日本共産党長野県会議員団

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議会質問

2024年9月定例会 山口典久議員一般質問

  1. 公益通報制度について
  2. 観光振興税について
  3. 子どもの権利の保障について

公益通報制度について

【山口典久議員】

 日本共産党県議団の山口典久です。
最初に、公益通報制度について質問いたします。
組織内の不正や不祥事に対し適切な対応を行い、また、通報者を守るための公益通報制度ですが、他県において通報者の人権や生命に関わる事案が生じ、社会問題になりました。
公益通報制度がふさわしくその役割を発揮するために、以下質問いたします。
長野県では、職員等公益通報制度が平成16年に施行されました。公益通報の対象として、県職員等の職務上の行為が、1、「法令 等に違反している、又は違反しようとしていると思料する場合」、2、「人の生命、身体、健康等に対し、重大な危険性を及ぼすおそれがあると思料する場合」としています。
この制度設立の経過と現在に至るまでの通報件数や対応結果について伺います。

【渡部総務部長】

 私には、公益通報制度についてお尋ねを頂戴しております。
まず、設立経過とこれまでの通報件数、対応結果についてでございます。
県組織内部の通報体制を構築するため、平成15年度に長野県職員等公益通報制度を創設いたしました。平成29年度には、早期通報、発見により、不適正事案の芽を早い段階で摘むこと。職員の相談や通報しやすさの向上を目的に、改善や職務上疑義のある行為や事案にも対処できるよう、職場等における相談・提案制度として再編拡充したところでございます。
本制度では、事案の内容に応じて、ブルー、イエロー、レッドフラッグの3段階で相談・提案や通報ができる仕組みとし、公益通報者保護法に基づく公益通報制度は、レッドフラッグと位置づけて対応することとしております。
制度再編以降、20件の取扱いがあり、事務処理の是正や職場環境の改善が必要なイエローフラッグは19件、公益通報制度レッドフラッグにつきましては1件で、先般パワーハラスメント行為と認定し、懲戒処分を行ったところでございます。

【山口典久議員】

 通報の窓口が設置されても、通報者の意思が尊重され、通報として的確に対応されることが必要です。例えば、通報が必要な検討もされずにないがしろにされたり、発信者が特定されたり、誹謗中傷や処分を受けるなどの不利益を被ることを防ぐために、また、必要な救済措置等、運用面においてどのような対策がなされているのでしょうか。
また、知事や副知事が通報の対象となった場合や、組織的に行われている行為で、知事副知事が認識している事案の場合は、知事や副知事が関与せず独立して対応することが必要と考えますが、現在の体制について伺います。

【渡部総務部長】

 通報者の意思が尊重されるなど、制度運用面での対策についてのお尋ねでございます。
通報者は、通報内容が確実に受理され、適切な調査に基づき公平公正な調査結果を公表されること、また、通報者本人に不利益が生じないことなどを望んでいるものと考えます。
こうしたことから、情報漏えいやプライバシー保護の観点から、限られた職員で対応すること、通報者本人を含め関係職員に対して十分な聞き取りを行うこと、外部有識者意見も踏まえた客観的な確認や調査結果を取りまとめることなど、調査等に当たり通報者に寄り添った対応を行っているところでございます。
また、知事や副知事が対象となった場合の体制とのお尋ねでございます。
組織的事案や知事、副知事の関与が疑われる事案に対しましては、2名の弁護士から成る第三者機関となります長野県職員等公益通報委員への通報が可能となっており、委員は独立した調査が必要と判断した場合には、自らが調査を行うことができる制度としてございます。

【山口典久議員】

 県外のある金融機関が行った社内の意識調査では、組織内の不正や不祥事などがあっても、報復などへの不安で通報できないという答えが少なくありませんでした。公益通報制度がふさわしく機能するために、職員の意見 や提案など広く求め、制度の検証や必要な見直しを適宜行うべきと考えますが、いかがでしょうか。総務部長に見解を伺います。

