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議会質問

2023年9月定例会 毛利栄子議員一般質問

  1. 長野県ゼロカーボン戦略の推進について
  2. 特別支援学校の環境整備について
  3. リニア建設工事における尾越工区の残土処分について

長野県ゼロカーボン戦略の推進について

【毛利栄子議員】

 長野県ゼロカーボン戦略の推進について、環境部長並びに産業労働部長に伺います。

 7月後半以降の記録的な猛暑について、気象庁の異常気象分析検討会は、今年の夏の平均気温は1898年統計開始以降の125年間で最高との見通しを示しました。8月10日には石川県小松市で最高気温40度、上田市では8月18日に38.4度を記録。長野市では7月16日以降53日間にわたり連続30度以上の真夏日で、過去最長を記録しました。

 国連のグテーレス事務総長は、地球温暖化どころか「地球沸騰化の時代」「人類は地獄の門を開けた」と警告しています。気候危機と呼ぶべき非常事態になっていることを、長野県民もまざまざと認識せざるを得ない夏になったと思います。

 猛暑ばかりではなく、干ばつや異常な豪雨、洪水、森林火災、台風なども起こっており、CO2削減に真剣に向き合わなければ、人類と地球環境は破局的な事態に陥ってしまうのではないかと危惧されます。

 国連の気候変動に対する政府間パネルIPCCは、今年3月、世界の平均気温は産業革命前から1.1度上昇していると公表し、このままでは1.5度に抑えるのは困難であるとしています。

 地球を守り将来世代に豊かな環境を引き継ぐために、私たちは諦めるわけにはいきません。

この期に及んでも石炭火力と原発しがみつき、環境NGOから何度も「化石賞」を受賞する日本政府の姿勢は恥ずべきものであり、責任は重大なものがあります。

 地方自治体の本気の取組を推進するとともに、県民一人一人が気候危機打開の取組を一層進めることが求められています。

 省エネについて伺います。

 長野県は温室効果ガス排出量を2050年に実質ゼロを目指し、2030年度までに2010年度比で60%削減するとして、再生可能エネルギー生産量を2倍増、再生エネルギー消費量を4割削減するとした野心的な目標を掲げ取り組んできていますが、最新実績はどうなっているか伺います。

【諏訪環境部長】

 ただいま質問をいただきました。順次お答え申し上げます。

 まず、再生可能エネルギー生産量、最終エネルギー消費量の最新の実績はどうかとのお尋ねでございます。

 県では毎年度、国の統計調査等のデータから県内における再生可能エネルギー生産量及び最終エネルギー消費量を把握しております。直近の再生可能エネルギー生産量は、2021年度が約3万テラジュールであり、2010年度比で約1.3倍に増加しております。また、最終エネルギー消費量は、暫定値でございますが、2020年度が約16万1,000テラジュールであり、2010年度比で約17%の減少となっているところでございます。

 なお、温室効果ガス正味排出量は2019年度1,213万トン CO2であり、2010年度比で約22%の減少となっているところでございます。

【毛利栄子議員】

 3月策定の「ゼロカーボン戦略ロードマップ骨子」によると、2019年度実績では、基準年に対して、産業部門・業務部門が25%削減となって全体を引っ張り、寄与度が大きくなっています。これは一定規模事業者に対する事業活動温暖化対策計画書等の作成、県への提出、公表を義務づけ、事業者を総合的にサポートしていたことによる効果が大きいと思われますが、進捗状況を伺うとともに、中小規模排出事業者の自発的な参画も広がったと思われますが、どのような状況なのか伺います。

【諏訪環境部長】

 「事業活動温暖化対策計画書」制度の進捗状況についてでございます。

 まず、計画書制度の参画事業者ですが、2021年度が334者、2022年度が856者、そのうち自発的に参画している中小規模排出事業者が2021年度が21者、2022年度が530者で、500者以上増加しているところでございます。

 また直近で把握しております2021年度の参画事業者の温室効果ガス排出量は、2019年度比で0.2%の削減となっており、これは設備更新や再エネ電気の切り替え等により排出削減が進んだ一方、経済活動の回復により、製造業において生産量が増加した結果であると考えられます。

 産業業務部門全体で見ますと、直近で把握している2019年度の排出量の実績は、計画書制度の運用を開始した前年度の2013年度と比較して約21%削減されており、計画書制度が産業業務部門の排出削減に貢献しているものと考えているところでございます。

