2025年1月臨時議会 毛利栄子議員質問
- 【毛利栄子議員】
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日本共産党県議団を代表し、補正予算案に対する質疑を行います。
国の14兆円に上る補正を受けて、総額811億円という多額の補正予算の提案ですが、その中身は、物価高騰対策が40億円で5%、ゼロカーボンの加速化が9億円、1.1%、減災・防災が614億円、75.8%、人口減少対策等が80億円、10%、人事院勧告に基づく給与改定が66億円、8.2%と、4分の3は国の防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策を最大限活用してのものです。
これだけ物価高騰の中で、県民生活が苦境に追いやられている下で、物価高騰対策、暮らし応援にもっと自主財源も使いながら大胆に対応していただいてもいいのではないかというのが率直な感想です。
とはいえ、私たちがこの間繰り返し求めてきた低所得者支援、医療機関をはじめとした社会福祉施設等の光熱費、食材費、ガソリン代の価格高騰分に対する助成、畜産農家の飼料購入費助成、災害時におけるトイレをはじめとした避難所の環境改善、フードバンクやこどもカフェ支援、特別支援学校のトイレ改修やスクールバス増車などは歓迎できるものです。
寒さの厳しい長野県にあって、冬場に県として福祉灯油を実施してほしいと党県議団は何年にもわたって求めてまいりましたが、その都度、県の返事は、福祉灯油は身近な市町村事業としてやってほしいということでした。
今回、県社協に補助して行うまいさぽへの生活必需品の支援事業に新たに灯油等の燃料油を加えていただいたことは、貴重な一歩と歓迎します。
以下4点について質問をいたします。
中小・小規模事業者の賃上げ支援について
- 【毛利栄子議員】
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産業労働部長に伺います。
長野市の消費者物価指数が39か月連続前年同月比を上回るという異常な物価の高騰が続く下で、実質賃金は4か月連続して低下しています。賃上げが物価高に追いつかない状況で、県民生活は苦難を強いられているため、いかにして働く者の賃金を上げていくかが求められています。県内は圧倒的に中小・小売り小規模事業者が多いため、その直接的な賃上げをどう支援していくかが喫緊の課題ではないでしょうか。
今回、国の業務改善助成金に県の補助金を上乗せする予算が盛られていますが、党県議団が度々申入れしてきたように、国の業務改善助成金は、生産性向上に向けた機器や設備の購入などを前提とした助成金であるため、赤字や資金繰りが厳しい中小・小規模事業者にとっては、申請そのものがハードルが高く、利用しにくいものになっています。
さらに県の上乗せは、女性や若者が働きやすい職場づくりをした場合に限るため、狭いものになってしまってはいないでしょうか。女性や若者が活躍できる職場環境をつくることは大事ですが、昨今のような非常時では、働く全ての皆さんへの手だてが求められていると思います。
そこで、この間の交付状況と、利用が拡大しない要因をどう捉え、今後の展開にどう生かしていこうと考えているのか伺います。
- 【田中産業労働部長】
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私には、中小・小規模事業者の賃上げ支援につきまして御質問をいただきました。
県中小企業賃上げ生産性向上サポート補助金の交付状況と今後の展望についてでございます。
物価高騰や人口減少が進む中でも、持続的に長野県経済が成長し県民全体の所得を増加させていくためには、企業が生産性を高めて付加価値を増やし、賃上げの原資を確保することが重要でございます。
交付状況につきましては、現在、相談のありました約300の事業者に対しまして、長野県賃上げ・業務改善支援センターが伴走支援を実施しまして、このうち約80者が国に助成金を申請済みでございます。県の交付は現在16件でございますが、長野労働局に申請が集中しており、事業者が国の支給決定を待っている段階でございます。今後は、国の支給手続が進む中で県への申請は増加してくるものと見込んでおります。
また、県補助金の交付を受けた事業者には小規模な飲食店も含まれておりまして、子育てと両立しやすい職場環境づくりも着実に広がってきております。先ほどの伴走支援に加えて好事例の効果的な周知に取り組むことで、県事業者の活用促進を図ってまいります。
- 【毛利栄子議員】
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国の助成金活用を前提とするのではなく、幾つかの県で実施されている中小・小規模事業者を直接支援する等、より実効性のある仕組みによる支援が賃上げするには効果的だと思いますが、補正予算編成に当たり検討されたのか伺います。
- 【田中産業労働部長】
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実効性のある仕組みの検討についてでございます。
本補正予算案の計上に当たりましては、他県において、賃上げを行った中小企業に対し一定額を直接補助する事例もあることから、その効果や課題等も検討の俎上に載せたところでございます。企業の賃上げに対する直接補助は、一定の期間、成果はあるものの、一方では補助金が終了した時点でその効果も持続しないものとなってしまう課題感もあるところでございます。
今般取りまとめましたこの信州未来共創戦略では、付加価値労働生産性の向上、これを重要な柱として位置づけたところでございます。
