウッドショックによりまして世界的に木材需給が逼迫したというようなこともあり、原木の調達が不足したことから、木材チップの供給先でありますソヤノウッドパワーに対する多額の補償金が発生していたところであります。こうしたことを背景に、征矢野建材が民事再生手続開始の申立てを行うことになったというふうに考えております。

【両角友成議員】

 本プロジェクトにおいて、長野県は調整役を担うとともに、事業者に対して指導、支援をしてきたことを踏まえると、県の責任は相当に重いと考えますが、知事の見解を伺います。

【阿部知事】

 県としての責任は重いと考えるかどうかという御質問でございます。
 これまで県としては、プロジェクト、まず一つ補助金の執行者として、善良な管理者の注意を持ちながら補助目的に沿った事業が実施されるよう指導を行うとともに、原木の安定供給に向けた関係者間の調整であったり、あるいは素材生産の増加へとつながる林業事業者の支援という役割を果たしてきたところでございます。プロジェクトに位置づけた各事業の経営はもとより、それぞれの事業主体が責任を持って行っているものであります。
 このプロジェクトにおいて、重要な役割を担ってこられた征矢野建材が、今回民事再生の手続を申請されるといったようなことに至ったという点については、私どもとしても大変重く受け止めているところでございます。
 県としては補助金執行者としての責務もございますことから、引き続きその役割を誠実に果たすとともに、プロジェクトが目指した森林資源の有効活用による林業木材産業の活性化という所期の目的の達成に向けて、補助対象事業が継続されるよう適切な支援等に努めてまいります。

【両角友成議員】

 また、事業を引き継ぐとされる綿半ホールディングスですが、今回の債務総額65億円の大きな原因となった燃料供給の義務契約の解除が前提とのこと。さすれば、発電事業が続くのかも大いに疑問になります。
 8月は燃料チップ不足で発電はストップしているとの報道。林業従事者からは、サプライチェーンがうまく作動していない、ストックヤードも見当たらない。今まで切れ、切れと言っていたが、これからどうなるのか、いくらになるのか。松枯れ材は路網を整備しなければ出せない。
民有林は境が分からないとトラブルの原因になり、切れない。路網整備、その分の経費はチップに上乗せできない。現在F・POWERでは受入れが止まっている。既に受入れを前提に進めている事業がどうなるかなどなど。
 地元松本市内のある工務店は、征矢野建材とは付き合いが長く、仕事を続ける上で建材が入らないとお手上げになると訴えております。
 このように、地元の林業者からは、本プロジェクトが継続されるのか心配の声が上がっているが、今後の見通しについて、知事に伺います。

【阿部知事】

 今後の見通しという御質問でございます。
 征矢野建材におかれましては、綿半ホールディングスとスポンサー契約を締結して、その再生支援の下、従来の業務を継続しながら再生に向けて取り組んでいくことになっております。
 征矢野建材におきましては、民事再生計画案の作成と並行して、再生後の新たな事業展開に向けた検討を進められていくというふうに伺っており、県としても新たに部局横断に立ち上げ、また弁護士等の専門家にも御参画をいただいている事業継続支援チームを通じて、事業の着実な継続が図られるよう、技術面の助言や情報提供等の支援を積極的に行ってまいります。
 このプロジェクトが所期の目的を達成できるよう、県としても全力で取り組んでまいります。  以上です。

【両角友成議員】

 何が問題だったのか、責任の所在は等、納得できる答弁ではありませんが、民事再生法の適用を申請したことを重く受け止める、正面から向き合う誠実さ、その後の対処について責任を持って行うという意思表示を真摯に受け止めるということですので、県として事業規模の適正化も含めて責任ある対応を求めます。
 細部については引き続き担当委員会での質疑をお願いし、次の質問項目に移ります。

2.現行の健康保険証の存続について

【両角友成議員】

 次の質問項目は、現行の健康保険証の存続についてであります。
 マイナンバーをめぐるトラブル続出を受けて、政府はマイナポータルで閲覧できる29分野の情報の総点検を行う方針。総点検はひも付けの誤りが発生するリスクの高い項目を抽出し、個別データの点検を行っています。
 8月の中間報告によると、個別データの点検を行う自治体は、全国の2割超のみ。政府は国民にマイナポータルで自分の情報を点検するよう呼びかけ、無策のつけを国民に押しつけている格好です。
 マイナンバーカードと保険証を一本化したマイナ保険証めぐっては、厚生労働省が全データの総点検を行っています。ところが、マイナンバーと医療情報のひも付け作業が終わっていないため、医療機関の窓口でマイナ保険証を利用したオンライン資格確認が行えない事態が起きています。8月24日現在77万件。数々のトラブルの根本要因は、マイナンバーカードの急激な普及を図ったことにあります。それでも政府はカードの利活用を広げ、運転免許証、母子健康手帳、介護保険証などの一本化を狙っています。
 こんな状況でマイナンバーカードの運用を続ければ、個人情報に関わるトラブルがさらに拡大する危険性があります。カードの運用を一旦停止し、完全確実な総点検で国民の不安を解消しなければなりません。そして、来年秋の保険証廃止ありきをやめ、国民と医療現場の声に従って健康保険証を継続させるべきです。
 プッシュ型の資格確認書の発行を厚生労働省は言い出していますが、多額の費用と手間をかけて資格確認書を発行する必要はありません。新たな経費をかけずに済む現行の健康保険証を残すべきです。
 保団連、全国保険医団体連合会は、来年秋に従来型の保険証を廃止する政府方針に対し、9割近くの医療機関が保険証を残す必要があるとの報道です。県は常にマイナ保険証推進の姿勢ですが、県内医療機関からは、マイナ保険証には被保険者の負担割合の記述がなく、結果としてレセプトは返戻になっているなど、マイナ保険証に関する現状のトラブルをきちんと把握しているか伺います。
 また、来年秋に現行の保険証が廃止されてしまえば、医療機関が混乱しないか心配ですが、健康福祉部長の見解を伺います。