【渡部総務部長】

 公益通報制度の検証や見直しについてでございます。
本通報制度においては、通報者に不利益等が生じないよう、公益通報推進幹、公益通報調査員といった限られた職員が調査を行うなど、通報者の情報を含め調査内容を厳格に管理することとしております。
先ほど申し上げました再編以降、本年8月に初めて公益通報制度レッドフラッグを適用いたしましたが、初期の段階から、公益通報委員の意見を得ながら慎重に調査を進めてまいりました。委員からは、本事案に当たり、県の調査は適切に行われており調査結果は妥当と考えるとの意見もいただいております。
今後運用を重ねていく中で、職員意見も含め、課題が生じた場合については公益通報委員等の意見や検証も得ながら、必要な見直しを含め対応してまいります。以上でございます。

観光振興税について

【山口典久議員】

 観光振興税(仮称)について質問します。
知事は6月定例会において、観光振興税の具体的な制度設計を進めていること、そして令和8年4月に導入を目指していることなどを表明されました。今議会において、長野県観光振興税(仮称)骨子が公表されています。
最初に、長野県の目指す観光について質問いたします。
観光業界は、新型コロナで大打撃を受けました。こうした中で、それまでのインバウンド中心、インバウンド頼みとも言える観光の在り方も問われる事態となりました。その後、インバウンドも回復してきていますが、国際ハイグレードホテルが自然や環境に与える影響や、また、オーバーツーリズムなどが全国的に課題になっています。
私は、そもそも観光立国基本法の理念である「住んでよし訪れてよし」の地域住民の目線での政策展開が改めて重要になっていると考えます。長野県は、世界水準の山岳高原観光地の実現を目指し、その費用に観光振興税を充てるとしていますが、どのような基準で世界水準と評価するのでしょうか。

【加藤観光スポーツ部長】

 私には観光振興税(仮称)、以下仮称でございますけれども、について四つ質問を頂戴したところでございます。
まず、世界水準の評価についてでございます。
世界水準の山岳高原観光地づくりでございますけれども、移動の利便性や観光DXなど、世界の観光地を意識した受入れ環境の整備や地域の個性を生かした観光政策の推進、さらには一過性のPRやイベントではない観光地づくりといった取組が行われている本県観光の目指す姿を示すものでございます。県では、こうした状況の実現に向けまして施策を進めているところでございます。
今後、観光振興税を活用して事業に取り組む際には、事業の成果を定量的にフォローをし、評価できるような指標の設定について、策定を予定しております観光ビジョン、これも仮称でございますけれども、その中で具体的な使途と併せて検討したいと考えております。

【山口典久議員】

 次に、小規模な宿泊業者への影響についてです。
現在、あらゆる物価の高騰、人手不足の中で深刻な経営状況もお聞きしています。こうした中で、観光振興税の導入により、会計システムの改修や納税など事務手続の負担が増えること、また、安売りや低価格競争の激化などに不安の声が上がっています。小規模の宿泊業者への影響をどのように捉えているのでしょうか。

【加藤観光スポーツ部長】

 小規模宿泊事業者への影響についてでございます。
観光振興税の導入に当たりましては、特別徴収義務者となる宿泊事業者の協力が不可欠でございます。制度導入の際には、宿泊事業者は会計システムの導入や改修のほか、制度開始後の税の申告や納入などが必要となります。特に小規模な事業者にとりましては、これらの事務の発生が負担になると認識しております。
このため徴収事務の手間を軽減するような簡素な税制度はもとより、電子申請、電子納付などの手続の促進、また、特別徴収義務者報奨金の交付などを想定しておりまして、今後、宿泊事業者の声をお聞きしながら、小規模事業者に対する負担軽減策について検討してまいります。

【山口典久議員】

 旅行客に関わる課題についてです。
民間の調査機関によれば、高速道路や新幹線など高速交通網の整備により長野県が首都圏の日帰り圏内になったことで、観光ビジネスとともに宿泊ニーズが減少しています。県内を訪れる日帰り観光客の割合は、80年(昭和55年)には5割でしたけれども、最近では7割近くまで上昇しています。
こうした中で、旅行客の3割ほどの宿泊者に財源を求めることは、公平性に欠けると考えますがいかがでしょうか。
県内では50近い市町村が、入湯税として1泊150円もしくは100円を徴収しています。そこに観光振興税が上乗せとなります。子育て世帯のささやかな家族旅行、年金で暮らす高齢者の温泉旅行にも負担を求めることになります。税の負担感、実際の税負担も決して小さくありません。これは旅行客の消費行動にも少なからぬ影響が出ると考えますが、いかがでしょうか。

