日本共産党長野県会議員団

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議会質問

2023年11月定例会 山口典久議員一般質問

  1. 経済対策について
  2. 特別支援学級について
  3. 水道広域化について

経済対策について

【山口典久議員】

 日本共産党県議団の山口典久です。最初に経済対策について質問をいたします。
 コロナ危機やウクライナ侵略戦争、そして異次元の金融緩和による異常な円安などにより、諸物価の高騰が続き、県民の暮らしも、中小企業の影響も深刻になっています。先日お話をお聞きした金属加工の中小業者は、「リーマンショックのときも大変だったが、今はこれまでと違う別の世界に来たようだ」と、出口の見えない苦難を語っていました。
 こうした中、いわゆるゼロゼロ融資の返済が始まっています。この間、借換え保証制度などの対策も行われていますが、ゼロゼロ融資の返済に行き詰まっている業者も少なくないと聞きます。その実情はどうでしょうか。
 また、過剰債務に苦しむ業者に対して、寄り添った対応や支援策が求められていると考えます。見解を伺います。

【田中産業労働部長】

 私には経済対策につきまして御質問をいただきました。順次回答を申し上げます。
 まず初めに、このゼロゼロ融資の返済の実情と支援策についてでございます。
 まず、いわゆるこのゼロゼロ融資の実績につきましては、合計でこれまで2万8,774件、3,926億円の利用がされておりまして、本年10月末現在の状況は、件数ベースで申し上げますと、まず借換え等を含む完済が23.8%、件数でいきますと6,839件、そして返済中、または今後返済開始が75.2%、件数でいきますと2万1,636件となっておりまして、金融機関へのヒアリングや、民間の調査結果等を踏まえますと、8割を超える事業者は約定とおり返済できる見込みとされております。
 ただ一方で、完済できず県信用保証協会による代位弁済に至ったものが299件、約31億円、そして当初条件によります返済が困難なため、据置期間延長等の条件変更を実施している件数につきましても、約1,400件に上るなど、依然として大変厳しい状況に置かれている事業者も一定数あるものと、私どももしっかり認識をしております。
 このため県では信用保証付融資全般を借換えできる経営健全化支援資金(新型コロナ向け伴走支援型)等を通じまして、返済負担軽減策を実施するとともに、今月からは、この同じ支援資金制度の中で物価高対策メニュー、これを新たに創設をいたしまして、急激な物価高の影響を受ける事業者の資金繰り支援に取り組んでいるところでございます。
 こうした資金繰り支援に加えまして、県産業振興機構に設置された中小企業活性化協議会等の関係機関とも連携をしまして、事業者の実情に応じた経営改善や事業再生の支援に取り組んでまいります。

【山口典久議員】

 物価の高騰に賃上げが追いつかないことが生活を圧迫しています。コストカット型経済から30年ぶりに改革することが求められていることは、もはや自明のことです。その失われた30年を克服し経済を再生するために、私たちは政治の責任で賃上げと待遇改善を進めることが必要と考えています。
 男女の賃金格差の是正、賃金の底上げについて質問します。
 ジェンダー平等の観点からも男女の賃金格差の是正は切実な課題ですが、県内の実態はどうでしょうか。これまで県は、職場いきいきアドバンスカンパニー認証の取得の促進などを通じて、女性を含めた多様な人材が働きやすい職場環境づくりを進めてきましたが、その成果はどうでしょうか。
 今議会に提出されている補正予算では、女性・若者等の就業環境改善に向けた賃上げや生産性を高める設備投資に取り組む事業者を支援するとして、中小企業物価高騰・人材不足対策業務改善事業費が盛り込まれています。その効果を期待するものですが、男女の賃金格差の厳しい現実を見れば、さらに系統的、本格的な賃上げの支援策の検討など、新たな対策が必要と考えますが、いかがでしょうか。
 産業労働部長に伺います。

