2024年11月定例会 両角友成議員一般質問
信州F・POWERプロジェクト発電所破綻について
- 【両角友成議員】
-
日本共産党県議団の両角友成です。私は発言通告に沿って一般質問を行います。
まず初めの質問項目は、信州F・POWERプロジェクト発電所破綻についてであります。
今回も信濃毎日新聞の報道で、信州F・POWERプロジェクト木質バイオマス発電所を運営するソヤノウッドパワーの破綻を知りました。私は昨年9月定例会一般質問で、旧征矢野建材の民事再生法を申請したことを取り上げ、なぜここに至ってしまったのか、本プロジェクトにおいて、長野県は調整役を担うとともに、事業者に対し指導、支援をしてきたことを踏まえると、県の責任は相当に重いと考えるが、知事の見解を伺いますと知事にただしました。
この質問の中で、征矢野建材が民事再生法の適用を申請する4か月前、5月12日、ソヤノウッドパワー普通株主の北野建設株式会社が、特別損失の計上に関するお知らせで、電気事業、燃料調達が困難な状況。なお長期化が予想される状況だとして、7億5,300万円の特別損金を3月決算に計上しているとし、ほかにも、事業を引き継ぐとされる綿半ホールディングスが引き継ぐ条件に、今回の債務総額65億円の大きな原因となった燃料供給の義務契約の解除が前提とのこと。さすれば、発電事業は続くのかも大いに疑問になりますとし、今後の見通しをただしました。
知事は答弁の中で、県としても新たに部局横断に立ち上げ、また弁護士等の専門家にも御参画いただいている事業継続支援チームを通じて事業の着実な継続が図られますよう、技術面の助言や情報提供などの支援を積極的に行ってまいります。このプロジェクトが所期の目的を達成できるよう県としても全力で取り組みます、このように見解を述べられました。
そこで今の事態、ソヤノウッドパワーが特別清算手続に移行する予定に至ったことに対し、改めて県の責任が問われると思いますが、まず、知事の見解を伺います。
- 【阿部知事】
-
信州F・POWERプロジェクトに関連して、ソヤノウッドパワーが特別清算手続に移行するに至ったことについての見解という御質問であります。
このプロジェクトにつきましては、県としてはこれまで、補助金執行者としての役割、そしてそれに加えて原木の安定供給に向けた関係者間の調整や素材生産の増加へとつながる林業事業者への支援を行うなど、行政としての役割と責任を誠実に果たしてきたところであります。
しかしながら、事業が計画どおり進捗せず、このことについては重く受け止めさせていただいているところでございます。
今後とも当初の事業目的であります森林資源の有効活用によります林業・木材産業の活性化を実現することができるよう、県としての役割、責任を果たしていきたいと考えております。
以上です。
- 【両角友成議員】
-
続けて伺います。
県は事業継続支援チームを立ち上げたりしていましたが、ソヤノウッドパワーの経営難をどの程度把握していたのか、またソヤノウッドパワーは特別清算の手続を取り解散することになるが、県が無利子融資していた残額約7,000万円の返済はどうなるか、見通しを部長に伺います。
- 【須藤林務部長】
-
私にはF・POWERプロジェクトに関しまして、2件お尋ねを頂戴いたしました。
まず、発電事業者の経営状況の把握についてでございます。
県は補助金執行者として、善良な管理者の注意をもって補助目的に沿った事業が実施されるよう指導する立場であり、事業主体から提出された書類や事業主体から事業の実施状況等についてお話を伺う中で、燃料材の調達実績が当初目指した目標に達していない状況や、そうした要因のため厳しい経営状況にあること等については認識をしていたところでございます。
次に、発電事業者への資金融通に関わる納付の見通しについてのお尋ねでございます。
事業主体であるソヤノウッドパワーに対して交付した資金融通としての補助金につきましては、補助主体が作成し、県が承認した納付計画に基づいて、事業開始後に県へ全額を納付することを補助金交付に当たっての条件としており、当初交付した約9,200万円の補助額のうち、現時点での納付残額は約7,300万円となっております。
この残額の納付につきましては、ソヤノウッドパワーの特別清算前に行われるソヤノウッドパワーから新会社への発電事業の譲渡に併せて残額の納付義務を新会社に承継され、納付が継続される見通しであり、現在、国や事業主体と調整し、必要な手続を進めているところであります。
県としては補助金執行者として、補助事業が円滑に継続し、資金融通の補助目的が達成されるよう、適切に指導等を行ってまいります。
以上でございます。
- 【両角友成議員】
-
製材事業、木質バイオマス事業の二つが軌道に乗らず失敗したことで、関係した事業者に多大な負担を課せたことに対し、知事の思いを伺います。
- 【阿部知事】
-
