2024年9月定例会 藤岡義英議員一般質問
農業支援策について
- 【藤岡義英議員】
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日本共産党県議団の藤岡です。
最初に、農業政策について幾つか質問いたします。
まず、米不足の問題について質問します。
先月9月まで、大変深刻な状態が続いていました。子育て世代や年金生活者にとって、主食の米が手に入るかどうかは死活問題です。
今回の最大の原因は、米の供給量が少なかったことです。農水省の発表では、今年6月末の米の民間在庫は、前年比41万トン減で、過去最低です。米の業者間の取引価格は前年の2倍近くに高騰しました。
日本共産党は農水省に対し、備蓄米の放出や流通の目詰まりの解消など、緊急対策を求めました。
しかし、農水省は新米が出回れば解消すると、緊急対策を行わず、一層深刻化しました。政府に対し備蓄米の活用を含め、生産者団体や流通小売業界と協力して緊急対策を求めるべきだったと考えますが、いかがですか。また、県として何らかの対応を取られたのでしょうか。
- 【農政部長】
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私には農業支援策について御質問をいただきました。
まず、今回の米事案への県の対応及び国の対応に対する所見についてのお尋ねです。
県では、今回の事態を受け、供給の実態を把握するため、県内の主要な卸売業者等へ現状や今後の見通しの聞き取りを行い、加えて早期に店頭にお米が並ぶよう、主食用米の円滑な供給に向けた最大限の取組を要請をいたしました。
なお、備蓄米は年間を通じて米の供給の不足が見込まれる場合に放出が行われるものであり、今回はそのような事態に該当しなかったものと認識しております。備蓄米の放出は、民間流通に影響を及ぼす懸念があることから、国における今回の検証を踏まえた議論が必要であると考えております。
- 【藤岡義英議員】
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こども食堂フードバンクの備蓄米の無償交付制度が10か所だった申請窓口が全都道府県に設置、年4回だった申請受付が通年受付に改善されました。私たちも制度の拡充を求めていましたので歓迎するものですが、申請書類が多過ぎる、お米を直接取りに行かないといけない、一度にもらえる米の量がとても少ないなどの現場の声があります。そうした声に耳を傾け、国に対し改善を求めてほしいと思いますが、いかがでしょうか。
- 【農政部長】
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こども食堂等への国の備蓄米交付制度に対する改善等についてのお尋ねです。
国では、こども食堂等に対する政府備蓄米の無償交付を2020年度から始めており、去る9月2日からは、物価高騰対策の一環として、申請の受付箇所や時期の拡充などが図られたところでございます。
しかしながら、こども食堂等からは、申請から交付まで時間がかかる、書類が多く手続が煩雑、1回の量が少ないなどの声をお聞きしております。
県といたしましては、こうした現場の声を機会を捉えて国へ伝え、活用しやすい制度となるよう取り組んでまいります。
- 【藤岡義英議員】
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今回の深刻な事態に陥った原因、実態把握は国が行うわけですが、二度とこのような事態にならないように、県独自の対応を検討すべきと考えますがいかがでしょうか。
- 【農政部長】
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米不足が起こらない県独自の対応についてのお尋ねです。
今回の米不足は、高温による品質低下で流通量が少なくなったことが要因の一つであることから、県としては、引き続き安定生産に向けた取組を一層進めることが重要と考えております。このため、生育ステージごとの適正な水管理や刈り遅れによる品質低下を防ぐための適期収穫など、技術対策を徹底してまいります。
また、南海トラフ地震などの災害に備えて、米の購入が一時的に集中したことも要因として考えられていることから、日頃から一般家庭での災害に備えた食料備蓄が進むよう、関係機関とも連携し積極的に呼びかけてまいります。
- 【藤岡義英議員】
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スマート農業について質問します。
米農家さんからは、AIや自動運転機能のついている農業機械は高過ぎて手が届かない。実際そうした機能のある機械を購入した人も、そんなに効率が上がらないからその機能を使っていない。リンゴ農家さんに至っては、果樹ではスマート農業なんて全く関係ないと言われました。長野県など中山間地域の多い場所での活用や、利益を出す仕組みは未確立で、「もうかるのはメーカーだけ」との指摘もあります。
そこで質問します。スマート農業推進において、県は目標数字を掲げておられるのでしょうか。導入していない農家さんの声を把握しているでしょうか。スマートにできない農家さんの要望に、きめ細かく対応することこそ必要ではないでしょうか。