【田中産業労働部長】

 本格的な賃上げのための新たな対策についてでございます。
 継続的な賃上げの実現に向けては、適正な価格転嫁、そして生産性の向上など、経済・労働団体などの関係者と一体的に取り組むことが重要と考えております。
 このため県では、これまでもSDGs推進企業登録制度の登録要件に新たにパートナーシップ構築宣言を追加したり、あるいはエネルギーコスト削減促進事業の実施や中小企業融資制度による低利融資などに取り組んできているところでございます。
 また今般、この本定例会に補正予算案で計上いたしました中小企業物価高騰・人材不足対策業務改善事業において、新たに女性・若者等の賃上げや生産性向上を支援する予定でございます。
 さらに今後は、国が総合経済対策に盛り込みました中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金や、人手不足解消に有効な製品をカタログ化した中小企業省力化投資補助事業などの新たな事業につきましても、積極的に御活用いただけるよう、この国の事業も取り込みながら、県の補助制度とも併せて一体的に周知を行う準備を、今、進めているところでございます。
 こうして新たな取組も含め、国や経済・労働団体とも連携しながら、持続可能な賃上げを着実に促進してまいりたいと考えております。以上でございます。

【山口典久議員】

 会計年度任用職員の現状について伺います。働く人の賃金の引上げ、待遇改善を進める上で、自治体、県のできることとして、非正規雇用で働く職員・会計年度任用職員の待遇の改善に率先して取り組むことが求められています。
 会計年度任用職員制度が2020年に始まって3年。県の会計年度任用職員数と正規職員の比率について、会計年度任用職員制度導入時からの経緯と現状について伺います。

【玉井総務部長】

 私には会計年度任用職員に関連しまして御質問をいただきました。
 まず会計年度任用職員数及び比率の経緯と現状についてでございますが、毎年4月1日現在の知事部局における会計年度任用職員の職員数及び職員数に占める割合でございますけれども、制度導入時の令和2年度は1,404人で、全体占める割合は21.5%、令和3年度は1,624人で23.7%、令和4年度は1,607人で23.6%、令和5年度は1,361人で20.8%となっております。令和3年度及び4年度に会計年度任用職員数が増加した理由は、新型コロナウイルス感染症対応のため一時的に多数任用したということによります。
 次に、会計年度任用職員の時給についてでございますが、会計年度任用職員の時給は、職務内容や困難度に応じまして、基本的に六つの区分に分けて任用をしております。現在区分の1、一番低い区分でございますが、958円、それから区分の6、一番上でございますが、こちらは1,235円の時給となっております。
 現在会計年度任用職員の時給報酬を引き上げる補正予算を本定例会に計上しておりまして、区分1では958円から1,035円へ、区分6では1,235円から1,298円へと、6区分それぞれで引き上がる予定でございます。

【山口典久議員】

 会計年度任用職員の時給について伺います。これまでも会計年度任用職員の待遇改善が図られており、また今議会には勤勉手当を支給する条例改正も提出されています。しかし、今の社会情勢を鑑みれば、賃金の抜本的な引上げ、時給1,500円以上を早急に実現することが求められていると考えますが、いかがでしょうか。
 総務部長に伺います。

【玉井総務部長】

 会計年度任用職員の時給の抜本的な引上げに関してのお尋ねでございます。
 会計年度任用職員の給与水準につきましては、地方公務員法の均衡の原則等に基づきまして、従事する職務の内容や責任の程度、県内民間企業の労働者の給与水準等を踏まえまして決定することが必要とされております。
 そのため、本県においては、常勤職員の給与決定があった場合にその状況を考慮し、常勤職員の改定率に準じまして、会計年度任用職員の給与水準を引き上げることとしております。今年度におきましては、給与水準の引上げに加えまして、引上げの時期に関しましても、今年4月に遡及して行う予定としているところでございます。
 また議員御指摘のとおり、令和6年度から、期末手当に加えまして勤勉手当の支給をすることができるよう本定例会での条例改正を提案しておりまして、常勤職員の勤勉手当と同じ支給割合とする予定でございます。これによりまして、区分や勤務条件に違いはございますが、一般的なフルタイム会計年度任用職員で年間約40万円ほどの年収アップ、処遇改善につながるというふうに見込んでいるところでございます。
 今後も会計年度任用職員の給与水準の引上げを含む処遇改善に向けまして、適切に対応してまいります。以上でございます。

【山口典久議員】

 長野県の契約に関して質問します。
 長野県の契約に関する条例では、契約の締結に当たり、持続可能で活力ある地域社会の実現に重要な意義を有することに鑑み、地域における雇用の確保が図られること等、労働環境の整備に配慮しなければならないとしています。
 そして、県が発注する公共工事、業務委託等に従事する従事者の賃金が適正な水準にあることについて、契約の相手方の履行を求めています。これまで、契約に関する取組方針の変更も行われてきていますが、長野県の契約に関する条例制定時からの労務単価の推移について伺います。