【加藤観光スポーツ部長】

 一部の旅行客に負担を求めることについてということでございました。
観光振興財源の負担方法につきましては、昨年度観光審議会の観光振興財源検討部会において議論をいただいたところでございますけれども、そこでは、他の自治体の事例や、対象となる観光行動について検討をし、宿泊のほかに、入山、あるいは入域などの行為への負担を求める意見もございました。
その上で部会におきましては、宿泊行為が消費と行為の場所が近く、課税客体の捕捉性が高く徴収が容易であることなどから、負担を求める行為として適当であるとされ、まずは宿泊行為への課税を検討するべきとの答申を踏まえまして、県としても制度設計を進めてきたという状況でございます。
また、旅行者の消費行動への影響についてということでございましたけれども、県は毎年度、観光客の消費額を調査しておりますけれども、過去5年間において県内で宿泊した観光客は、1回の旅行で1人当たり約4万円を消費している状況でございます。観光振興税の導入に当たりこうした状況を踏まえますと、消費行動に大きな影響を与えるものではないと考えております。
新たな税は、県内観光地の魅力向上を図るための貴重な財源でありますけれども、宿泊されるお客様に一定の負担をいただくことを踏まえまして、納税額以上に本県への旅行に満足していただけるよう取り組んでまいりたいと思います。

【山口典久議員】

 次に、税制の在り方についてです。
税制の改革は民主主義の根幹に関わる問題であり、最も民意を尊重すべき課題と考えます。県民への周知とともに、導入の是非について世論調査等を実施して、丁寧に民意を酌み取るべきと考えます。早ければ、11月定例会における条例案の提出を視野に取り組むということですが、これは早急過ぎるのではないでしょうか。以上、観光スポーツ部長の所見を伺います。

【加藤観光スポーツ部長】

 11月県議会の条例案提出についてということでございました。
観光振興税の導入に当たりましては、県民をはじめ宿泊事業者や市町村など関係者の御理解、御協力が不可欠でございます。このため今月15日から県内4地域で県民・事業者などを対象とした説明会を開催するとともに、地域や事業者の要望にお応えして職員が説明に出向くなど、多くの皆様に説明してまいりたいと考えております。
また先月26日より開始をしましたパブリックコメントに加えまして、説明会におきましてはアンケートを実施するなど、多くの県民の皆様のお声もお聞きしたいというふうに考えております。
観光振興税に係る条例案の県議会への上程につきまして、今議会の提案説明におきまして早ければ11月定例会での条例案の提出を視野に入れてとしておりますとおり、お聞きした声や、制度導入に必要となる周知期間などを踏まえながら、丁寧に検討してまいります。

【山口典久議員】

 自主財源についてです。
観光振興財源検討部会の報告書では、今後の県財政の硬直化への懸念から、また現在の地方財政制度の下で、独自の自主財源確保策の検討が必要としています。
しかし、この財源確保の課題は、今後、例えば子ども・子育て支援等の重要施策を強化する際にも問題になり得ると考えられます。その場合にも、新たな税の創設を検討するのでしょうか。阿部知事の所見を伺います。

