2025年6月定例会 藤岡義英議員一般質問
トランプ関税から中小企業と雇用を守るために
- 【藤岡義英議員】
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日本共産党県議団、藤岡義英です。よろしくお願いいたします。
価格転嫁による賃上げ原資の確保が難しい中でも、人材確保のために賃上げせざるを得ない、大都市圏の大企業との賃金格差はむしろ拡大を続けており、地域からの人口流出が見られる下で新規採用は困難になっているなど、原料価格や人件費の高騰を受け、中小企業から苦しい状況が聞かれます。さらに、トランプ関税の影響が心配されます。
こうした状況の中で、暮らし、中小企業、雇用への支援について、五つ質問いたします。
一つ、最初にトランプ関税の評価をお聞かせください。また、国際社会と連携し、トランプ関税の全面撤回を国に求めるよう要請すべきだと考えますがいかがでしょうか。
- 【阿部知事】
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私にご質問頂戴いたしました。
トランプ関税から中小企業と雇用を守ることに関連して、米国関税措置の評価、そして撤回の要請についてというご質問でございます。
米国による関税措置は、戦後世界各国の努力で築かれてきた自由で開かれた貿易体制を大きく揺るがすものであり、賃上げ等を通じたデフレからの脱却を目指す日本経済や、あるいは輸出関連の企業が多い本県産業に多大な影響を与えるのみならず、世界的な景気の下振れも懸念されるところというふうに受け止めております。
このため6月2日には、長野県として、市長会、それから町村会、さらには県会議長をはじめとする市議会議長会、町村議会議長会と共同で要請活動を行い、その中で経済産業省政務官に対して、米国に対して今回の関税措置の見直しを粘り強く求めることを要請をさせていただいたところでございます。政府には、引き続き粘り強い交渉を行い、日本の国益に沿った形での合意がなされることを期待しているところでございます。
- 【藤岡義英議員】
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県は特別相談窓口を設置されましたが、寄せられた相談内容は現時点でどのようなものがありますか。あわせて、現場に足を運び、中小企業の声を直接聞き取り、県内経済や下請け企業への影響を調査すべきと考えますがいかがですか。
- 【米沢産業労働部】
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米国の関税措置に関してご質問をいただきました。
米国関税に係る相談内容や影響の調査についてのお尋ねです。相談件数は6月20日時点で27件あり、主な内容としては、米国関税の先行き懸念から受注が低迷している。また、現在直接影響はないが、取引先の関税の影響による受注物件を懸念している。また、今後の関税措置の展開が分からず、見通しが立たない状況で不安であるなどの声があったところです。
県では、日頃から職員が企業に出向き、経営者等と対話する中で、地域経済の状況を把握するとともに、今回の米国関税措置への影響については、5月の景気動向調査の際に、付帯調査を実施したところです。この付帯調査の結果としては、米国との取引上の関係は、44%、105社の企業があると答えておりますが、その中で既に影響を受けているものは11社、5%。今後影響を受ける可能性があると答えた者は34%、82社となっております。
現状では、直接的な影響は限られているものの、今後の影響拡大を懸念する声が多くあることから、今後も日常的な対話での情報収集を進めるとともに、景気動向調査の付帯調査を実施するなど、継続的に状況の把握に努め、迅速な支援策の実施、情報提供や相談など必要な対応を適宜行ってまいります。
- 【藤岡義英議員】
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トランプ関税による影響を労働者や中小企業に押しつけてはなりません。国に対し、中小企業支援、雇用を守る対策を求めるべきではありませんか。
- 【米沢産業労働部】
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中小企業支援や雇用を守るための国への対策要望についてのお尋ねです。