【新田建設部長】

 公共工事に関して御質問いただきました。
 県の設計労務単価の推移についてのお尋ねでございます。
 公共工事を発注する際の予定価格算出に用いる公共工事設計労務単価は、国及び県、政令指定都市などが発注する技能労働者の賃金実態を把握する 公共事業労務費調査の結果を基に決定されています。
 長野県の契約に関する条例が制定された平成26年の主要8職種の平均労務単価1万8,250円に対し、令和5年はその約1.3倍となる2万3,175円となっています。この間、労務単価は毎年約3%程度上昇し続けており、特に令和5年の労務単価は前年と比べて6.1%と大幅に上昇している状況でございます。

【山口典久議員】

 いわゆる公契約条例により、公共事業の従事者の賃金や報酬額、労働条件などの遵守などを設定し、契約事項に加えるなど、適正な賃金の支払いに係る動きが全国的に広がっています。
公共事業で適正な賃金が支払われることは、地域における公正な賃金、公正な労働条件をつくり出す上で大きな意義があると考えます。公共事業の従事者に対して、適正な賃金が支払われるための県の取り組みはいかがでしょうか。
 建設部長に伺います。

【新田建設部長】

 適正な賃金が支払われるための県の取り組みについてのお尋ねでございます。
 労働者にとって魅力的で安心できる業界とするためにも、適正な賃金の支払いを実現することは必要であると考えております。このため県では、適正な賃金が確保されるよう、下請け契約の際に労務費などが明示された標準見積書の活用を促進しているほか、技能労働者の就業履歴、経験、これや保有資格などに応じた賃金の支払いにつながる建設キャリアアップシステムの活用を促進するため、建設工事の入札におけるインセンティブの付与や、カードリーダーの設置費用の負担などに取り組んでいるところでございます。
 一方、国においては、下請けとの請負契約の締結の際に、労務費の相場感を与え、廉売行為を規制するに当たって参考指標となる標準労務費の設定と契約当事者への勧告など、適正な賃金の支払いに向け、関係法令の改正などの検討が進められているところでございます。
 こうした国の動向も注視しながら、引き続き適正な賃金が支払われるための取組を進めてまいります。  以上でございます。

【山口典久議員】

 長野県の契約に関してですが、建設業以外の業界でも、入札で採用された事業所は自分が入れた見積りの半額以下だったと。また、他社と比べても飛び抜けて低い見積りで採用されている業者もあると。こういう問題を指摘して改善を求める声もお聞きしています。
 つまり最低制限価格があっても、現場の実態と乖離している、そういう事例もまだまだあると思います。現場の声に耳を傾け、地域における雇用の確保、適正な水準の賃金を確保するために、一層の取組を求めます。

特別支援学級について

【山口典久議員】

 特別支援学級について伺います。  
特別支援学級は、小学校、中学校等において、知的障がい者、肢体不自由者、病弱者及び身体虚弱者、弱視者、難聴者、言語障がい者、自閉症者、そして情緒障がい者に対し、障がいによる学習上または生活上の困難を克服するために設置され、少人数の学級編制、特別な教育課程が認められた特別に編制された学級です。
 長野県では、全体の児童数が減少する中において、小中学校における特別支援学級に在籍する児童数は大幅に増加しています。そして、通常の学級から特別支援学級に移る率が、学年を追うごとに高くなり、全国との差が大きく開いていきます。
 特別支援学級の在籍状況と、全国平均との乖離の理由及び特別支援学級の意義について伺います。

【内堀教育長】

 特別支援学級について御質問を頂戴いたしました。
 特別支援学級の在籍状況と、全国平均との乖離の理由についてでございます。
 本県の特別支援学級の在籍状況は、令和4年5月1日現在、小学校で5,533人、在籍率は5.59%で全国平均より1.45ポイント高く、中学校では3,147人、在籍率は6.08%で全国平均より2.68ポイント高くなっており、小学校よりも中学校のほうが全国平均との乖離が大きい状況であります。
 特別支援学級在籍率が全国平均より高い要因は、本県の通級指導教室の設置率が低く、特別な支援が必要な児童生徒の学びの場は特別支援学級が中心であったこと、また中学段階で全国との差が広がっている主な要因は、本県では通級指導教室を小学校で優先して設置してきたことにあると考えております。
 特別支援学級の意義についてでございますが、特別支援学級は障害による学習や生活上の困難を改善するため、一人一人の教育的ニーズに応じて、指導目標や指導内容を明確にし、児童生徒が自立に向けて学ぶ場であり、重要な役割を果たしていると認識しております。