私にはF・POWERに関連して御質問をいただきました。
関係事業者に多大な負担を課したことに対し、知事の思いはどうかという御質問でございます。
先ほど林務部長が依田議員の御質問に対して御説明させてきていただいているとおり、今回市場動向の変化、あるいは燃料材価格の上昇等、様々な環境変化の中で、県としても可能な取組、可能な支援を行わせてきていただいたところでございます。
しかしながら、結果的には関係者の皆様に多大な御迷惑をおかけすることになってしまいました。このことにつきましては、大変心苦しく申し訳なく思っているところでございます。
- 【両角友成議員】
-
F・POWERプロジェクトで県と連携している塩尻市百瀬敬市長は、11月25日の定例記者会見で、計画とおり進んでいないことは市として責任を感じているし、大変申し訳ないと述べたと、地元市民タイムスが11月26日付で報道しています。
続けて、今後の燃料材の供給見込みと県の関わりを伺うとともに、先駆的なモデルを全国に発信するという所期の目的から見て、現状をどう分析しているかも、知事の見解を伺います。
- 【阿部知事】
-
今後の燃料材の供給見込みと県の関わり方という御質問でございます。
発電事業における燃料材につきましては、供給の役割を担う綿半建材におきまして、林業事業者やグループ企業とも連携して、安定供給に向けた取組を進めていただいているところでありまして、今年度は約13万トンの供給量を見込み、今後さらなる供給量の増加を目指しているところというふうに伺っております。
県としては、引き続き補助金執行者として、善良な管理者の注意をもって補助目的に沿った事業が実施されるよう指導するとともに、素材生産の増加へとつながる林業事業者への支援などを行ってまいります。
このプロジェクト、所期の目的について現状どう分析するか見解を伺うという御質問でございます。
このF・POWERプロジェクトにつきましては、林業再生と再生可能エネルギーの利用、
両者を目指す取組として進められてきたところでございます。当初の計画どおりに事業が進捗しなかったとはいえ、このプロジェクトにより県内におけるC材・D材の活用も一定程度進み、また県内における木材生産の増加にも寄与してきたところというふうに考えています。
このプロジェクトにつきましては、現在、関係者の御尽力により事業の継続に向けた新たな取組が進められておりますことから、県としても、プロジェクトが目指す森林資源の有効活用による林業・木材産業の活性化の実現に向け、事業が円滑に継続されるよう、引き続き適切な支援等を行ってまいります。 以上です。
- 【両角友成議員】
-
一程度の答弁はありましたが、果たして県民が責任という部分で納得するでしょうか。続きは、委員会で行いたいと思います。
健康保険証について
- 【両角友成議員】
-
次の質問項目は、健康保険証についてであります。
12月2日からの保険証の発行廃止をめぐって、マイナ保険証がないと医療機関を受診できなくなるなどの不安が患者、国民に広がっています。
そもそもマイナンバーカードをつくるかどうかは任意です。さらにマイナンバーカードを保険証として登録するマイナ保険証にするのも、マイナ保険証を使うのも任意です。任意の制度を普及するために保険証を廃止することには、全く道理がありません。いま一度、任意であることを、患者、国民に徹底すべきです。
政府は、現行の保険証の廃止後、マイナ保険証を持っていない人には資格確認書を全員に交付するとしています。また、マイナ保険証を持っている人が、自分の保険情報が正しくひも付けられているか確認するために、資格確認書とは別に、「資格情報のお知らせ」という書面も配布します。中小企業の労働者などが加入する全国健康保険協会、協会けんぽ約4,000万人は、加入者全員に資格情報のお知らせを配ります。
資格確認書、「資格情報のお知らせ」のどちらも、保険資格について、保険証と同じ内容が記載されています。保険証を廃止しても同様のものを配布するわけです。
私はずっと言い続けていますが、支離滅裂な施策と言わざるを得ません。
医療機関の窓口では、マイナ保険証の読み取り機の不具合、災害による停電など、様々なトラブルが起きています。制度の仕組み上、トラブルをゼロにすることはできません。
その際、資格確認に使われているのが保険証です。円滑に受診するために、マイナ保険証とともに保険証を持参することを厚労省も推奨してきました。保険証廃止後は、資格情報のお知らせを提示することになるのでしょうか。何のために保険証を廃止するのか、意味不明なだけでなく、これらは保険者の負担を増大させます。
資格確認書、「資格情報のお知らせ」を発送する作業は、マイナ保険証を持っていない人を日常的に把握するなど手間がかかります。速やかに配布しないと保険資格の確認ができず、窓口で10割負担を強いられる事例が生じます。これを防ぐのは保険者の責務ですが、大変な作業になります。