本事業の構築に当たりましては、一過性ではなく中小企業の付加価値を向上させ、持続的な賃上げ原資の確保につなげていくことがより効果的と考え、企業の今後の成長に資する仕組みとしたところでございます。
この点に加えまして、国のこの助成金は、賃上げと生産性向上に資する設備投資を促進する制度であること、また今後の運用に当たりましては、国助成金をより申請しやすくなるよう、長野県賃上げ・業務改善支援センターの伴走支援を通じまして企業にアドバイスを実施していくこと、さらには最低賃金引上げに際しまして、国助成金と県補助金を共同でPRすることなど、国との連携がより高い相乗効果を生むものと考えております。
引き続き賃上げと生産性向上の実効性のある支援を行うとともに、人材不足でも選ばれる職場づくりを進めることで、県民所得と企業収益の増加という経済の好循環の実現に取り組んでまいります。
以上でございます。
病床数適正化支援事業について
- 【毛利栄子議員】
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健康福祉部長に伺います。
県内の有床病院は、病床稼働率が低下し、病院経営にとってネックになっている現状があります。今回新規事業として病床数適正化支援事業費が16億円余盛られ、減らす病床1床につき410万4,000円が給付されることとされており、単純計算すると400床削減分に当たります。コロナパンデミックを経験して、命を守る最前線の病院は、ゆとりある病床運営が必要なことが認識されたと理解しております。
国は令和2年度から地域医療構想を推進する政策の一つとして、地域医療構想に即した一般・療養病床の削減を実施した場合に補助することを制度化しています。その場合の病床削減は、地域調整会議を経て医療審議会が認め、県が国に申請をして了承を得るといったプロセスになっていますが、従来の病床機能再編事業給付金と、今、提案されている事業との違いは何でしょうか。支給手続や従来以上に1病床当たりの給付金が大きくなっている背景について伺うとともに、地域医療への影響はないのか伺います。
- 【笹渕健康福祉部長】
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私には、病床数適正化支援事業に関連してお尋ねがございました。
初めに、病床数適正化支援事業の背景や支給手続等についてでございます。
議員のお話にもありました地域医療構想を推進するツールの一つである病床機能再編支援事業は、人口構造や地域の医療ニーズの質、量の変化を見据え、病床削減を含めた機能再編を行う医療機関に対し、病床稼働率に応じ、1床当たり最大228万円を支援するものであり、地域での議論等を経て支援を決定するものでございます。
一方、本補正予算中の病床数適正化支援事業は、今般の医療需要等の急激な変化に対応するため、病床を削減する医療機関に対し、1床当たり410万4,000円を緊急的に支援するものでございます。
本事業を地域における効率的で質の高い医療提供体制の構築につなげていくためには、医療提供体制のグランドデザイン等との整合も踏まえ、地域医療への影響を考慮しながら進めていく必要があると認識しております。
国から事業内容の詳細が示されていない中ではございますが、具体的には病床数の削減を行う医療機関に対して、病床機能再編支援事業と同様に地域医療構想調整会議の場において報告を求めるなどのように、地域医療への影響を確認しつつ取組を進めてまいります。
- 【毛利栄子議員】
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精神医療については、入院から地域移行への流れがあり、病床数削減によって退院促進が図られますが、ベッド数の現状をどのように認識しているのか。併せて地域生活移行を促進していく場合にはグループホームなどの受皿が必要になってまいりますが、受皿はどう整備されていくのか伺います。
- 【笹渕健康福祉部長】
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精神科ベッド数の現状認識と地域の受皿についてでございます。
令和6年4月1日時点での県内の精神科許可病床数は4,362床、一方で、令和5年度の1日平均在院患者数は3,575人であることから、精神科病床数は需要を上回っている状況であると認識しております。
地域の受皿については、障がい者プランに基づき必要なサービス量が確保できるよう、居住の場となるグループホームや日中活動の場となる就労系の障がい福祉サービス事業所等の整備、地域生活を支える地域生活支援拠点等の機能強化を市町村と共に計画的に進めているところでございます。
今後も、入院医療中心から地域生活中心という理念に基づき、精神障がいのある方が、精神障がいへの理解が進んだ社会の中でそれぞれの地域に住み、必要な医療、福祉、介護サービスによる支援を受けながら、就労など、地域との関わりを持って暮らすことができる体制づくりを進めてまいります。
以上でございます。
森林・林業施策について
- 【毛利栄子議員】
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林務部長に伺います。
本補正予算で提案されている林務部関係の予算は、防災・減災のための森林整備関係事業費が8億円、公共治山関係費が13億円、高性能林業機械導入推進事業補助金が5,600万円、木材産業循環成長対策事業費が5億円、松林健全化推進事業補助金が1億円などとなっており、多くが公共土木事業です。
森林県長野として、県土を保全し森林の持つ多面的機能を維持発展していくためには必要なものだと理解はしますが、素材生産量を増やし県産材の利用が促進され、森林・林業施策がより推進されるためには、川上、川中、川下が有機的につながる施策が必要だと考えます。