【山口典久議員】

 特別支援学級の定員は現在1学級8名です。しかし、同じ時間に一人一人が違う学習をして、また障がいの複雑化等もある中で、8人はどう見ても多い。こうした現場の負担増も指摘されています。
 学級編制基準を、現在の8人から6人に改善する。また学級編制を通常の小中学校の複式学級のように2学年以内で行うこと等、教員を増員し、子供の実情に応じた教員配置が行えるように、県独自の対応が必要と考えますが、見解を伺います。

【内堀教育長】

 特別支援学級の教員配置に対する県独自の対応についてのお尋ねでございます。
 特別支援学級につきましては、在籍児童生徒数が年々増加傾向にあることや、障がいの特性の多様化などにより、これまで以上に一人一人に応じたきめ細かな支援が求められていると認識しております。
 議員御提案の県独自の学級編制基準の引下げや、2学年以内での学級編制につきましては、教員配置に係る財源に加え、学級数の増加により特別支援教育の専門的な知識やスキルを持った教員の配置が困難になったり、教室の確保をはじめとする教育環境の整備が必要となる等の課題もあると考えております。
 県教育委員会といたしましては、通級指導教室の増設や、児童生徒支援教員の加配措置、特別支援教育に係る教員の専門性向上などに努めておりまして、それぞれのニーズに応じた適切な指導が行えるよう、引き続き取り組んでまいります。

【山口典久議員】

 特別支援教育コーディネーターは、学校内の関係者や関係機関との連絡調整や、保護者に対する学校の窓口として配置されています。しかし、担任の教師や教頭などが兼任している事例があります。担任の教師は、夕方や夜にも関わるコーディネーターの仕事が加わり、負担が重く、改善を求める声が上がっています。
 文科省の特別支援教育に関する調査の結果では、長野県はコーディネーターの専任が低いとありますが、専任の配置を進めるために、県としての対応が必要と考えますが、いかがでしょうか。

【内堀教育長】

 特別支援教育コーディネーターの専任に向けた県独自の対応についてでございます。
 議員御指摘の文部科学省特別支援教育に関する実態調査における特別支援教育コーディネーターの専任とは、主たる職務としてその役割を担えるよう、学校において授業時間への一定の配慮等が行われていることでありまして、本県の専任化率は、全国平均と比べ小中学校でやや低い状況にあります。
 県教育委員会では、特別支援教育コーディネーターの負担軽減や機能強化に向け、各校で複数指名や校務分掌の軽減等に取り組むよう、様々な会議や研修会等で周知依頼しているところであります。
また、特別支援学校の専門性サポートチームによる小中高等学校への巡回支援の充実に取り組むとともに、特別支援教育コーディネーターだけによらない支援を行うため、複数担任がいる通級指導教室を校内体制づくりや周辺校支援の拠点とする検討も行っているところです。
 なお、授業等を受け持たない完全な専任化につきましては、多大な財源を要するため県独自の推進は困難であり、この点については国に基礎定数化するよう要望をしているところでございます。

【山口典久議員】

 特別支援学級に関わる学級編制の課題について伺います。
 通常の学級に在籍していた児童生徒が特別支援学級に移ると、30人規模の基準を割り、学級数が減少するケースもあります。特別支援学級に在籍する児童生徒は、科目などにより通常の学級での授業を受ける場合がありますが、生徒数の増加等で環境の変化などに影響を受けかねません。これは通常学級で学ぶ児童生徒にとっても影響が出ます。
 こうした場合の対応として、それまでの学級数の維持など、県として柔軟な対応ができないでしょうか。  教育長に見解を伺います。

【内堀教育長】

 特別支援学級と通常学級の学級編制に係る柔軟な対応についてのお尋ねでございます。
 学級編制の基準は、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律により定められているところでありまして、国の基準を超えて、県独自の編制を行うためには、教員配置に係る多大な財源を要するといった課題がございます。
 県教育委員会といたしましては、年度途中に通常学級から特別支援学級へ転籍するなど、学級の児童生徒数に変動があった場合にも、学校の実情に応じて当初の学級数の維持を認め、教員の数を据え置くなど、学級編制に関して弾力的な運用を行っているところです。
 また、特別支援学級と通常学級の児童生徒が共に学ぶことは、多様性を尊重し相互理解を深めるための大切な機会と考えており、適切な学習や交流が行えるよう、集団に適応しにくい児童生徒への支援を目的とした教員の加配も行っております。
 今後とも市町村教育委員会と連携しながら、適正な学級編制やきめ細かな指導体制の維持に努めてまいります。以上でございます。