さらに重大なのは、現行の保険証は、期限が来れば新しい保険証が送られてくるのに対し、マイナ保険証は5年ごとに役所に行って、自分で更新しなければならないことです。期限が切れる3か月前にお知らせが届き、期限が切れても3か月間は有効とのことですが、更新を忘れると、窓口で10割負担を求められかねません。資格確認書は法律では希望者が申請することになっており、当面の間、申請なしで送られてきますが、その後は決まっていません。 自民党総裁選で石破首相は、納得しない人がいれば、併用も選択肢として当然だと発言しています。国民の批判の強さの表れです。現行の公的医療保険制度の下では、保険証発行を交付する責任は、国、保険者にあります。それを揺るがすことは許されません。改めて現行保険証廃止を撤回し、保険証を残すことを求めるものです。
全国保険医団体連合会が8月から9月に実施した調査では、回答した1万2,735医療機関の88%が健康保険証の存続を求めました。トラブルを経験した医療機関の約8割が、今の保険証で本人確認、資格確認し、無保険を回避したとのこと。ここに、医療現場が反対する大きな理由があります。
前回も紹介しましたが、障がい者・高齢者の中にはカードをつくるのが難しい人もいます。
あまり時間はありませんが、60年続く国民皆保険を継続するために、健康保険証をマイナ保険証に一本化するだけではなく、現行の保険証を残すべきと、国に対し迫っていただきたいが、いかがでしょうか。健康福祉部長に伺います。
- 【笹渕健康福祉部長】
-
私には、健康保険証の存続についてお尋ねがございました。
健康保険証のデジタル化には、患者本人の健康医療データに基づく最適な医療の提供など、多くのメリットがあることから、推進していくべきものと認識しております。
また、マイナ保険証への移行に際しましては、国において、これまでに確認されている機器トラブルなどへの対応を実施しているほか、マイナンバーカードの有無などによらず、全ての方が従来とおりの保険診療が受けられるよう、資格確認書の交付など、様々な措置が講じられているものと認識しております。
県といたしましては、今後、マイナ保険証の利用者が増加していくものと見込んでおり、県民の皆様が安心して受診できるよう、引き続き制度の周知に努めるとともに、マイナ保険証が円滑に運用されるよう、今後も国に必要な対応を求めてまいります。
以上でございます。
- 【両角友成議員】
-
政府は11月までにマイナ保険証の利用率を50%にと言っていましたが、実際は15.67%にとどまっています。現行の保険証を残すことが、安心して医療にかかれる、
医療現場も助かる、これが多くの皆さんの思いではないでしょうかと申し上げ、次の質問に移ります。
介護危機の打開について
- 【両角友成議員】
-
次の質問項目は、介護危機の打開についてであります。
既に4割が赤字だった訪問介護の基本報酬を4月から2から3%引き下げ、訪問介護事業者の倒産が過去最多を記録するなど、介護崩壊の危機が進行しています。全国で6月末時点で、事業所ゼロが97市町村、1か所市町村が277です。空白地域では、保険料を払っても介護が受けられない深刻な事態も生まれています。
ある介護事業所の訴えです。賃金がネック、このまま人手不足が続くと介護サービスがなくなる、介護離職が深刻になる。社会全体の問題ですと。
また、長野県内77市町村での訪問介護費、報酬の引下げ撤回を求める請願陳情書の採決状況は、本年9月定例会までに58市町村がよいものとして取り上げる採択とし、趣旨採択が7、継続が2、不採択は僅か2であります。この結果を見ても、県内世論も介護基本報酬引下げ撤回を望んでいます。
介護職員の賃上げや経営支援のため介護報酬をただ引き上げると、利用料や保険料に跳ね返ります。それを回避するため、国庫負担をせめて10%引き上げ、公費助成で全産業平均より5万円低いと言われる賃金引上げを実現するためにも、国庫負担引上げが必要不可欠だと考えます。
国に対し、国庫負担を増やすように今まで以上に求める必要があると考えますが、知事の見解を伺います。
- 【阿部知事】
-
私には、介護保険制度に関連して介護職員の賃上げ、介護報酬の引上げのための国庫負担の拡充について御質問いただきました。
今、長野県における、あるいは全国における大きな課題は人口減少の問題ですが、そうした中で、地域の活動を支えていただいている皆様方の安定的な雇用、賃金の引上げは、非常に重要な課題だというふうに思っています。
そうした中で、この介護職員の皆様方の賃金水準についても、もっと引き上げていくということが必要だと私も思っております。そうした観点も含めて、この介護保険制度が将来にわたって安定的に運営されるためには、やはり、この制度の改善をしっかりと行っていただくということが必要だというふうに思います。