【福田健康福祉部長】

 マイナ保険証について御質問をいただいております。
 県ではオンライン資格確認等の状況につきまして、医師会などの医療団体を通じてお聞きをするほか、厚生労働省の公表事例などを把握をいたしまして、トラブルがないかなど、現状の確認に努めているところでございます。
 御指摘の事例につきましては、現在国におきまして、各保険者に対し負担割合の相違が判明した事例等の調査を行っておりまして、国では結果がまとまり次第公表し、必要な対応を図る予定である旨を、社会保障審議会の医療保険部会において説明しているところでございます。
 県といたしましても、懸念する声があることは承知をしております。現場の意見をしっかりと受け止め、丁寧な説明と確実な制度設計、円滑な運用がされるよう、国へ要望してまいります。
 以上でございます。

【両角友成議員】

 自治体職員の負担軽減からも、プッシュ型の資格確認書を新たに発行するくらいなら現行の保険証を残すべきと国に対して求めていただきたいと考えますが、知事の見解を伺います。

【阿部知事】

 マイナ保険証に関連して現行の保険証を残すべきと国に求めてもらいたいかどうかという御質問でございます。
 デジタル社会は、これからしっかりと進めていかなければいけないと思っています。これは産業振興の観点も、そして暮らしの利便性を高めるという上でも極めて重要だというふうに考えております。
 そうした観点でマイナンバーカードの早期普及を図っていくということは重要だというふうに思っておりますし、健康保険証のデジタル化についても、よりよい医療を提供する観点でのメリットもあることから、普及を図っていくことが必要というふうに思っております。
 しかしながら一方で、マイナンバーのひも付け誤りをはじめいろいろ課題が出てきているという状況であります。まずは、国において今後の国民の不安払拭を最優先に対応してもらうということが重要だというふうに考えております。
 これまでも全国知事会を通じるなどしてマイナンバーカードの安全・安定的な運用に向けた提言を行ってきているところでありますが、国に対しては、国民の信頼回復に向けてきめ細やかな対応を徹底するよう求めていきたいというふうに考えております。
 加えて、資格確認書の発行につきましては、現場の事務負担も十分に考慮した上で、しっかりとした制度設計を行っていただくよう求めていきたいと考えております。
以上です。

【両角友成議員】

 全国保険医団体連合会によると、この間5,493医療機関でトラブルが発生し、患者さんに対し10割を請求した例が1,291件あると推計され、現行保険証廃止を強行すれば、トラブルは108万件以上になると予想されています。やはり現行保険証は残すべきと申し上げさせていただきます。
 経済同友会は2020年4月、マイナンバーカードを持つべき全ての機能は、スマホなどのデジタルデバイスに健康保険証などの機能とともに移行すべきと提言。将来的にはマイナンバーカードを廃止すべきとしています。
 アンドロイド版スマホには、今年5月からマイナンバーカードの機能が搭載できます。国内で5割を超えるシェアを持つiPhoneも、遠くない将来対応するとみられます。国が提供するスマホアプリをダウンロードすると、国や自治体からの給付金や今後必要となる行政手続に関するお知らせが届く。病院ではこのアプリが診察券の代わりとして利用される。
 政府や財界の思惑どおりに社会がデジタル化すれば、国はデジタル企業のあっせん機関となり、自治体は民間が展開する住民サービスを利用するためのアプリ提供機関になってしまう心配があります。
 マイナ保険証に対し、知事はよりよい医療につなぐ趣旨の答弁をされましたが、そもそもマイナンバー制度の創設のきっかけが、医療・介護費用の削減にあったことを忘れてはなりません。
 続投となった河野デジタル大臣が口にする、行かない窓口、書かない窓口などの自治体窓口のDXにより、人がマンツーマンで対応できる対面窓口の削減が想定されています。職員のリストラも予想されます。身近な出張所などもスマホで足りると減らされるでしょう。住民の命や暮らしを守るという自治体本来の機能を投げ捨てることにつながります。
 そんな冷たいデジタル社会ではなく、デジタルの便利さもアナログの持つぬくもりも兼ね備えた住民が主役のデジタル社会にすべきではと申し上げ、質問といたします。
 ありがとうございました。

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