米国関税措置による影響については、県としても大変重要な課題と認識しております。このため、先ほど知事からもご答弁させていただいたとおり、6月2日に経済産業大臣政務官にお会いし、米国に対し今回の関税措置の見直しを粘り強く求めることを要請したところでありますが、その際、具体的な支援策として、円滑な価格転嫁や賃上げに対する支援、中小企業の下支えと新たな挑戦を行うために必要な取組の支援など、産業や雇用への影響軽減のための対応も同時に要請したところです。
今後も米国関税措置の動向と県内経済への影響を的確に把握しながら、事業者の皆様に切れ目ない支援を行うとともに、県だけでは対応できない対策については、国に対して強く要望してまいります。
- 【藤岡義英議員】
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賃上げする体力がない事業者は、生産性を向上させる余裕もありません。その上、トランプ関税への対応にも追われています。2月県議会の一般質問で、岩手県などが賃上げのみを条件とした中小企業への直接支援制度を創設したことを紹介し、県でも実施を求めました。こうした他県の制度について、長野県として、分析、検証を行ったのでしょうか。
- 【米沢産業労働部長】
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他県の賃上げ制度に対する分析と検証についてのお尋ねです。
他県で先行的に導入されている施策について、その内容を分析し、効果的と判断される優良施策について本県施策として取り込み実施することは、県行政を進めていく上で重要な視点と認識しております。
議員ご指摘の賃金に対する支援制度については、厚生労働省が実施した賃金構造基本統計調査の令和6年度の結果によると、所定内給与額の対前年比が全国平均では3.8%増であるところ、先行実施県では2.9%増であり、本県は全国平均と同率の3.8%増となっておることから、今後の動向を見据える必要があると思われますが、効果は一定程度に限定されているものと推察しております。
本県では、賃金の上昇には、企業の経営基盤の強化を図ることが重要との認識に立って、生産性の向上に対する取組を進める企業に対し、専門家派遣等による経営課題の解決や、高度人材の活用による経営構造の改善を支援するとともに、成長期待分野への展開や新たな取引先の開拓、適切な価格転嫁等の価格交渉サポートなどの支援を行っているところです。
経営体力の向上に重点を置いた支援を行うことにより、雇用の確保や経営の継続、持続的な賃金の上昇につながるものと考えており、今後も引き続き中小企業の経営基盤の強化に努めてまいります。以上でございます。
- 【藤岡義英議員】
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物価高騰に苦しむ県民や中小企業を守るためにも、家計消費と内需を支える思い切った対策が必要であり、トランプ関税への対応としても重要です。今こそ消費税減税とインボイスを廃止すべきと考えますが、いかがでしょうか。
- 【阿部知事】
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消費税の減税、インボイス制度の廃止についての見解というご質問でございます。
消費税は国民、住民の命と暮らしを支える根幹である基礎年金であったり高齢者医療、あるいは介護、次世代育成のための子育て支援といった施策を支える極めて重要な財源になっているというふうに受け止めております。
こうした政策分野は、これから少子高齢化が進行する中ますます重要になってきているところでございますし、また一方で、この消費税収の約4割は、私たち地方公共団体の地方財源になっているところでございます。したがいまして、この消費税率を引き下げるということについては、極めて慎重に検討されるべきものというふうに考えております。
また、インボイス制度は令和5年10月から導入され、10%と8%の複数税率の下、事業者が消費税を適正に申告していただくために必要な制度であると考えております。国とも連携しながら、制度の普及定着に取り組んでいく必要があると考えております。
もとより物価高騰や米国による関税措置への対策といった喫緊の課題に的確に対応していくことは我々大変重要なことだというふうに考えております。そのため、先般も国に対してガソリン価格高騰への対策であったり、あるいは企業の経営革新に向けた総合的な対策、さらには米国の関税措置等による経済への影響の緩和、克服などについて、国に対して求めたところでございます。
県としても先般取りまとめました長野県物価高騰、米国関税措置支援パッケージ1.0に盛り込んだ各施策を、まずは着実に実施をしていくことで、県民の皆様の確かな暮らしを守り、中小企業等の安定的で持続的な経営を支えていきたいと考えております。