【山口典久議員】

 長野県が全国に先駆けて実施した信州少人数教育推進事業、いわゆる30人規模学級は貴重な成果を上げて、その後全国に広がっています。この30人規模学級の実施に当たっては、関係者の皆さんの様々な課題を一つ一つ乗り越えて切り開いてきた努力があったと思います。こうした長野県の全国に誇るべき先駆性、取組をまた発揮して、特別支援教育の充実発展を心から望むものです。

水道広域化について

【山口典久議員】

 続いて、水道広域化について伺います。
 2019年10月に改正水道法が施行され、将来的に人口減少に伴う料金収入の減少、水道施設、管路の老朽化の進行や耐震化の遅れ、専門人材の不足などが見込まれるとし、安心・安全の水道の維持、持続的な供給体制のために広域化などが打ち出されました。
 これを受け県は、長野県水道ビジョンを今年3月に改定し、長野県水道広域化推進プランとして位置づけました。改定されたビジョンは、広域連携の推進等を示し、県内を九つの圏域に分けます。そして、いずれも圏域単位の事業統合を目指しつつ、一部の事業者の事業統合を先行して実施することと、事務の共同化、この二つの方策により、段階的に広域連携を実施するとしています。
 上田長野地域の広域化は、2021年に長野市、上田市、千曲市、そして坂城町及び県で、上田長野地域水道事業広域化研究会が設置され、広域化についての検討が開始されました。研究会では広域化の在り方として、事業統合を中心に研究を進めています。そして、上田市染谷浄水場の更新、長野市往生地と夏目ケ原浄水場の廃止、災害時の浄水場間のバックアップ体制、送水幹線の二重化等に取り組むとしています。  そして、この統合により50年間で669億円の効果額があり、水道の供給単価は全ての事業体で、単価上昇の抑制効果があるとしています。
 以下伺います。
 かつて工業用水では過大な水需要の予測がありました。過剰な設備投資が各地で行われた例があると聞いていますが、上田長野地域における上水道について、そうした検証は行われているのでしょうか。
 またこの先の給水人口の減少、管路や浄水場など老朽化した施設の更新、そして水道料金などが試算されていますが、このシミュレーション作成の経過について、どこが作成し、その結果についてどのように検討されたのか伺います。
さらに、豪雨や渇水など、気候変動に伴う自然災害が多発化、重大化しています。また、諸物価の高騰、人手不足など、経済情勢が極めて不安定になっています。こうしたリスクについて、上田長野地域広域化に当たりどのように検討されているのでしょうか。

【吉沢公営企業管理者】

 上田長野地域の水道広域化に関し、御質問いただきましたので、順次お答えをいたします。
 まず、水需要の推計を含めたシミュレーション等についてです。
 水道施設や管路の整備については、当地域でも事業者において将来の水需要を考慮し、計画的に進めてきたと認識していますが、人口減少が本格化をし、50年後には給水人口が36%減少する見込みであることを考えますと、現状のままでは過大になる設備が出ることが想定されます。
 そうした状況も踏まえ、令和3年度には長野、上田、千曲の3市、坂城町、県企業局で構成する上田長野地域水道事業広域化研究会において、50年後の水需要推計に基づき、水道施設の最適配置や効率的な事業形態、広域化による財政効果を試算するためのシミュレーションを委託実施しました。
 この調査結果も踏まえ、事業統合による高低差を利用した一体的水運用や施設の統廃合による効果、送水幹線の二重化による災害対策、専門人材の確保などの観点から、研究会で広域化に関する検討を行ってきているところです。
 また物価高騰など経済情勢の変化や地域の地理的状況なども踏まえ、シミュレーションで示された施設整備については、今後の検討に向け、現在、再調査を実施しているところでございます。

【山口典久議員】

 既に水道を広域化した団体では、企業団議会が年2回程度、それぞれ1時間程度の審議というところや、広域化により地元の議会の関与がなくなり事業が見えなくなったという団体もあると聞いています。地域の実情を踏まえ、住民から信頼される水道をつくるには、住民や議会の声を反映させる体制、仕組みが重要です。上田長野地域の検討に当たり、どのように考えているのでしょうか。
 公営企業管理者に伺います。