マニュアルがあるというものの、主伐・再造林のかけ声の下、バイオマス燃料の確保も含め、最近皆伐に近い山を度々目にします。バイオマスは日本中で材が取り合いになっていることを思えば、発電よりむしろ熱利用にシフトすべきではないかと思うところです。
森林・林業政策の推進に当たり、どのような位置づけの下に本補正予算が提案されたのか、考え方を伺います。
- 【須藤林務部長】
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補正予算案における森林・林業施策についての考え方というお尋ねでございます。
県土の約8割を占める森林につきましては、民有林・人工林のうち約8割が50年生を超えるなど、森林資源の多くが利用期を迎えており、成熟した森林において主伐・再造林を進め、伐採した木材を有効活用することで、森林資源の循環利用を図ることが必要となっております。
そのため今回の補正予算案では、森林内の路網整備や高性能林業機械の導入、付加価値の高い合板を製造する木材加工施設の新設などにより、県産材の生産から加工に至る体制を整備するとともに、現状では不足しておりますチップ等の木質バイオマスの供給施設の整備に対し、支援をしてまいります。
これらの事業と既存の事業の組み合わせにより、地域内での森林資源の好循環を生み出し、持続可能で健全な森林の育成を図ってまいります。
また激甚化、頻発化する災害に備えるため、治山施設整備や森林整備等についても着実に推進をしてまいります。
以上でございます。
防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策と健全な財政運営について
- 【毛利栄子議員】
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建設部長に伺います。
国の防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策を最大限活用した提案とのことであり、土木関連事業費は、補正額の8割近くを占めています。気候危機の影響か、これだけ災害が頻発する下では、防災・減災対策をしっかり行って県民の安全・安心を担保していただくことは必要なことと認識しています。同時に県民からは、防災・減災とともに、道路や河川の維持・補修・管理により力点を置いた施策を実施してほしいという要望が常に多数寄せられます。
本補正予算において、それらの進捗は加速化されるのでしょうか、建設部長に所見を伺います。
- 【新田建設部長】
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私には、防災・減災国土強靱化のための5か年加速化対策によるインフラの維持管理の対策の進捗について御質問をいただきました。
本対策は、防災・減災、国土強靱化の取組の加速化、深化のため、5か年で追加的におおむね15兆円程度の事業規模を持って、重点的、集中的に対策を講じるものであり、気候変動に伴い、激甚化、頻発化する気象災害や、切迫する大規模地震への対策などのほか、予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策など、維持補修や今後の管理に向けた対策が盛り込まれております。
県においても、本対策予算を最大限活用し、道路、河川、砂防、都市公園施設の老朽化対策を計画的に推進しているところであり、今回の補正予算案によって、道路橋や砂防施設の補修、ダム等の河川管理用設備の更新など、必要な対策が手遅れとならぬよう、加速化、深化されるものと考えております。
以上です。
- 【毛利栄子議員】
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総務部長に伺います。
事業執行のためには県負担を伴うことから、約350億円の県債を充てることになっています。
補正後の令和6年の補助公共事業費総額は1,415億円と、令和4年の1,171億円、令和5年の1,279億円と比較しても過大になっており、国が交付税措置してくれるからと言っても、県債も増えていくことになります。
今後も国スポに備える施設整備や高校再編等、様々な投資的経費が必要となる中で、将来負担が懸念されます。県債残高の見通しと、健全な財政運営に向けた取組について伺い、質疑を終わります。
- 【渡辺総務部長】
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私には、県債残高の見通し、健全な財政運営に向けた取組についてのお尋ねでございます。
今回の補正予算により、今年度末の県債残高は1兆5,919億円となる見込みでございまして、全体では前年度比108億円の減、うち建設事業等に充てるための通常債は248億円の増加が見込まれるところでございますが、これは国の防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策を積極的に活用し、防災・減災対策を集中的に推進することなどによるものでございます。
一方で、将来世代の負担軽減は重要であり、先ほど花岡議員の御質問に知事から御答弁申し上げたとおり、投資的経費の重点化などにより、建設事業債残高について縮減を図ってきているところでございます。
引き続き、長野県行政・財政改革方針2023に基づき、通常債残高の縮減、当初予算編成時における元金ベースのプライマリーバランスの黒字維持、将来負担比率、実質公債費比率の健全な水準の維持に取り組むことにより、持続可能な財政基盤の維持に努めてまいります。
以上でございます。