2025年9月定例会 和田明子議員一般質問
生活保護問題について
- 【和田明子議員】
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本年6月27日、生活保護基準引下げ違憲訴訟、いわゆる、いのちの砦裁判は、国、厚生労働省による2013年からの生活保護基準大幅引下げは違法だと、最高裁判所が下した原告勝訴、国敗訴の画期的な判決でした。
判決から既に3か月がたちました。いまだに福岡厚生労働大臣は謝罪すらしていません。敗訴当事者、厚労省は、勝訴当事者が反対しているにもかかわらず、最高裁判決への対応に関する専門家委員会を省内に設置しました。厚労省が選んだ専門委員が、最高裁判決の内容を精査して対応を決めるという不誠実な姿勢を取っています。
最高裁判決当日、福岡厚労相に対し、早期全面解決として真摯な謝罪と、13年改定前の基準との差額保護費の遡及支給などを求めました。憲法25条に基づき、国民の生存権を守る最後の砦が、生活保護制度と言われています。生活保護利用者は、基準が大幅に引き下げられたことで、生活扶助費が平均6.5%減額され、その影響が長期に続いた上に、現在の物価高騰、猛暑とで生活は一層困難になり、生存権が侵害され続けています。
さらに、生活保護の基準額は、ナショナルミニマムを具体化したものとされており、保護を利用する人だけでなく、最低賃金の額、就学援助費の支給額、地方税の非課税限度額などなど、50近い制度とも連動、関連して、多くの人たちに影響を与えます。
県として、いのちの砦裁判の判決をどのように受け止めているか。国に対して最高裁判決に従った謝罪と遡及支給を求めていただきたいがいかがか、伺います。
また、生活保護基準の引下げによる受給者への影響がどうか、実態調査を実施していただきたいが、健康福祉部長にお聞きします。
- 【笹渕健康福祉部長】
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私にお尋ねがございました。
生活保護基準引下げに係る最高裁判決についてでございます。
2013年から実施された生活保護基準の改定については、多くの自治体で処分取消訴訟が提起されたと承知しており、今年6月に最高裁が示した違憲という判決は重く受け止めるべきものと認識しております。県としては、現時点では国が設置した最高裁判決への対応に関する専門委員会での議論を注視しているところでございます。
この判決は、今後の生活保護基準の見直しにも影響を与えると考えられることから、国に対して遡及支給等も含め、適時適切に問題提起していくことが必要と考えます。
また、実態調査については、日頃から福祉事務所ではケースワーカーの定期訪問により、受給者の声や生活実態等を把握していることもあり、受給者への新たな調査については、対象となる方のプライバシーや調査に対する負担感への配慮など様々な課題もあることから、今後の国の対応方針も踏まえながら、必要性も含め検討してまいります。
- 【和田明子議員】
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近年の猛暑により、エアコンは贅沢品から命を守る必需品と位置づけが変わりました。高齢者や病弱な方にとって適切な冷房環境の確保は生死に関わる重大な問題です。
2018年厚労省が方針転換を行い、一定条件下で生活保護世帯のエアコン購入費を公費で支給する制度が始まりましたが課題が残されています。生活保護受給者のエアコン購入費について、厚労省は2018年4月以降に新しく保護を受けた方、転居された方が対象としています。それ以前から生活保護を受けている世帯はエアコン購入費の支給の対象外となっており、保護費のやりくりや生活福祉資金を借りて計画的に購入することと、生活保護受給者の間に格差があります。
生活費にもこと欠く、エアコン購入費をやりくりしろというのは無理難題。2018年3月以前の線引きの見直しを国に求めていただきたいと思います。
一方で、全国的にも県内においても独自の助成制度を実施している自治体があります。長野県は市町村と連携し、全ての受給者を対象に制度を拡充して、生活保護世帯へのエアコン購入を支援していただきたいと思います。知事に伺います。
- 【阿部知事】
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私には、生活保護世帯に対するエアコン購入支援についてご質問をいただきました。
今年の夏も本当に暑い日々がずっと続いていたわけでありまして、今やエアコンは贅沢品などというよりは、もう完全に生活必需品だというふうに思っております。
また、我々もクールシェアスポットの設置等の呼びかけ等もしてきているわけでありますけれども、本当に人間、私たちの健康や命に直結してしまうそうした状況になってきてしまっていると思っております。
生活保護世帯におけるエアコンの購入については、熱中症予防の観点から平成30年の制度改正で、保護開始時や転居時に持ち合わせがないなど一定の要件を満たす場合に限って購入費の支給が可能という形になっていますが、これはいささか対象が狭いのではないかというふうに思っております。
県としては、これまでも国に対して物価上昇や生活環境の変化による影響を検証し、生活保護基準について不断の見直しを行うよう求めており、エアコン購入費支給に係る対象要件については、早急に適切な見直しを進めるよう重ねて要望していきたいと考えております。
また、県としての支援の在り方については、生活保護は国の制度でありますし、県と市町村が連携協力して実施しているということもありますので、市町村のご意見も十分お伺いをしながら検討していきたいと考えております。
- 【和田明子議員】