 温室効果ガス排出量を削減するには、まず自らのエネルギー使用状況を見える化することが必要であり、計画書制度はそのための有効な手段であると考えております。2030年度に2010年度比6割減の目標を達成すべく、引き続き本制度も活用しながら、事業者の排出削減を促進してまいります。

【毛利栄子議員】

 電気代なども高騰する下で、中小企業エネルギーコスト削減助成金が大変好評で、事業者が省エネ冷蔵庫に替えたり、電気をLED化したりと利用しています。実績を伺うとともに、ぜひ継続してほしいとの要望も出されています。

 募集期限の延長などを実施していただいていますが、産業・業務部門の削減をさらに進めるためには、時限的ではなく、一定のスパンを持って継続実施していただきたいと思いますが、産業労働部長、いかがですか。

【田中産業労働部長】

 「中小企業エネルギーコスト削減助成金」について御質問をいただきました。

 中小企業エネルギーコスト削減助成金は、令和4年6月補正から令和5年6月補正までの間で合計約42億円の予算額を計上し、4回の募集を実施したところでございます。

 この直近の9月4日の募集までで合計2,674社から、ほぼ予算額の約42億円の申請をいただいており、そのうち、本年9月15日時点で約16億円が支給されているところでございます。

 本事業は国の交付金を財源としまして価格高騰対策として緊急的に実施してきた事業でありますが、追加の実施等につきましては、今後のエネルギー価格の動向や国の新たな経済対策を踏まえた上で検討してまいります。

 また一方で、この省エネ設備などの導入は、コスト削減による企業の経営基盤の強化につながるものでございます。今後、本助成金事業を通じて把握しました設備ごとのコスト削減データの有効活用や、設備投資時の資金回収シミュレーションなどができる支援ツールの提供などを予定しておりまして、企業の自主的な省エネ設備等の導入を、継続的に支援していきたいと考えております。

 以上でございます。

【毛利栄子議員】

 2030年度までに乗用車の1割、10万台をEV車にとの目標を持っていますが、環境にはいいと分かっていても、まだまだコストが高いためになかなか切り替えできないというのが現実ではないでしょうか。 

県では充電器に対する助成などを実施していただいていますが、国の自動車購入補助金に加えて、県内でも幾つかの自治体で購入への直接補助制度なども設けているところがあります。

県としても実施している自治体と協働するなど支援策を検討していただきたいが、いかがでしょうか。

【諏訪環境部長】

 EV、電気自動車でございますが、これの推進に対する支援についてでございます。EVの普及を促進するためには、EVの購入に対する支援と、EVを利用しやすい環境の整備といった両面での取組が必要だと考えております。EVの購入につきましては、国が補助上限額を引き上げるなど支援策を拡充していることもあり、県といたしましては、まずはEVを安心して快適に使える環境を整備するため、多くの方が利用する道の駅をはじめとする主要道路沿いの施設等への充電設備の設置に対して補助をするなど、充電インフラの整備を重点的に進めているところでございます。

 日本ではまだ販売されているEVの車種も限られております。今後、各メーカーによる新たなEV車種の投入が見込まれており、選択肢が増えることにより購入意欲も上がってくるのではないかと思慮されます。

 こうした市場の動向も注視し、国や市町村とも連携しながら引き続きEVの普及に取り組んでまいります。

【毛利栄子議員】

 再エネの普及拡大について伺います。

 2019年の都道府県別県内総生産は580兆7,600億円、長野県は8兆4,500億円です。財務省貿易統計によると、2022年の化石燃料輸入総額は35兆円。単純に長野県に当てはめてみると、1.45%分、およそ5,000億円です。

 これが海外に流出しているわけですから、もし流出せずに県内で循環したとすれば、どれほど地域が潤うかと思うと、高くて不安定で持続性に欠ける輸入化石燃料に依存せずに、現在の電力需要量の7倍の潜在量を持つ再生可能エネルギーをもっともっと拡大させることのほうが、どんなに県民益にかなうかと考えます。エネルギーの地産地消をさらに推進させるべきではないでしょうか。

 長野県で再生可能エネルギーのポテンシャルの高いのは、太陽光と小水力です。この間東北震災を機にFIT制度が始まり、県内では森林伐採や大規模な環境破壊をして、野立てメガソーラーをはじめとした太陽光発電が各所で行われ、防災面や環境面、景観面などで近隣住民とのトラブルが頻発してきました。