【阿部知事】

 私には、子ども・子育て支援策等 の重要政策を強化していく際にも、新たな税の創設を検討するのかという御質問でございます。
社会保障関係費の増大と県財政が厳しさを増す中にありましても、私ども、子ども・子育て支援等、重要な政策課題については、積極的に取り組んでいくということが重要だというふうに思っております。
これまで以上に踏み込んだ施策、事業を行おうということになると、どうしてもどうやって財源を確保するのかということが課題になってまいります。そうした際には、徹底した事業の見直しであったり、あるいは業務のデジタル化、効率化、こうした観点での財源確保であったり、ふるさと信州寄付金等の歳入確保、様々な手段を生かして財源の確保に努めていくということが重要だというふうに考えております。
税ありきで検討するものではありませんけれども、新しい税の創設を検討していくということも選択肢の一つとしては排除されるものではないというふうに思っております。こういう形で県としてもしっかり取り組んでいきますが、特に子ども・子育て支援策のように、これは本来、国でもっと住んでいる場所にかかわらず等しくサービス・支援を受けられるといったようなことが重要なものについては、やはり国が正面から対応していただきたいというふうに思っております。
そういう意味では、この子ども・子育て支援の部分については、充実した制度の構築であったり、財源の確保については、まずはしっかり国に対しての対応を求めていきたいというふうに思っております。
引き続き、県政の重要課題にしっかり取り組んでいくことができますよう、国、地方を通じての幅広い財源確保の在り方を検討していきたいというふうに考えております。以上です。

【山口典久議員】

 観光振興税について、現時点でもどれだけの県民が知っているのか疑問です。「国内外の他地域の取組に後れを取ることは許されない」と、知事は議案説明で述べられました。
しかし、「バスに乗り遅れるな」と県民が置いてきぼりになることを危惧いたします。再度、広く丁寧に県民の民意を酌み取ることを要望いたします。

子どもの権利の保障について

【山口典久議員】

 子どもの権利について質問します。 今年は日本で子どもの権利条約が批准され30年目の節目の年です。また、昨年4月にこども基本法も施行され、子どもの権利条約にのっとって基本的人権が保障される、年齢や発達段階に応じて自己に直接関係する全ての事項について意見を表明する機会が保障されると規定しています。
最初に、子どもの生存や発達に対する権利に関して質問します。
民間団体ひとり親家庭サポート団体全国協議会が行った調査では、独り親家庭において、夏休み中に1日2食以下で過ごしている子どもが34%に上ります。米をおかゆにしてかさ増ししたり、親が1日1食に減らしているなどの声も寄せられています。
フードバンク信州は、支援が届きにくい家庭に緊急的に食品の詰め合わせを送る取組を行っていますが、夏、冬、春の長期休みには、年間1,000世帯を超える支援を行っています。
新型コロナに続き、諸物価高騰は生活困窮世帯を直撃し、深刻な影響を及ぼしています。食事も十分に取ることができない現状は、子どもの生存や発達に対する権利が奪われていると考えます。県の「こどもまんなか」の取組でも行っている県下一斉のフードドライブ統一キャンペーンや、一場所多役の「信州こどもカフェ」などの支援策をより強化すべきと考えますが、こども若者局長の所見を伺います。

【高橋県民文化部こども若者局長】

 私には、子どもの権利の保障について御質問をいただきました。
まず、フードドライブや信州こどもカフェの支援策の強化についてのお尋ねでございます。
信州こどもカフェは食事提供を行うだけでなく、学習支援や相談支援など、地域の大人と子どもの温かなつながりの中で、身近なよりどころとなっております。
長引く物価高騰によりまして食料支援を求める子育て世帯が増える中で、こどもカフェやフードドライブの取組は、子どもたちの健全な成長を保障するという観点からも、大変重要な役割を果たしているものと認識をしているところであります。
これまで県では、こどもカフェの運営者やフードバンク団体から活動状況等を聞き取り、現状把握に努めてきたほか、こどもカフェ運営支援事業補助金による運営費の支援、フードバンク団体への車両、冷凍冷蔵庫の導入支援、フードバンク団体と協働したフードドライブ統一キャンペーンの実施、企業に対する職場内フードドライブ実施の働きかけなど、こどもカフェ支援の充実のための様々な取組を行ってきたところであります。
今後もこれらの取組を継続することに加えまして、さらなる支援の輪を広げるため、食品取扱い事業者とフードバンク団体とのマッチングの推進や、こどもカフェに対する支援のさらなる充実に向けた検討なども行い、こどもカフェの継続的、安定的な運営支援に取り組んでまいりたいと考えております。