- 【藤岡義英議員】
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先月、当県議団で中小企業の方々と懇談する機会がありました。トランプ関税によって既に影響が出ている。受注量が減っている。あまりにも理不尽。これまで企業間で努力してつくり上げてきたものをひっくり返された思いだ。政府は毅然と交渉してほしい。中国や東南アジアも貿易摩擦のあおりを受け、大連やタイにある企業の取引でも影響が出ている。とにかく先行きが不透明で踏ん切りがつかないなど、切実なご意見が寄せられました。
県内企業の影響をきめ細かく把握していただき、寄り添った対応対策、支援制度の実施をと要望いたします。
消費税について、社会保障の財源といった議論がありますが、今後、社会保障を支える力をどこに求めるかを真剣に考えなければなりません。導入から36年、増税され続け、中間所得層まで最も重い税負担が消費税となり、格差の拡大を深刻化させました。
一方、大企業が儲かれば国民に波及するとして、法人税減税を繰り返してきました。大企業は利益を増やし、内部留保が五百数十兆円にまで膨らみましたが、設備投資にも賃上げにも結びつかず、経済の低迷を引き起こしました。生活に困る人からも容赦なく安定的に消費税をしぼり取るやり方で、経済も生活も安定しないのは、この30年で証明されています。
消費税減税が参院選の大争点に浮上しています。世論調査でも、国民の7割が求めています。県財政も大切でありますが、やはり消費税減税を、知事におかれましても、ぜひ賛成するという立場を取っていただきたいと期待しております。
インボイスも、これは業者にとっては本当に負担になっておりますので、廃止をという立場を取っていただきたいと思います。
沖縄戦の歴史認識と、沖縄県との交流連携について
- 【藤岡義英議員】
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沖縄戦の歴史認識と、沖縄県との交流連携について質問いたします。
長野県と沖縄県は交流連携協定を締結し、様々な取組を進め、民間交流や県民同士での交流を活発させていくとしています。この中に、戦後80年の年でもあります。昨日は沖縄慰霊の日でもありました。沖縄戦を経験した沖縄と平和をテーマとした交流も深めていくべきではないかとの思いから、幾つか質問いたします。
これまで沖縄県との交流連携の中で様々な分野で交流を進めてこられました。今後の連携の一分野として、学校教育の中で平和教育の充実を進めてほしいと思いますが、教育長にご所見をお伺いいたします。
- 【武田教育長】
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学校における平和教育の充実についてのお尋ねでございます。
平和教育は、戦争や暴力の悲劇を学び、平和な世界を創造するためのものであり、児童生徒の発達段階や地域の実情に応じて系統的に学ぶことが大切であると考えております。
高校では戦争の実相に触れ、その凄惨な事実と向き合って学ぶことが重要であると考えており、そういった意味においても、修学旅行で沖縄・長崎や広島の現地に赴き歴史に触れることは、戦争への理解、命の尊さや平和の意味を学ぶ上で、意味深いものであると考えております。
今後も地理歴史科の授業や総合的な探究の時間などで、戦争の実情に対する理解を深める取組を重ねるとともに、国内の戦跡等を訪れることで、五感を通しての体験的な学びも重要であることから、県立高校の沖縄への修学旅行を含め、平和教育の充実を図ってまいる所存でございます。
- 【藤岡義英議員】
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今年度から始まる若者交流事業に平和について学ぶプログラムを取り入れ、歴史を通じて平和の大切さを共有する取組を進めてほしいと思いますが、いかがでしょうか。こども若者局長にご所見をお伺いします。
- 【酒井こども若者局長】
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私には、若者交流事業に平和を学ぶプログラムを取り入れることについてご質問をいただきました。
若者交流事業は、長野県及び沖縄県の交流連携協定に基づき、両県の若者の相互理解の促進や郷土愛の醸成、地域づくりの核となる人材育成を行うことを目的に、今年度から新たに実施するものです。
本事業の交流プログラムについては、両県の若者が相互に訪問し、それぞれの特色ある自然・歴史・文化の学習やグループディスカッション等を実施して、参加者の主体性や協調性を高めるものとする予定です。