【吉沢公営企業管理者】

 次に住民などの声を反映する仕組みについてです。
 上田長野地域の広域化検討に当たっては、検討状況の説明や御意見を伺う場として、各市町で住民説明会や議員勉強会などを実施してきており、住民説明会についてはこれまで83回、約1,230人の皆様に参加をいただいております。
 広域化の実施に向けては、今後運営体の組織体制や業務財政運営などについて、さらに検討を行う予定ですが、そうした中で、住民の皆様への情報提供や広報、あるいは意見反映の仕組みについても検討し、安全で安心、そして安定した水道の供給に向け取り組んでいくことが必要と考えております。以上でございます。

【山口典久議員】

 長野県水道広域化推進プランについて阿部知事に質問します。
 地域の実情に合わせて、給水計画の策定、清浄、低廉、豊富な水の供給は、改正水道法でも位置づけられている国や自治体の責務です。長野県の水道事業は、地表水、深井戸、湧水、浄水受水等水源が多様であり、それは各圏域によっても大きな違いがあります。浄水場や配水池の数は、長野県は全国一多く、小規模な施設設備が多数点在しています。
 私は、それは長野県の水道が住民に身近であるということ、地形や気候などそれぞれの条件を生かしてつくってきた長い間の住民や自治体の営みの歴史であると考えます。長野県の水道は効率が悪いと簡単に片付けるわけにはいかないと考えています。
 長野県水道広域化推進プランでは、効率化が大きな柱とされていますが、広域化を進めるに当たり、長野県の特性をしっかり踏まえるべきと考えます。
 私は、上田長野地域水道事業広域化研究会が11月に長野市で開催した「水道の未来を考えるシンポジウム」に参加しました。この間、住民の間では、広域化によって水源が変わればおいしい水が飲めなくなりはしないか、水道料金がどうなるか心配だなど、様々な疑問や不安がありますが、それらの疑問や不安の声はほとんど取り上げられず、広域化、ダウンサイズありき、上からの押しつけとも言える国の姿勢を強く感じました。こうしたやり方で、県下各地の広域化が進められていくことになりはしないか、私は危惧しています。
 水は命です。水道に関することは、料金も施設設備も自分たちで決める、自治が基本であると考えます。水道広域化は、あくまでも住民への丁寧な説明と合意、住民参加を追求し、そして関係市町村の主体性や意向を十分に尊重すべきと考えますが、いかがでしょうか。阿部知事の見解を伺います。

【阿部知事】

 私には、水道事業の広域化の進め方について御懸念を頂戴したところであります。
 まず、私どもは国の下請け機関ではありませんので、県としての考えはしっかり持って取り組んでいきたいというふうに思います。
 そういう中で、やはり人口減少、施設の老朽化が進む中で、住民の皆様方に安全・安心な水を継続的にお届けしていくためには、水道事業の広域連携を検討していく必要があるというふうに思っております。
御質問にもありましたように、本県は地理的条件から小規模な水道も多く、また水道事業者ごとに施設の配置や管理の状況、また水道料金等も異なっておりますことから、その連携の在り方は必ずしも一律のものではないというふうに思っております。このため圏域ごとに広域連携検討の場を設置をさせていただき、市町村と水道事業者の御意向も踏まえ、地域の実情や課題に応じた検討を進めてきているところでございます。
 もとより広域連携を進めていくためには、住民の皆様方の御理解、御協力を得るということは不可欠だというふうに思っております。企業局が参画する長野上田圏域では既に住民の皆様への説明会を行ってきておりますが、今後、他の圏域でも地域における検討状況などを住民の皆様方に説明していくことになると思います。
 県としても、地域における丁寧な合意形成が図れるよう支援していきたいと考えております。以上です。

【山口典久議員】

 水道の広域化を進めるに当たり、例えば住民説明会や様々な取り組みがあると、今、御答弁もありましたが、私はまだまだ、私自身いろんなところに参加していますが、十分ではないと思っています。どう住民参加を促し、進めていくのか。行政の側の工夫や取り組みが、その強化も求められていると思うわけであります。
 ほかにも、この水道広域化には様々な課題があります。後の歴史の検証に十分耐え得る議論と選択が行われるように、私たちも取り組んでいくことを申し上げて質問を終わります。

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