【山口典久議員】

 次に、意見表明権についてです。
県立高校2期再編で、2028年度に新校開校を予定している伊那北高校と伊那弥生ケ丘高校の統合では、当初27年度開始としていた建て替え工事の前倒しが問題になりました。とりわけ、この春に報道で初めてそのことを知った1年生は、3年時に文化祭などの学校行事、大学受験などに影響を受けることになり不安の声が広がりました。
伊那弥生ケ丘高校では、1年生のルーム長会が、6月の文化祭で、自分たちのそれぞれの思いを校内に掲示しました。私も見る機会がありましたが、「自分たちの知らないところで自分に関わることで話が決まっていくのはおかしいと思う、話合いをさせてほしい」など、切実な訴えが多くありました。そしてルーム長会は、「私たちは詳しい情報を求めています、そして私たちの意見を聞いてほしいと願っています」と、県教育委員会に意見書を提出するに至りました。
生徒が自分たちの意見を表明する場がありませんでした。その後、県教委は1年生と保護者にアンケート調査を行い、3年時に影響のない新しい案を9月24日に発表して、「私たちの声が届いた」と生徒は安心しているとのことですが、この件について所見を伺います。

【武田教育長】

 ご質問いただきました。
伊那新校における県教育委員会の対応についてでございます。
伊那新校の再編整備においては、地域の皆様や学校に対する事前の情報共有の不足により、再編計画に対する理解が十分深まっていない状況で、校舎整備のスケジュール案など県教委の考え方を提示することになり、生徒をはじめ地域の方々に大きな不安を広げることになったことを、大変申し訳なく思っているところでございます。
今後は、今回の反省を踏まえ、生徒を含む学校関係者、地域の代表者と 随時進捗状況の情報共有を図るとともに、今まで以上に生徒の意見や地域の皆様との合意を大切にしながら、生徒が納得し、夢や希望が持てるような高校再編を進めていけるよう努めてまいります。

【山口典久議員】

 子どもが権利を学習することについてです。
10歳から18歳を対象に日本財団が行ったこども1万人意識調査では、子どもの権利条約について聞いたことはないという子どもが59%に上りました。批准から30年を経ても、権利の当事者である子どもの多くが子どもの権利について知らされておらず、理解されていない状況です。
いじめ・不登校の増加傾向、10代の自殺率の高さなど、子どもたちが強いストレス状態にあります。貧困、子どもに対する虐待等も深刻な社会問題です。こうした子どもを取り巻く環境の深刻さを鑑みて、子どもに自らの意見を表明し尊重される権利があることについて、教育現場においてより学習を進めることが必要と考えますが、いかがでしょうか。以上、教育長に伺います。

【武田教育長】

 子どもが意見表明する権利を学んでいくことについてでございます。
子どもには自ら意見を表す権利があり、その意見は発達段階に応じて十分考慮されなければならないということは、子どもの権利条約及びこども基本法に示されているところでございます。
また、子どもの人権を尊重することは、教育に携わる者として最も重要なことであると認識をしており、教育現場において、子ども自身が持っている権利を学び自覚するために、子どもの権利条約を含めた人権意識の醸成につながる学びの機会を確保することは必要であると考えております。
このため、教職員の人権意識の高揚につながる研修を実施するほか、子どもたちが子どもの権利条約を学ぶ機会を設けるとともに、学校生活の様々な場面で安心して意見を出し合う場を保障することにより、自らの持つ権利を自覚するなど、人権意識の醸成を図ってまいります。
今後も第4次長野県教育振興基本計画の目指す姿である子どものウエルビーイングを実現するために、県教育委員会といたしましても、一人一人の人権が尊重される学校づくりを推進してまいりたいと考えております。以上でございます。

【山口典久議員】

 大人の意識に関してです。
子どもの権利条約第42条では、条約の原則や規定を大人にも周知する義務を課しています。
しかし、国連・子どもの権利委員会は、日本政府に対して、依然として条約が十分に認識されていないとして、大人の認識を高めるためのキャンペーンの強化、子どもと共に、また子どものために働いている専門家への計画的体系的な教育や研修を毎回のように勧告しています。
子どもの権利についての大人の意識調査等を実施していただきたいと考えますが、いかがでしょうか。そして、子どもの権利条約の原則を、子どもに関わる全ての施策、社会全体に浸透させる積極的な取組が必要ではないでしょうか。こども若者局長の所見を伺います。