今後、沖縄県側と実施内容を調整の上、8月頃に募集を開始する予定ですが、若者が平和の大切さを理解することは重要なため、沖縄での交流プログラムでは、信濃の塔もある平和祈念公園の訪問や、佐久市とも関わりの深い糸洲の壕の見学の実施等も検討して、深い学びが得られるものとなるよう進めてまいります。以上です。
- 【藤岡義英議員】
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佐久市の糸洲の壕学習環境整備事業について、県も関わっていかれると2月議会で答弁されました。私は、この糸洲の壕をどのように伝えていくのかという観点から質問いたします。
この事業では、傷病兵の治療に当たっていた小池勇助軍医の判断で、ふじ学徒隊の多くの命が助かったというエピソードが紹介されています。佐久市出身の方でもあり、沖縄県と長野県をつなぐ戦争と平和を考えるシンボルとしてマスコミでも注目されました。
一方で、小池軍医は部下に対し、日本軍の組織的な戦闘が終わった後も戦闘を継続。米軍へ突撃を命じ、本人も自決しています。加害者にも被害者にもなることが、戦争の本質。一つの事象だけを捉えて伝えてはいけないと、佐久から移住し、平和ガイドを務めている井出佳代子さんはコメントされています。
沖縄県民が戦争に巻き込まれた背景を踏まえ、被害、加害、双方の多面的視点から歴史を伝え、平和の意義を普及促進してほしいと思いますが、いかがでしょうか。健康福祉部長にご所見をお伺いします。
- 【笹渕健康福祉部長】
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私には、多面的視点での平和の意義の普及促進についてお尋ねがございました。
沖縄戦を含むさきの大戦では、300万人を超えるかけがえのない命が失われました。今日の平和と繁栄はこうした尊い犠牲の上に成り立っており、戦争の悲惨さと平和の尊さを後世につないでいくことは、現代を生きる我々の責務であると認識しております。
本年は、戦後80年の節目の年に当たり、県としても、県遺族会と連携した平和の語り部事業や満蒙開拓平和記念館での元開拓団のご家族との交流事業など関係団体と連携した取組のほか、小中学生を対象とした平和学習パンフレットの改訂などを予定しております。
こうした取組を通じて、様々な観点を踏まえながら、戦争の歴史的事実を風化させることなく、二度と同じ過ちを繰り返さないための教訓を次世代へ継承していくことが重要と考えております。以上でございます。
- 【藤岡義英議員】
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糸洲の壕の竣工式に、阿部知事、玉城知事が出席されました。平和をテーマにして二つの県がつながり交流を深めていくきっかけになるかもしれないと感動を覚えました。今後、沖縄県知事を招待し、満蒙開拓平和記念館や松代大本営地下壕など、戦跡を共に訪問する機会を設けるなど、平和的交流をさらに進めてほしいと思いますが、いかがでしょうか。知事にご所見を伺います。
- 【阿部知事】
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平和の観点からの沖縄県との交流連携についてご質問をいただきました。
ご質問にありましたとおり、昨日は沖縄県の戦没者を追悼する慰霊の日でございました。さきの大戦におきまして沖縄県では壮絶な地上戦が繰り広げられ、多くの尊い命が失われることとなりました。犠牲となられた全ての御霊に心から哀悼の意を表します。
沖縄県と長野県は、これまでも様々な交流を続けてきたところであります。令和5年には、玉城デニー沖縄県知事に長野県を訪問いただき、その際には松代大本営の地下壕も視察をされています。一方、私も沖縄県を何度か訪問いたしておりますが、今年の1月には信濃の塔の追悼記念式典と併せて、ご質問にあったように糸洲の壕の竣工式にも出席をさせていただいたところでございます。
こうした知事同士の交流だけではなく、本年2月には沖縄の中学生に満蒙開拓平和記念館を訪れていただき、一方、本県からも沖縄への修学旅行で様々な戦跡を訪問するなど、戦争の歴史を学び合う平和交流が行われてきているところでございます。
今後ともこうした交流を通じて、戦争の歴史を風化させることなく次世代に継承していくことができるよう、沖縄県とも力を合わせて取り組んでいきたいと考えております。
私としても、悲しみと苦難の歴史と向き合い平和を願い続けてこられた沖縄の皆様方の思いに、これからも心を寄せてまいりたいと考えております。以上です。
- 【藤岡義英議員】