国庫負担割合の引上げということも含めて、これは、保険料であったり、あるいは、国と地方の負担をどうするのか。そういうことも含めてしっかりと制度設計してもらうということが重要だというふうに思います。
私も国庫負担の割合については上げるべきだというふうには思いますが、ただ、国はもう財政的には赤字国債頼りという財政運営をしていますので、そうした財源どう見いだすのかということも含めて、国におけるしっかりとした議論を行ってもらうということが重要だというふうに思っています。
こうした制度の改善に向けた見直しを行ってもらいたいということについては、これは長野県としても、それから全国知事会としても提案をさせていただいているところでありますので、引き続き、私たち長野県に暮らす皆様方が安心して生活を送ることができるように、この介護保険制度のよりよい形、持続可能な形になるように、国には強く求めていきたいというふうに思っております。
以上です。
- 【両角友成議員】
-
本年6月定例会で山口典久県議が介護事業所問題を取り上げました。4月から訪問介護サービスを廃止した中山間地の介護事業所を訪ね、直接話を聞き、経営が赤字続きで事業を廃止せざるを得なかった事例を紹介。
こういう中で、国は4月から訪問介護基本報酬を引き下げた。事業所の運営に当たる影響は大きいと考えるとただしたのに対し、健康福祉部長は答弁の中で、訪問介護事業所の運営については、事業所に直接出向いて状況をお聞きするか、全事業所に実態調査を実施していると答弁していますが、調査の結果とともに、県としての見解と今後の対応を健康福祉部長に伺います。
- 【笹渕健康福祉部長】
-
私には訪問介護に関してお尋ねがございました。
訪問介護の実態調査結果等に対する見解及び今後の対応についてでございます。
県では、訪問介護事業所に関する運営状況などについて、6月から9月にかけ、中山間地域の事業所などに直接出向いて状況をお聞きするほか、全事業所を対象にした実態調査を行い、
約7割の事業所から回答を得たところでございます。
これらによりますと、高齢者住宅等の利用者が多い事業所ほど、訪問にかかる移動時間が短く効率的なサービス提供が行われている一方、中山間地域へサービス提供を行う事業所は、移動距離が長く人材の不足感が高いなど、より厳しい状況にあることが表れた結果となりました。
県では、こうした中山間地域等における訪問介護の実態を踏まえ、今年度も介護報酬の設定においては、地域の実情を反映するよう先日国に要望したところであり、今後も引き続き報酬改定の影響等を把握し、必要な対応を検討してまいります。
- 【両角友成議員】
-
次に、県独自の支援を求めるものです。
一例ですが、東京都世田谷区は9月、区内にある高齢者・障がい者施設へ、緊急安定経営事業者支援給付金の支給を決めました。給付の対象となるのが、区内に262ある訪問介護等事業所のほか、居宅系サービス事業所、通所・入所系の高齢者施設、障がい者施設など、このうち、訪問介護事業所には、1事業所当たり88万円が支給されます。
確かに介護保険は国の制度ですが、例えば子供の医療費窓口無料制度を実施したのはそれぞれの自治体でした。国ではありません。自治体の取組が国を動かす力になります。地域で高齢者を支え、手のかかるサービスを提供できるのは、中小の訪問介護事業所です。基本報酬減で経営が成り立たなくなるとの危機感を抱く県内の事業所を救うためにも、給付金の支給制度創設など、県独自の支援を願うのがいかが。健康福祉部長に伺います。
- 【笹渕健康福祉部長】
-
訪問介護事業所への県の独自支援についてでございます。
訪問介護事業所の運営は、人材の不足感が高いなどより厳しい状況にあることから、県では人材確保に向け、処遇改善加算未取得事業所等への取得支援のほか、独自の支援として、新規入職者と事業所とのマッチングと資格取得の支援、今月開催の訪問介護魅力発信フォーラムなどを新たに取り組んでいるところでございます。
県としましては、訪問介護事業所が安定した運営を行えるよう、まずは公定価格を定める国において、地域の実情を踏まえた介護報酬の適時適切な見直しなどが行われることが必要と考えており、今後も、事業所の運営状況等を踏まえ、引き続き強く要望してまいります。 以上でございます。
- 【両角友成議員】
-
厚生労働省は、介護高齢者福祉分野の中で、高齢者が介護が必要となっても住み慣れた地域や住まいで尊厳ある自立した生活を送ることができるよう、質の高い保健医療、福祉サービスの確保、将来にわたって安定した介護制度の確立などに取り組んでいますと言っています。国が出し分を増やし、このようにしてもらいたいものです。
誰もが高齢になります。私は介護保険を使わなくても大丈夫と言えるでしょうか。誰しも自信はないはずです。とすれば、誰もが安心して暮らせる医療・介護とすべきではないでしょうかと申し上げ、質問といたします。
ありがとうございました。