- 【農政部長】
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スマート農業推進における県の対応についてのお尋ねです。
第4期食と農業農村振興計画において、10ヘクタール以上、大規模水稲経営体におけるスマート農業技術の導入率を、令和3年度の23%から令和9年度に50%まで向上させる目標数値を掲げております。
推進に当たっては、スマート農業技術の普及を図る専門担当者を配置するとともに、農家からの相談に当たる窓口を農業農村支援センターに開設するなど、体制の強化を図ってまいりました。
その中で、同じような機種があり違いが分からない、機械が高く導入ができないなどの声をお聞きしたことから、様々な機械の性能や操作を体験できる現地実演会等を、昨年度は70回以上開催するとともに、補助事業のメニューを拡充し、支援を行っているところでございます。
今後とも現場の声に耳を傾け、一つ一つの課題に対応しながら、スマート農業の推進を図ってまいります。
- 【藤岡義英議員】
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農業共済収入保険について質問します。
今年の6月、佐久市、御代田町、軽井沢町でひょう害が発生し、レタス、リンゴ、桃、プルーンなどに被害が出ました。年々異常気象による農業被害が相次いでいます。ある桃・プルーンの農家さんは、4年前から農業を始めたが、ひょう害と凍霜害で3度の被害に遭ったと訴えられました。
自然災害による被害があったとしても、収入や農業損失を補塡する保険・共済制度がますます重要だと感じています。加入者を増やすために、全国10の都県で収入保険の保険料の補助制度が実施されています。
長野県でも導入を検討していただけたらと思いますが、いかがでしょうか。また、県として加入促進のための施策を講じるべきと考えますが、いかがでしょうか。
- 【農政部長】
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農業共済制度加入促進に向けた施策についてのお尋ねです。
近年頻発する春先の凍霜害や局地的な大雨、降ひょうなどの自然災害、農業者の経営努力では避けられない価格低下などの不測の事態に備えて、農業保険制度への加入が重要と考えてございます。
このため、研修会等の機会を通じて加入を促した結果、本県における令和6年の収入保険の加入件数は3,564件となり、令和5年に比べ16%増加しております。
県では、安定的な農業経営のために、共済掛金の補助という形ではなく、引き続き市町村や農業共済組合などと連携しながら、様々な機会を捉えて農業者の経営リスクに対する備えの意識を高め制度加入の促進に努めてまいります。
- 【藤岡義英議員】
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立科町のリンゴ農家さんのお話を紹介いたします。お孫さんが約4年前に引き継がれたそうなのですが、そのときには親元就農への支援策はなく何の補助も受けられなかった。さらに機械は三、四十年前の古いものなので、更新したいのだが、そうした更新への補助もなく大変だとのことでした。
新規就農者など新しく機械を購入する場合は半額の補助が出ますが、機械を更新するときには一切出ません。農業機械もどんどん価格が上がり、なかなか更新できずにいます。機械更新への補助制度も検討すべきではないでしょうか。
また、親元就農の支援策として、経営発展支援事業が令和4年度から始まったと聞いております。このことも含め、親元就農への支援策について伺います。以上、農政部長にお聞きいたします。
- 【農政部長】
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農業機械の更新への支援についてのお尋ねでございます。
一般的に農業機械の導入に対する補助事業は、新規就農者や経営規模の拡大等に伴うものを支援の対象とし、単純更新は対象としておりません。単純更新の支援としては、制度資金の活用などの提案及び利子補給を行っているところでございます。 また、親元就農に対しては、経営発展のための機械や施設の導入に対する補助、早期の経営確立を支援する資金などの国の支援策に加え、県が出資いたします長野県農業担い手育成基金において、1人当たり30万円を上限とする給付金事業により支援をしているところでございます。
今後も農業者の状況に応じて、補助事業や制度資金の活用などにより支援をしてまいります。
以上でございます。
- 【藤岡義英議員】
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農産物は商品ではない。その供給が止まると、しばらくして人が死にはじめるからである。そんな商品はほかにはない。金さえ出せば市場で調達できるただの商品だとは考えてはいけない。信濃毎日新聞で、思想家の内田樹氏が「今日の視角」というコラムで述べておられました。
「新米が収穫されれば市場は落ち着くから」と済ませてはいけません。政府は食料の自給率向上と安定供給に責任を持つべきです。県も独自の未然防止策の検討を要望いたします。