 しかし、度重なる規制強化と買取価格の引下げによって、認定件数は2013年の3,701件から2022年は89件へと激減していきました。しかし、依然としてトラブルが発生していることもあり、今回条例提案となりました。

 私たちはずっと県条例の制定を提案してきていたので、遅きに失した感はありますが、半分以上の市町村が条例を持っていないことを考えればルールは必要であり、屋根置きを徹底的に追求しつつ、野立ての場合は遊休農地、未利用地などの活用が望まれます。

 「ゼロカーボン戦略ロードマップ骨子」では、屋根ソーラーを現状の個人住宅9万件から22万件にする、事業所9,000件を1万5,000件にするとの計画を持っています。目標に到達するには毎年2万件程度を設置していかなければならない計算になります。

 太陽光は各家庭にとっては再エネへの関心を高め、地域にとっては地産地消の電源であり、災害時の電源確保としても重要ですので、一層の取組の強化を求めるものです。

 先番の議員とのやり取りの中で、新築住宅への設置義務化の方向性も話されていますが、設置拡大をどのように推進していくつもりなのか伺います。

【諏訪環境部長】

 屋根ソーラーの推進についてでございます。

 本県は、豊富な日射量と冷涼な気候により発電効率が高く、全国的にも太陽光発電に適していることから、県では建築物の屋根を活用したいわゆる屋根ソーラーを推進しております。

 導入件数の把握が可能な個人住宅については、設置率は全国第2位となっているものの、いまだに約1割の設置にとどまっており、さらなる普及が必要です。

 県といたしましては、これまでの補助制度や共同購入事業に加え、新築建物への設置義務化の検討を進めるとともに、設置メリットの周知、導入時の初期費用がかからないPPAモデルの普及・促進など、あらゆる取組により設置を進めてまいります。

【毛利栄子議員】

 諏訪市では、市役所本庁舎の屋上と諏訪中学校の体育館屋根を信託会社に無償で貸し、発電した電力を2施設が使うオンサイトPPA方式を活用して、エネルギーの地産地消を進めるとのことです。

 庁舎は年間使用量の20%、諏訪中学校では50%をそれぞれ賄え、蓄電池も併せて導入し、災害時の夜間電力としても活用できるようにすると言います。

 電気代の高騰が続き、今後も不透明な状況も続くもとで、自家消費型や地産地消を進め、災害時や停電時にも活用でき、利益や地域に還元でき、地域おこしにも役立つ地域内電力をもっと進めるべきと考えますが、県としての考え方を伺います。

【諏訪環境部長】

 災害や地域おこしにも役立つ地域内電力の推進に関する見解はどうかとの御質問でございます。

 昨今のエネルギー価格の高騰や電力系統の容量不足、再エネそのものの価値の高まりを踏まえますと、自家消費も含め、再エネ電力の地消地産に取り組むことは極めて重要であると考えております。

 また、平成30年9月の北海道胆振東部地震に伴う北海道全域での停電の際、太陽光発電により電気が使えたという例もあるなど、再エネの地消地産は、自然災害が多い本県においても、災害に強い地域づくりにも大きく寄与するものでございます。

 県といたしましては、再エネをつくることにとどまらず、地域でどのように再エネを活用していくかという視点に立ち、エネルギー自立地域創出支援事業において地域マイクログリッドの構築を支援対象とするなど、再エネの地消地産のための取組を推進してまいります。

【毛利栄子議員】

 小水力発電は現状98.7万キロワットから、2030年度に103万キロワットにするとのことで、年10件ペースで普及するとしています。現状では年数件程度です。ここも相当ハイペースで実施しなければいけない状況ですが、どのような取り組みを行っていくのか伺います。

【諏訪環境部長】

 小水力発電の普及に向けた取組についてのお尋ねでございます。

 本県においては、豊富な水資源と急峻な地形により小水力発電の適地が多くあるものの、小水力発電の事業化に当たっては、建設コストや各種法令手続、地域との合意形成などのハードルがございます。

 このため県では、事業者に対し、これまでも収益納付型補助金による資金調達支援や、小水力発電キャラバン隊による許認可手続のサポートを行ってきましたが、現状、目標の導入ペースには届いておりません。

 そこで、今年度からは、さらに直接的な導入支援として、設置の障壁となりやすい地域の合意形成に関し、企業局と連携し、候補地選定や地域調整にも県も関わることによりスムーズな事業化につなげる取組を開始したところでございます。