【高橋県民文化部こども若者局長】

 子どもの権利に関する意識調査の実施及び子どもの権利条約の施策などへの浸透についての御質問であります。
昨年4月に施行されましたこども基本法では、子どもの権利条約の精神にのっとり、子どもの個人としての尊重や、基本的人権の保障、意見表明の機会の確保、意見の尊重等が基本理念に掲げられ、12月に閣議決定をされたこども大綱では、子ども・若者を権利の主体として認識することが基本的な方針として明記をされました。
これらを受けまして県では、子ども・若者施策の充実に努めてきたところでありますが、子どもの意見を施策に反映させるための仕組みとして昨年度小学校5年生から高校3年生までの約300人を対象としたこども・若者モニター制度をスタートさせ、これまで子どもの居場所や長野県の暮らしについて意識調査を行ってまいりました。
議員の御指摘にもございましたが、子どもの人権や意見が尊重されているかという点につきましては重要な観点であることから、今後この調査の項目とすることを検討してまいります。また、先ほど大人に対しての意識啓発も重要だということもございましたので、こういった点も含めて、さらに検討していきたいと考えております。
また、地方公共団体は、こども大綱を勘案しこども計画を定めるよう努めることとされておりまして、県ではこども大綱の策定も見据え、令和5年3月にしあわせ信州創造プラン3.0と併せて 子ども・若者支援総合計画を策定しておりますが、子どもを権利の主体として位置づけるこども大綱の趣旨を県の計画の基本姿勢などにより強く反映させるなど、計画の一部改定に向けた検討を進めているところであります。
こうした県の計画の改定に加えまして、こども基本法やこども大綱の趣旨を、市町村のこども計画の策定にも反映させるとともに、これらの計画に基づく各種施策の推進などを通じて、社会全体で子どもの人権が尊重され、子どもの意見表明や社会参画の機会が確保されるよう、今後も取り組んでまいりたいと考えております。以上です。

【山口典久議員】

 最後に、県の条例に関して質問します。
今年は「長野県の未来を担う子どもの支援に関する条例」が策定から10年目の節目でもあります。条例は、子どもの支援を総合的に推進し、子どもの最善の利益を実現することを目的として、相談に応じる総合窓口、子ども支援委員会などによる相談・救済、社会参加の促進や居場所の整備等、子どもへの支援、保護者、学校関係者など育ちを支える者への支援を位置づけています。相談・救済の在り方について、私も県内で起きた重大ないじめや体罰の事案に関し、本会議で質問をした経過がありますが、様々な課題があると考えます。
「長野県の未来を担う子どもの支援に関する条例」に、子どもの権利を位置づけるなど、発展、見直しが求められていると考えますが、阿部知事の見解を伺います。

【阿部知事】

 私には長野県の未来を担う子どもの支援に関する条例の発展、見直しについての考え方についてという御質問をいただきました。
現行の子ども支援条例で定めております、人権侵害救済の仕組み等については、現時点で直ちに見直すことは考えていないところでございます。
しかしながら他方で、御質問にありましたように、こども基本法やこども大綱が制定されるなど、この条例を制定した当時と比べますと、大分この子どもたちを取り巻く環境の変化、あるいは制度的な変化、出てきているというふうに考えております。
こうしたことを念頭に置きながら、この条例の見直しが必要かどうか、こうしたことも含めて検討を行っていきたいというふうに考えております。以上です。

【山口典久議員】

 子ども支援条例の制定に当たっては、子どもの権利をめぐり様々な議論があったことは私も承知しております。
しかし、今、知事からも御答弁ありましたように、子どもたちや子どもの権利をめぐる社会情勢、また状況は大きく変化してきています。改めて、県条例に子どもの権利を位置づけることなど、子どもの権利の取組が前進することを願い、質問を終わります。
ありがとうございました。

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