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沖縄と交流連携の中に平和をテーマにと、1月の沖縄視察で思いを強くいたしました。日本軍の命令によってマラリアの有病地帯へ避難を強制され、マラリアに感染。3,647名の尊い命が犠牲となった戦争マラリアの事実を伝える八重山平和祈念館。沖縄戦を体験した方々の証言に基づき描かれた集団自決を表現した絵画などを展示する佐喜眞美術館など、沖縄戦の教訓、軍隊は住民を守らないことを再認識いたしました。
22日の信濃毎日新聞では、「沖縄戦と信州ともに考える」と特集記事が掲載。TBS報道特集では、久米島で起こった日本軍による住民虐殺の史実が報じられました。歴史を修正しようとする動きを許さず、沖縄戦の真実を学ぶ機会を増やしていかなければと強く感じております。
同じく22日の記事に、「沖縄平和施設、24年度入館数3割減」とありました。お二人の知事が、戦跡・平和施設を訪問されることで効果が上がると思います。沖縄県との交流連携の中で、そうした機会がつくられていくことを期待し次の質問に移ります。
行方不明者捜索のあり方について
- 【藤岡義英議員】
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行方不明者の捜索の在り方について質問します。
4月2日佐久市在住で飲食店を営むTさんが車で図書館に本を返却に13時頃、自家用車で出かけられてから、そのまま行方不明となりました。妻のMさんが捜索願を提出したのは、その日の夜20時過ぎ。その後3日4日と経過する中、心配する関係者は独自に市内の山間部などを捜索。しかし手がかりはなし。そうした中で、「どうして防災無線で放送しないのか」と関係者の方々が警察署や消防署に連絡。その後、5日の13時36分、佐久警察署から佐久市消防署へ防災無線放送要請が出されます。消防署職員がMさんを聞き取りし、放送内容を確認後、第1回目の防災無線が流れたのは17時15分。すると、放送を聞いた市内の住民から、「昨日似た車両を見つけた」との情報が寄せられます。19時20分、佐久警察署職員が当該地籍で右前後車輪側溝脱輪、乗車なし、施錠ありのTさんの所有の車両を発見。夜のため、捜索は翌日早朝となり、翌6日6時ちょうど、佐久警察署職員が車両位置から約300メートル進んだ地点の雪上路肩において、心肺停止のTさんを発見しました。
ご家族、関係者は一様に、「なぜもっと早く防災無線を流せなかったのか」と憤りを感じておられます。放送が数日後となったことについて、佐久警察署の担当者の方は、自己判断ができている、認知症でなかった、動機が分からなかった、事件の場合、無線を流すデメリットがあると判断した。車両で出かける場合、市外や遠方である可能性もあるということで、総合的に判断したとの回答でした。
長野県警には行方不明者捜索に関し、手順マニュアルというものはなく、国家公安委員会規則第13号、行方不明者発見活動に関する規則に基づいて捜索活動を行っているとのことですが、その規則第3条には、行方不明者発見活動を行うに際しては、次に掲げる事項を基本とするものとする。第1として、行方不明者の生命及び身体の保護を図るため、迅速かつ的確に対応することと書かれています。
関係者は迅速かつ的確に対応してもらえなかったと感じていますが、今回の案件についてその規定に沿って捜索が行われたのでしょうか。
- 【鈴木警察本部長】
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警察には、行方不明者の捜索の在り方についてご質問をいただきました。
佐久市における行方不明事案への対応についてお答えいたします。
県警察においては、ご指摘の行方不明者発見活動に関する規則にのっとって対応しているところでありますが、行方不明者届を受理した場合は、行方不明者や使用車両の全国手配、立ち回り予想先の都道府県警察や各警察署に対する早期手配を行うとともに、行方不明の状況に応じて警察犬やヘリコプター等を活用した捜索、消防団や市町村等と連携した捜索などの発見活動を推進しております。
今回の事案につきましては、行方不明者届受理後、行方不明者の生命及び身体の保護を図るため、全国及び近隣警察署への手配をするとともに、佐久警察署員、本部員らによる捜索態勢を構築し、市内及び近隣地域の立ち回りが予想される場所の捜索をはじめ、道路上の防犯カメラの有無の確認等、各種発見活動を実施しております。
しかしながら、結果として救助に至らなかったものであり、お亡くなりになられた方に対し心より哀悼の意を表しますとともに、ご遺族の皆様に対して謹んでお悔やみを申し上げます。