先ほど農政部長からも御答弁がございました。令和6年の収入保険の新規増加件数で、長野県は全国1位です。ただ、令和5年度の加入経営体数の目標には達していないそうです。
全国農業共済組合連合会が、全国で10万件の加入を実現させようと各都道府県に目標を提起しています。ちなみに、保険料の補助制度を実施している10の都県のうち、六つの県が目標を達成しています。加入促進のため、補助制度の導入の検討を重ねて要望いたします。
リンゴ農家さんから防霜ファンの補助、国から2分の1、今年度から県からも8分の1出ることになりとても感謝されました。今度はぜひ防ひょうネットの補助の拡充もと要望がありましたので、現場の声として検討を要望いたします。 先祖から土地を受け継ぎ、さらに他の人の農地も受け持っている、自分たちが農業をやめてしまえば、地域の田畑が荒れてしまうとの思いで使命感を持って頑張っている、既存農家も応援をと要望されました。経営規模に関係なく、農地農村を守り奮闘する農業者への支援を手厚く、きめ細かくお願いしたいと思います。
林業政策について
- 【藤岡義英議員】
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林業政策について質問いたします。
佐久管内の森林は主伐・再造林の時期を迎え、木材生産量は10圏域で最も多く、先進的だとのことでしたので、事業者さんからお話を伺ってきました。現在、佐久地域で伐採されたカラマツの丸太のほとんどが、東信木材センターに集中的に集められ、その9割が、富山、山梨、千葉と県外へ合板製品用として流れています。川上については、木材を供給できる状況ですが、川下については、製材工場が小規模な事業所が多く、機械も古く、大きな案件が受けられない状況だとのことです。
佐久で切ったカラマツを建築材として使用する場合、県外で製材された製品を取り寄せることになり、流通コストで価格が上がってしまうとの説明を受け、県産材の地産地消がまだうまく進んでいないのかなと感じました。
林務部は2016年、県産材を活用して地域活性化を図るため、「信州の木自給圏構築県域検討会」を設置しています。川上から川下までの関係委員が、県産材活用の現状や課題、解決方法を話し合い、17年度に報告書がまとめられています。検討結果が現在どのように生かされているのでしょうか。
- 【須藤林務部長】
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私に御質問を頂戴いたしました。まず、信州の木自給圏構築でございます。
県では平成28年度から29年度にかけまして、県内全体及び5流域圏ごとに森林林業・木材産業 に関わる地域内経済循環の現状把握と課題分析を行い、自給圏の構築に向けた取組を検討したところです。
その中では全県的な取組として、ICTの活用による生産性の向上や、県産材の強みを生かした販売戦略等を進めることが挙げられておりました。
こうした点について、これまで県としては、スマート林業技術の実装支援やICT人材の育成、信州ウッドコーディネーターのマッチング活動による千葉県内の小中学校への県産カラマツの採用などの県産材の販路拡大などに取り組んでまいりました。
また各流域圏については、例えば千曲川上流地域においては、皆伐の推進と伐採から造林までの一貫作業システムの構築、適正に管理された森林から生産される森林認証材を軸とした販売戦略の策定などの対応策が求められ、現在の主伐・再造林の先進地域としての取組に生かされているところであります。
今後は、当時検討された課題解決に向けた取組を進めつつ、木曽谷伊那谷フォレストバレーの人材育成やイノベーションの創出と相まって、森林林業、木材産業の活性化に取り組んでまいります。
- 【藤岡義英議員】
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信州カラマツは集成材にすることで、日本一強度のある木材になり、鉄筋でなくても、非住宅の建築物でも十分通用します。しかし、まだあまり普及が進んでいません。普及啓発と日本一の信州カラマツの活用推進を進めるべきです。
また、県内にももっと集成材製造工場ができるよう、その研究、検討が必要とも考えます。林務部は、木材加工事業者における水平連携や、川上から川下までの垂直連携のサポート、事業者の営業力強化、安定した県産材の流通体制を構築するとしていますが、信州カラマツのほとんどが県外に流出している現状をどのように打開し、信州カラマツの地産地消を図るのでしょうか。
- 【須藤林務部長】
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長野県産カラマツの利用促進についてでございます。
長野県産カラマツは全国的に高い評価を受けているところでありますが、付加価値を高めた上で供給していくためには、県内の製造工場で加工しをしていくというのが望ましいというふうに考えており、新技術に対応した最先端機械の導入や、事業規模を拡大する木材加工施設への支援を行っております。