 これらの取組と併せ、砂防堰堤などの施設も有効活用しながら、小水力発電の普及を加速してまいります。

【毛利栄子議員】

 脱炭素社会の実現は、私たち一人一人の決意と行動にかかっていると思います。県には思い切った施策を展開していただきながら、利潤第一主義でない、地球と将来の世代のために、立場の違いを超えて省エネと再エネに本気で取り組むために、共に力を合わせることを呼びかけたいと思います。

特別支援学校の環境整備について

【毛利栄子議員】

 特別支援学校の環境整備について教育長に伺います。

 特別支援学校は老朽化、過密化、狭隘化が進み劣悪な環境になっています。共産党県議団は改善を求め、この10年間だけでも本会議で16回にわたって質問を重ねてきました。

 大規模改修はようやく若槻養護と松本養護に手がつけられ始めましたが、今いる子供たちは、新しい校舎で学ぶことなく、我慢を強いられたまま、劣悪な環境下で卒業せざるを得ません。

 6月議会の高村京子議員の質問に対し、教育長は、特別支援学校の劣悪な環境に対しては、できるだけ早期の環境整備に取り組んでいくと答えています。

 私たちはこの間、伊那養護学校や上田養護学校などを視察し、障害児学校教職員組合の方々とも懇談させていただいてきました。臭くて古い和式トイレ、厨房設備は人員増に追いつかず、弁当持参の教師。図書室もなく、蔵書も閉校した学校からもらい受けて対応。屋根つき車寄せスペースが狭く、雨に濡れながら待っている児童。雨漏りする寄宿舎、掃除機2台使用でブレーカーが落ちる寄宿舎など、緊急に対応しなければならない課題が全ての特別支援学校に山積しています。

 ここに至るまで迅速な手を打ってこなかった県教委の責任は大きく、緊急の対応が必要と考えます。何でこんなことになってしまったのか、教育長に認識を伺います。

【内堀教育長】

 御質問を頂戴いたしました。

 特別支援学校の環境整備についてのお尋ねでございます。

 県立特別支援学校の児童生徒数は、平成元年度1,591人であったものが、本年度2,588人と、少子化の中にあって約1.6倍に増加しており、教室不足等の狭隘化が課題となっております。県教育委員会では、学校の新設校舎の増築分教室の設置、中信地区と長野地区の再編整備等により対応してまいりました。

 また、学校の新設時期が比較的集中しているため、現在建物が築30年以上である学校は、18校中15校であり、施設設備の老朽化が進んでおります。

 このため、中長期的な視点に立った改築等と、応急的な対応である校舎の増築、施設設備の修繕改修等に併せて取り組んできたところであり、平成28年度からは、修繕改修予算をそれまでの約3倍に増額し、また、令和3年度からの中長期修繕・改修計画実施以降は、さらに2倍近くに増額してまいりました。

 本県特別支援学校において、施設設備の狭隘化や老朽化に課題がある原因につきましては、児童生徒数の想定外の増加や、施設設備の改築や修繕等の必要な時期が重なったことなどにあると考えておりますが、現在ある課題につきましては、できるだけ早期に改善できるよう、引き続き計画的な環境整備に努めてまいります。

【毛利栄子議員】

 6月議会で、教育長は、特別支援学校整備基本方針に基づく中長期的な視点に立った大規模改修計画とともに、応急的な改修・修繕の両面で学習環境を整えていくと答え、応急的な対応として、令和3年度から10年間を計画期間とする修繕・改修計画に基づき、予算を大幅に増額して計画的に取り組んでいると述べています。

 私は、この10年間かけての修繕計画はあまりに悠長過ぎると思わざるを得ません。もっと短時日でスピーディーに取り組むことはできないのか伺います。

【内堀教育長】

 中長期修繕・改修計画のスピーディーな実施についてのお尋ねでございます。

中長期修繕・改修計画は、国のインフラ長寿命化計画に基づき計画期間を10年間とするもので、施設ごとに必要となる修繕や改修工事を適切な時期に着実に実施することで、長寿命化等を計画的に行い、財政負担の軽減と平準化を図ることを目的としております。

 この計画には、現在老朽化や故障等の課題が生じているものに加え、劣化度調査等を踏まえて、今後課題が生じると想定されるものを盛り込んでおります。特別支援学校では、この計画をベースとしつつ、緊急な対応が必要な工事等と併せて、毎年度の環境整備に取り組んでいるところでございます。