また、捜索状況の進展や特異事項がないことを理由に、届け出をされたご家族に対し捜索結果や進捗状況の連絡をしなかったことについては、配慮に欠けるところがあったと考えております。県警察といたしましては、引き続き行方不明事案における各種発見活動に全力を尽くすとともに、県民の皆様の安全と安心を守るため、適切な対応に努めてまいります。
- 【藤岡義英議員】
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防災無線をどのタイミングで流すのかは、警察の捜索活動の中で判断されるかもしれませんが、捜索願を受理した際に、最初に「防災無線を流す方法もありますよ」と捜索方法の一つとして紹介すべきだったのではありませんか。行方不明者が何らかの事故に遭われていた場合、発見のスピードが命を左右します。捜索願を提出した届け人に対し、どのような説明を現場で最低限行うべきか。行方不明者発見活動に関する現場対応マニュアルを作成すべきではありませんか。
- 【鈴木警察本部長】
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防災行政無線の活用やマニュアルについてのお尋ねでございます。
一般的にでございますけれども、認知症の方をはじめとする自救無能力者が行方不明となっている場合等は、時間の経過や気象状況の変化に伴い行方不明者の生命の危険が増大するおそれがあるため、認知段階から、行政機関に防災行政無線の放送を依頼するなど幅広く情報収集をしております。
他方、自救無能力者以外の方が行方不明となっているような場合は、一見事故や遭難の可能性が高いと思われる事案であっても、誘拐や監禁などの犯罪被害に巻き込まれている可能性や自殺企図などを考慮し、公表することが当人の生命身体に危難が及ぶ可能性もあるため、防災行政無線の放送には慎重な対応が必要であり、早期の実施は控えております。
防災行政無線の運用は市町村によって異なりますが、一般的な手続の流れとしますと、まず警察において届け出人から行方不明者届を受理し、事案内容を勘案し、防災行政無線を活用すべき事案と判断がなされれば、届け出人に実施の意向を確認した上、市町村または消防から事前に示されている依頼方法により依頼を行っているところです。
今回の事案につきましては、ご質問の中でもおっしゃっていましたけれども、行方不明となった原因・動機が不明であった上、この方は認知症ではないと伺っていたため、何らかの事件・事故に遭遇している可能性があることを考慮し、慎重に対応してまいりました。
また、徒歩や自転車で行方不明となっている場合は移動範囲が限定的で近くにいることが多く、防災行政無線は有効であると考えますが、今回のように自動車で行方不明となっている場合には、一般的には移動範囲が広範囲に及び、防災行政無線の放送圏外に移動している可能性も否定できず、効果が限定的なものになるといったことがございます。お尋ねにもありましたけれども、こうした状況を総合的に判断し、直ちに防災行政無線を活用するという判断には至らなかったものであります。
行方不明事案への対応については、国家公安委員会規則や各種の通達等で定められていますが、行方不明事案の初動対応は千差万別であり、事案ごとに臨機応変、柔軟な対応が必要であることから、定型化されたいわゆるマニュアルというものはございません。先ほどご説明いたしたように、例えばその防災行政無線を活用すべき場合とそうでない場合のような、いわばその経験則に基づく判断基準により事案ごとに対応しております。
また行方不明事案は進行形の事案であり、行方不明となった背景や行方不明者が置かれている状況が様々でありますので、一概に定型化した対応は定め難いところがございます。したがいまして、マニュアルを定めてその硬直的な対応になるよりも、事案ごとに臨機応変、柔軟に判断し、迅速かつ的確に対応してまいりたいと考えております。
- 【藤岡義英議員】
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行方不明者の情報を即時に地元自治体と共有することが、早期発見の可能性を高めると考えます。今回佐久市が正式にこの案件の情報を受けたのは3日後となりました。最近の事例でも、佐久市長はSNSで行方不明者の情報を提供し、拡散希望と市民に協力を求めています。行方不明者早期発見のために、行政との連携の在り方を改善すべきと考えますが、いかがでしょうか。以上3点を警察本部長にお聞きいたします。
- 【鈴木警察本部長】