今後伸びが期待される非住宅分野への活用も大変重要と認識をしており、強度のある長野県産カラマツの特性を生かした防火基準の対応が求められる中高層建築物等への耐火集成材や、水平方向の構造材のツーバイテン(2×10)材など、需要拡大を一層進めてまいりたいと考えております。
県としては、こうした県産材の製材加工施設への支援に加え、県有施設における県産材の率先利用等により、県内外での長野県産カラマツのさらなる利用促進に努めてまいります。
- 【藤岡義英議員】
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佐久の林業事業者が、昨年から農業経営会社と冬場の農閑期にカラマツの植林の事業契約を結びました。林業側は労働力不足解消と、農業側は雇用安定につながったとウィン・ウィンになった。昨年は7人、今シーズンは12名が従事してくれるそうです。1本幾らと本数の出来高制で、工期は冬中なので、無理なく自分たちのペースで、素人さんでもある程度できるので好評だったとのことでした。
さて、主伐と植林と進めば、次の課題が下草刈りです。植林した分だけ、下刈りしなければならない面積が増えます。真夏にぎらぎら光る日差しを受けながら行うとてもハードな作業ですが、佐久ではなんと、下刈りを専門にやってくれる会社ができて、そこに下請けをお願いしているそうです。植林、下刈りと造林事業で分業が進み、佐久の林業会社さんは、さらに素材生産の量を増やすことができるとのことでした。
林業会社の方からは、「今後、女性労働者も従事できるよう、簡易トイレを現場で設置したい。とんでもない山奥まで作業に行くので、トイレに行って帰ってきたら1時間かかってしまう。現状はこれまでの補助のお金では足りず会社の持ち出しになるので、補助を拡充してほしい。」また、「植樹、地ごしらえ、下刈りなど、一番きつくて大変な造林事業を行う事業体が、人を増やせるような特化した支援補助制度が欲しい」と要望されました。いかがでしょうか。
山が比較的なだらかで、冬もあまり雪が降らず、植林ができる恵まれた佐久特有の取組ではありますが、長野県内でも広げていければと思います。造林事業の分業を担う事業体の育成や支援などを検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。以上を林務部長にお聞きします。
- 【須藤林務部長】
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造林業に特化した人材確保の支援策等についてでございます。
県では主伐・再造林の加速化に向け、植栽や下刈り等の造林事業の従事者の確保育成を推進する必要があるため、令和5年度からは、林業労働力対策事業予算を令和4年度と比較して倍増して取り組んでいるところであります。
具体的には、移住者や新規学卒者、転職者への支援金の支給による新規就業者の確保や、圏域を越えた林業労働力等の移動に要する経費を支援することにより、不足する林業労働力等の解消に取り組んでおります。
また、他産業からの一時受入れ等に取り組む事業者に対しましては、作業の際に必要となる安全指導員の配置への助成や、令和6年度からは、就業環境の整備についても短期雇用を支援対象に拡充するなど、一時的な雇用による林業就業者の確保にも努めております。
なお、造林を担う事業体の育成や支援として、造林事業を新たに開始する事業体に対しましては、操業に必要な資機材等の導入経費の補助も実施しているところでございます。
引き続きこうした支援策の周知を図りつつ、施策の成果や事業体からの意見要望等も踏まえ、造林を担う事業体の人材確保支援に努めてまいります。
以上でございます。
- 【藤岡義英議員】
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林業政策については、「県内で切った木は県内で加工して県内で流通させる」ように、日本一の信州カラマツが県内で積極的に活用されるシステムの構築を早急にと要望いたします。
信州F・POWERプロジェクトについて
- 【藤岡義英議員】
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次に、信州F・POWERプロジェクトについて質問いたします。
この事業はこれからどうなるのか。この間、林業関係者、林業研究者、木質バイオマス発電事業関係者などから御意見をいただいてきました。どの方からも、厳しいのではないかとの御指摘をいただいています。
そこで幾つか質問いたします。
プロジェクト始動から発電施設操業開始までの8年間に多くの林業関係者から、この発電規模は大き過ぎるとの指摘がありました。日本森林学会においても、2016年頃から未利用材が安定的に供給することが困難になるのではとの懸念が出されていました。議会でも、適正な規模にすべきではないかと議論をしてきました。全国に木質バイオマス発電施設が乱立し、燃料材の確保が困難になるということが早くから心配されていました。
規模の縮小を検討する機会があったはずなのに、どうして大規模発電に固執したのでしょうか。これまで県は規模の是非について議論されてこなかったのでしょうか。
- 【須藤林務部長】
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F・POWERプロジェクトに関しまして御質問を頂戴いたしました。