 県教育委員会といたしましては、児童生徒の安全で安心な学習環境を実現するために、引き続き特別支援学校への現地調査を実施したり、保護者など関係者の御意見も丁寧にお聞きしながら、今後も必要な修繕改修を計画的に行ってまいります。

 以上でございます。

リニア建設工事における尾越工区の残土処分について

【毛利栄子議員】

 リニア建設工事における尾越工区の残土処分について、建設部長並びにリニア整備推進局長に伺います。

 リニア建設工事に伴う中央アルプストンネル掘削工事で出る残土は、南木曽町で180万立方メートルと言われています。急峻の地形の上に土砂災害で非常に苦しんでいる地域であり、処分に対して住民の間から、不安の声が寄せられています。

 県議団は9月6日、南木曽町内で学習懇談会と現地調査を行いました。

 JR東海は尾越工区のトンネル掘削を始めるに当たり、県の盛土条例を受けた住民説明会を重ねています。この工区で発生する残土は110万立方メートル、9月5日には処分候補地4か所のうちの一つ、「尾越」の工事概要を示しました。

 一級河川蘭川右岸沿いの段丘にある特殊精鉱工場跡地1.6ヘクタールで、沢地形を盛土造成し建てられた場所ですが、この盛り土を含む敷地の上にさらに9万立方メートルの残土を盛り土する計画で、最大高さは約23メートルにもなります。処分地の一部は、土砂災害防止法の「土砂災害特別警戒区域」及び「土砂災害警戒区域」に指定されています。

 南木曽町は年間の降雨量が2,500ミリを超える地域であり、2014年7月には、死傷者も出る土石流災害も発生していて、住民の皆さんは、「蛇抜け」と称して土石流災害を警戒しています。

 下流域の吾妻地区の皆さんは、大雨で盛り土が崩れ、川に流れ込むようなことになれば大災害になる、南木曽のようなところに大規模盛り土はやってほしくない、おちおち寝ていられないと不安を語ります。ほかの工事として示めされている「ホテル木曽路」の裏山は、詳細は示されていないものの、盛り土高さが70メートルにも及ぶことが予想されます。

 今後JR東海は、県の盛土条例に基づき、木曽建設事務所に盛り土の許可申請を出し、県はその内容を精査して、許可、不許可を決めていくことになると思います。

 これだけ大規模の盛り土を県機関だけで決めていくことは負担が大きいと思われます。条例制定時に、許可権者としての知事が判断できる専門家から成る第三者委員会設置などの仕組みづくりが必要だと求め、当時の田中建設部長は高度な技術的判断が必要な場合には、第三者の専門的知見を検討すると答えておられます。

 過去に例を見ない大規模盛り土が計画されていることから、ぜひ、地質、地形、水象、気象などの環境条件や工法の設計内容など多方面から検討できる第三者委員会を設置して、専門的な見地から対応してほしいと思いますが、建設部長、いかがでしょうか。

【新田建設部長】

 御質問いただきました。

 県の盛土条例における第三者委員会の設置についてのお尋ねでございます。

 本条例では、面積が3,000平方メートル以上、または高さ5メートル以上の盛り土を行おうとする者は他の法令により許可を取得している場合などを除き、知事への許可申請が必要となっております。

 特に高さが15メートルを超える大規模な盛り土の場合、安定計算に加え、過去の施工実績等を踏まえて、工学的に盛り土の安定性及び耐久性について十分検討をし、必要な構造を満たすよう申請者に求めているところです。

 また、高さ15メートルを超える盛り土の許可に当たっては、地盤工学や砂防学に関しての専門的な知見を有する第三者による有識者会議を設け、盛り土の形状や、盛り土を支える擁壁などの土工構造物の安定性に関する意見を聴取することとしています。

 このように大規模な盛り土が行われる場合は、現地の地形や地質、構造等に応じ有識者の専門的な知見を活用しながら、安全な盛り土がなされるよう条例に基づき適正な審査を行ってまいります。

【毛利栄子議員】

 当該の皆さんは、申請に関して住民の意見がどう反映され、どのような審査が行われるのか経過を知りたいと言っています。審査の経過が公開されるのか伺います。

【新田建設部長】

 審査の経過の公表についてのお尋ねでございます。

 本条例では、盛土工事の許可に際して、まず申請者が工事内容を周辺地域へ説明を行った上で申請することとし、申請書類については、条例、規則、取扱要綱及び条例に係る技術的基準に基づいて、県が審査することを定めています。