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行政との連携体制の在り方についてであります。警察は、個人の生命及び身体の保護を図ることを責務としているため、行方不明者の発見活動においても、その責務を全うするため、迅速かつ的確に対応することとされています。また、行方不明者の発見のため、届け出人やその他関係者と適時必要な連絡を取るとともに、発見のために必要があると認めるときは、関係行政機関などの協力を求めるものとされております。
県警察としては、今後さらなる高齢化社会の進展により、高齢の行方不明者も増加する可能性があることから、市町村をはじめとする関係行政機関等との間で構築している発見・保護のためのネットワークを効果的に活用するとともに、同ネットワークがない地域においても、市町村等にその構築を働きかけつつ、関係行政機関との役割分担の上、相互に連携して行方不明者の早期発見・保護に努めてまいる所存です。
- 【藤岡義英議員】
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再質問いたします。Tさんは夕方にお店に戻ってくる予定だったこと、高齢で糖尿病のために無理できない体調であったことなどから遠出することはあり得ない。早く見つけてほしいとMさんは再三訴えられています。家出や誘拐といった事件性も低く、何らかの事故に遭われているとして、迅速かつ的確に対応すべきでした。捜索願を提出したときに、もし警察から防災無線についての提案があれば、Mさんは迷わず放送の要請をしていたはずです。
現場の窓口で捜索願が出された際、最低限何を伝え何を説明するのか、その対応は統一すべきです。最低限伝えるべき現場対応マニュアルは必要ではありませんか。関係者は捜索チラシをネットで拡散しました。フェイスブックでは500件以上も拡散されました。行政や市民の協力も得て、防災無線、ラジオ、SNS、長野県警の安全・安心アプリ「ライポリス」も活用できたのかなど、あらゆる方法を使って早期発見に生かせるように、連携の在り方も改善すべきでありませんか。もう一度再質問いたします。警察本部長によろしくお願いします。
- 【鈴木警察本部長】
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最初に警察署の担当者がそのご家族の方とお話したところで、どういう詳しいやり取りがあったか、すいません、私も今おっしゃられたそこまで詳しくはちょっと分かってないところもございますけれども、署のほうとしては、いろいろお話を伺った上で、例えば先ほどもちょっと申し上げましたけれどもも、よくあるように認知症の方がいわゆる徘徊して出られたという場合ですと、これは恐らく迷わず防災行政無線をお願いしようという判断を多分したと思いますし、またご家族に対しても、そうしましょうというふうに提案したかと思います。
詳細私も分からないところがございますけれども、話を聞いている中で、お車でお出かけになっているし、またお仕事もされていてご判断もしっかりされている方なんじゃないかという判断をした結果ではないかというふうには推察いたしますけれども、防災行政無線を活用するかどうかの判断基準においては、先ほど申し上げたようなところがございます。
マニュアルをつくったらよいじゃないかというご提案ですけれども、ちょっとこういう言い方が適切かどうか分かりませんけれども、往々にしてマニュアルをつくって、こういう場合はこうする、こういう場合はこうするというふうにこと細かく決めてしまいますと、逆にそれに少しでも当たらない場合にやらないという消極的な判断に陥るという恐れもございまして、やはり警察としては安全確保が第一だと、ある程度経験則によってしまうところがございますけれども、先ほどストーカー事案のご質問などもいただきましたけれども、それぞれの事案についてこの場合はどうなんだろうということを一つずつ考えた上で判断していくと、今はその現場の判断でやるというのが通常かと思います。ただ今回につきましては、本当に結果としてお助けできなかったということは大変残念でありますし、改めましてお悔やみを申し上げたいと思っております。
- 【藤岡義英議員】
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もし、行方不明となられたその日の晩に放送されていれば助けられたのではないか。Mさんや関係者の無念は計り知れません。このような悲しい事故が二度と繰り返されないように願い、また、この捜索の関係者の方々には、ぜひ今回の事件を教訓化していただき、そして繰り返しになりますが、二度とこのようなことが決して起こらないことを求め、一切の質問を終わります。