まず、F・POWERプロジェクトに係る発電施設の規模についてでございます。
プロジェクトに関わる事業につきましては、計画の策定段階から県をはじめ東京大学や信州大学農学部及び工学部の専門家の方や、中部森林管理局長、塩尻市副市長などが参画した信州F・POWERプロジェクト推進戦略会議において、相当な期間を費やして様々な検討、分析がなされたところであります。
発電施設の規模については、こうした議論や発電用原木の生産見込み、一定規模の施設とすることによる発電効率性の確保などの観点を踏まえた上で、事業主体において経営判断として決定したものと承知をしております。
- 【藤岡義英議員】
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発電施設の操業が開始されてから、県は毎月、チップ材の供給量の報告を受けていました。一方、県議会に対しては、どれぐらい供給されてきたのかを質問しても、「民間のことだから」と情報開示されませんでした。
県は、チップ材が集まらず深刻な経営状況であることを把握していたにもかかわらず、結果として征矢野建材が民事再生法の適用を申請するところまで改善させることはできませんでした。需給調整会議やプロジェクトチームが組織されて対応されていましたが、なぜこのような事態となったのでしょうか。
- 【須藤林務部長】
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F・POWERプロジェクトに係る現状のこのようになった要因についてでございます。
プロジェクトに係る事業に関しては、木材産業や木質バイオマス発電事業を取り巻く全国的な動向として、令和3年度から生じた、いわゆるウッドショックによる世界的な木材需給の逼迫があったほか、近年の住宅着工戸数の減少による木材生産への影響、バイオマス用材の流通における製紙・パルプ用材との競合など、必要な原木を安定的に確保する上で、厳しい状況が続いているものと考えております。
また、このプロジェクトにおいては、征矢野建材が生産する製材端材を発電用燃料材として活用するスキームとしておりましたが、事業主体において、市場調査や推進戦略会議の議論を踏まえた上で、無垢フローリング材を主力製品として設定したものの、その後の品質の安定したプリント材の普及等の市場動向の変化により、販路拡大が思うように進まない状況にあったため、燃料材の安定供給に影響が生じたものと認識をしております。
- 【藤岡義英議員】
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昨年度に未利用材等活用システム構築支援事業、約6,000万円。また、今回補正予算で、地域森林資源利活用システム構築支援事業、約4,000万円が提案されていますが、これらの合計、約1億円の事業によって、新たにどれくらいのチップ材の供給量を見込んでいるのでしょうか。以上を林務部長にお聞きします。
- 【須藤林務部長】
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今回補正予算で計上しておりますものも含めた燃料材の供給見込みについてでございます。
昨年11月補正予算による未利用材等活用システム構築支援事業及び本定例会に提案をさせていただいております地域森林資源利活用システム構築支援事業については、いずれも、林地残材の活用に向けた新たなサプライチェーンの構築を目指すものでございます。
取組が本格的に運用された場合において、1事例当たり約2,000立方メートル、合計5事例で約1万立方メートルの供給量の増加を見込んでおります。
また、これらの事業においては、補助事業による取組にとどまらず、広く県内の林業・木材産業の事業体に好事例を横展開することを事業目的としており、今年1月には、事業者や市町村など92団体に御参加いただき、上田市で主伐・再造林の推進に向けた林地未利用材活用ミーティングを実施し、事業者間の新たな顔の見える関係性づくりを進めたところであります。今月10日にも、立科町で林業・木材産業 関係者を対象に、未利用材活用に向けた現地研修会の開催を予定しております。 県としてはこうした取組を通じて、この動きを県内に波及させることにより、木質バイオマス発電はもとより、林業・木材産業全体の活性化につながるよう取り組んでまいります。 以上でございます。
- 【藤岡義英議員】
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征矢野建材はソヤノウッドパワーに対して、供給する燃料チップが一定量に達しない場合に補償金を支払う契約を交わしていましたが、民事再生手続の中でこの契約を解除しています。ですので、引き継いだ綿半建材は、そうした補償金を払う義務はありません。今後、発電施設へのチップ材の供給量が不足し稼働状況が悪化すれば、いよいよソヤノウッドパワーの経営が心配されます。
年間発電施設が必要とするチップ材は約14万トン、これは18万立米に相当しますが、その量は、長野県の令和4年の年間木材生産量56万3,000立米の約32%に相当します。さらに県内には既に4か所の発電施設があり、合計で年間25万立米必要で、現状では6万立米が不足しています。