 審査は土工構造物、地盤の安定性、排水計画の妥当性等について行い、それぞれの基準については、県のホームページで公表しているところでございます。どのような観点で審査を行うかを、県民の皆様にも確認いただけるようにしているところでございます。

 また、個別の案件については審査中は公表しておりませんが、許可後は希望される方が申請書及び許可書について閲覧することを可能としてございます。

【毛利栄子議員】

 盛り土完了後の恒久的な維持管理は、土地所有者の責務に委ねることになっています。住民にしてみれば、「盛ってしまえば、はい、終わり」ではなく、末代まで安全・安心に過ごせるのか気になるところです。

 許可した県の定期的な事後チェックをしていただきたいと思いますが、いかがですか。

【新田建設部長】

 盛土工事完了後の事後チェックについてのお尋ねでございます。

 本条例では、盛り土が完了し申請者からの完了の届け出があった際には、県は、当該盛り土が条例の基準に適合しているかを確認することとしております。完了後、盛り土の崩落により他者に危害を及ぼさないよう土地を適正に管理することは、議員御指摘のとおり、本条例においては土地所有者の責務となっております。

 また、本年5月に宅地造成及び特定盛土等規制法、通称盛土規制法が施行され、現在、県において規制区域の指定のための基礎調査を行っておりますが、その規制区域内においても、土地所有者が土地を安全に管理することが規定されております。

 県といたしましては、本条例には県の責務として、土砂等の崩落等の災害を防止するために必要な施策を総合的に推進すると規定しており、また将来的に盛土規制法に基づき、規制区域を指定した際には、区域内の既存盛り土についても、県と中核市が調査をすることとなっていることを踏まえ、盛り土完成後も状況を把握し、災害防止に努めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

【毛利栄子議員】

 国土地理院の地質図幅「妻籠」によれば、尾越地区の工区の非常口付近には、貴金属のアンチモンが鉱脈状に分布しているとの記載があり、住民からも、かつて採掘した跡があるとの情報があります。

 アンチモンは曝露すると呼吸器系の障害を起こすおそれがあると言われ、平成29年には三酸化アンチモンは特定化学物質に追加されました。また水質汚濁に関わる人の健康の保護に関する環境基準等において、公共用水域や地下水の要監視項目にもなっています。

 尾越工区からの残土2万6,000平方メートルは、町内十二兼地籍の木曽川右岸道路の仮設工事で長野県が使うことになっています。

 重金属を含む要対策土は、長野県としても特段の対策が必要だと考えますが、どのように対応するのか、リニア整備推進局長に伺います。

【斎藤建設部リニア整備推進局長】

 リニア建設発生土の木曽川右岸道路工事での活用についてのお尋ねでございます。

 要対策土につきましては、一般的に県を含め、公共事業における建設工事では、土壌汚染対策法で特定有害物質に指定されている重金属を含有している可能性がある場合には、同法に基づき検査し、基準値未満のものは普通土として活用し、また、基準値以上となることが確認された場合においても、要対策土として適切な処理を行い活用できることとしております。

 一方、JR東海ではリニア建設工事に伴う発生土に関し、要対策土は一般の発生土置き場には搬出しないこととしており、県が事業主体であります木曽川右岸側道路工事についても同様の扱いとなります。このため特段対策は必要ないと考えております。

 なお、議員の御質問にありましたアンチモンについては、土壌汚染対策法の規制対象物質として指定はされていませんが、懸念されるとの御意見も一部にあることから、受入れ側である県として、まずはJR東海に対し、状況の把握をするよう要請してまいります。

 以上でございます。

【毛利栄子議員】

 熱海の土石流災害以来、県民は盛り土に対して非常にセンシティブになっています。そもそも平坦地の少ない長野県には処分適地は少なく、谷や沢を安全に埋めていくことなどは皆無に等しいのではないかと思われます。

 公共事業であれば一定の時期を区切りながら事業の再評価をしていくのに、あるときは全幹法に基づく国家的事業と言い、あるときは私企業の事業だと強弁し、事故報告も消極的で、やみくもに突き進んでいくやり方はあまりにひど過ぎます。

 JR東海は一旦立ち止まり、再検証すべきだと求め、質問を終わります。

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