そのような膨大な量のチップ材の安定供給は可能なのでしょうか。このままではソヤノウッドパワーは、事業の継続は難しいと感じていますが、いかがでしょうか。知事に御所見をお聞きします。
- 【阿部知事】
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私にはF・POWERプロジェクトに関連して、木質バイオマス発電用の燃料材確保についての所見という御質問を頂戴いたしました。
バイオマス用燃料材につきましては、昨年の状況として、県内の生産量と県内の発電施設の需要量との単純計算で約6万立方メートルの需要超過というふうにされております。
バイオマス用材は、県をまたいで広域でも流通しておりますので、個別の発電施設においては県外のチップも活用している事例もありますので、あくまでも単純計算ということでございます。令和5年の県内のバイオマス用材の生産量は、19万立方メートルという状況であります。これは令和4年、対前年が16.2万立方メートルでありますので、約2.8万立方メートル増加しております。令和2年が10.4万立方メートルでありますので、その当時と比べますと、3年間で約8.6万立方メートル増加をしているということで、近年増加傾向にあるところでございます。
バイオマス用材の原料となりますC・D材の利用割合を先進県並みに伸ばすことができれば、需要量を上回るC・D材の生産ができるポテンシャルがあるというふうに考えております。
県としては、これまでも原木の安定供給等様々な取組を行ってきたわけでありますけれども、林地残材のさらなる活用を図っていきたいというふうに思っておりますし、またC・D材につきましては、いわゆるA・B材の増加に伴って生産をされてまいりますので、再造林経費の補助の上乗せ、あるいは林業の担い手対策、こうしたことによりまして、主伐・再造林の一層の推進を図っていきたいというふうに思っております。こうしたことを通じて、県内全体の燃料材の安定的な確保に向けた取組を進めてまいりたいと考えております。 以上です。
- 【藤岡義英議員】
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知事にはソヤノウッドパワーの所見についても先ほどお聞きしたので、もし答えていただければと思います。
県はこれまで、征矢野建材に約23億8,000万円を補助し、ソヤノウッドパワー社に約1億円を無利子融資しました。さらに1億円の支援事業を行い、チップ材の安定供給を目指すとしています。今後さらに税金が投入されることが予想されます。 一方、征矢野建材の民事再生では、約67億円の債務のうち40億円弱が返済されませんでした。「県が主導したプロジェクトだ。」ある債権者は、F・POWERプロジェクトをそう表現。明確な謝罪や補償がなく、「県は責任を真摯に受け止めていない」との新聞報道がありました。
F・POWERプロジェクトのつまずきの原因は、主にはウッドショックとのことでありますが、ほかの県内の二つの発電施設については、ウッドショックの中でも苦労しながら必要なチップ材を確保し、経営を続けてきたと関係者が話されています。
一番の原因は、ウッドショックではなく、やはり規模が大きすぎたことだと言わざるを得ません。知事には責任があることを強く受け止めていただきたいと思います。県産材の地産地消を大いに推進することを柱にしながら、木質バイオマスについてはこれまでも提案してきましたが、小規模分散型で、発電よりも熱利用を最優先に進めていただくことを要望したいと思います。
- 【阿部知事】
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信州F・POWERプロジェクトについては、私どもとしても、補助金を執行している立場としても、そして林業振興を図る立場としても、これまで県としてできる限りのことを最善を尽くしてきております。引き続き、このプロジェクトが所期の目的を達成できるように、我々も事業者に最大限協力をしていきたいというふうに思っております。
ソヤノウッドパワーに関しましては、我々も原木の安定供給に向けた調整であったり、素材生産の増加への取組といったようなことをこれまでも行ってきたところであります。そういう意味で、先ほどから申し上げておりますように、この燃料材の安定的な確保、これは県全体としてしっかり取り組むべきテーマでありますので、こうしたことを通じて、我々長野県としてこれまで取り組んできたことを、着実に成果が上がるような事業になるように取り組んでいきたいというふうに思っています。
引き続き我々としては、県としての関わり方をしっかり認識しながら、このプロジェクトに向き合っていきたいというふうに考えております。
以上です。
- 【藤岡義英議員】
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県産材を県内でどう生かしていくのか、木質バイオマスをどう進めていくべきか、引き続き委員会などもございます。議論を皆さんと一緒に深めていきたいと、このことを申し述べさせていただきまして、私の一切の質問を終わります。