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生活保護制度の申請について伺ってまいります。
県は、生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですのでためらわずにご相談くださいと発信しています。生活保護制度は、法定受託事務として、その実施運用には画一性が求められるところです。
ところが、実際の運用は実施機関に裁量が委ねられており、自治体ごとに違いがあります。また生活保護の実施運用を始めるまでの手続においても、自治体や福祉事務所で違いがあると指摘されています。
生活保護も申請が制度の利用開始の前提条件です。権利を保障するための情報提供の重要性が高いのに、相談申請に際して正しく情報が伝わっていないことがあってはならないと思います。
その立場で申請についての検討、研究をしている研究者があります。それによりますと、生活保護の実施機関である福祉事務所の提供する情報が正確であり、その内容が十分であるかを検討するため、県内の市、そして県の福祉事務所が作成した生活保護のしおりの内容を、大項目、小項目で分析したものですが、その結果から得られた知見は、福祉事務所が提供する情報の内容に差が生じている。特に県福祉事務所の提供する情報は、正確性を欠いているものや、内容が不十分なものなどばらつきを指摘しています。
一例、日本国憲法第25条には全ての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有すると定められており、生活保護を受けることは国民の権利です。生活に困っているときは生活保護法の定める要件に基づき、誰でも生活保護を受けることができますと明記している須坂市のしおりがある一方、収入が少ない、もしくは全くないため、生活をしていかれない状況になってしまった方に対して、最低限度の生活を保障し自分の力で生活していけるようになるまで支援する制度ですと、県諏訪福祉事務所のしおりは説明しています。
このように県福祉事務所の提供する情報は正確性を欠いている、あるいは内容が不十分なもの、そして福祉事務所ごとにも内容のばらつきがあると指摘がされています。県の福祉事務所の生活保護のしおりの内容を精査し、統一すべきと考えますが、健康福祉部長に伺います。
- 【笹渕健康福祉部長】
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生活保護のしおりの内容の統一についてでございます。
生活保護制度において、相談者に法律の趣旨や制度の概要を丁寧に説明し理解していただくことは、支援の第一歩として非常に重要であると考えております。
各福祉事務所では、具体的な支援内容や手続の流れなど、相談者がご自身の状況に照らして理解いただけるよう工夫して生活保護のしおりを作成しており、県としても、毎年の監査においてしおりの内容が適正であるか確認しているところでございます。
議員ご指摘のとおり、県内統一の資料を使うことにより、説明のばらつきが減ったり、対応の質が安定するというメリットがあると考えられます。
一方で、指定医療機関の情報や、自治体独自の支援制度など、福祉事務所ごとに地域の実情に即した情報を掲載することで、情報量や内容に差が生じるものの、相談者の安心感につながるということもあるかと考えております。
県といたしましては、相談者が制度を正しく理解し、安心して利用するためのツールとして分かりやすい生活保護のしおりになるよう、福祉事務所の意見も聞きながら記載内容について検討してまいります。
以上でございます。
- 【和田明子議員】
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生活保護受給者の生活実態を把握してほしいということでありますけれども、お隣の山梨県は、今年2月から3月にかけて県独自で緊急的に実態調査を行いました。
調査方法は国が令和4年に実施した家庭の生活実態及び生活意識に関する調査の調査票を使用したということであります。3年前と今年を比較してみますと、1日1食以下が6%から14%に増え、毎日入浴は49%から22%に減るなど、3年間で生活実態が以前より大変苦しい状況に陥っている世帯が増えていることが明らかになりました。親戚や知人とのつながりや社会参加の機会も減るなど、生活保護受給世帯が置かれている困難な状況が浮き彫りになったとまとめております。
実態を把握、調査して、生活保護費の遡及支給にとどまらず、物価高騰に対する基準の引き上げが必要と思います。国に求めていただきたいと思います。
さらに、エアコンをちゅうちょせず使用してくださいと呼びかけがされましたが、環境省の統計では、熱中症による死亡者の85%がエアコンを使用していなかったという深刻なデータもあります。電気代を心配せずエアコンを使用するには、夏季加算も緊急課題です。ぜひ要望に加えていただきたいと思います。知事には、積極的にまたエアコン設置に向けてお取組を進めていただきたいと思います。
県立高校の空調設備について
- 【和田明子議員】
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次に、県立学校の空調施設について伺ってまいります。県立学校の空調施設、エアコン整備について、一昨年、昨年に続き今年も質問させていただきます。
気象庁によりますと、今年の夏は平年と比べて2.36度高く、統計を取り始めてからこれまで最も高かった去年、一昨年を大幅に上回ったとしています。7月30日のロシア・カムチャツカ半島付近で発生した地震による津波避難では、体育館に避難していた方々の中から熱中症搬送が11人と政府の会見があり、学校体育館の熱中症対策が改めて課題として浮き彫りになりました。
避難所ともなる学校施設におけるエアコン設置について、知事は、避難生活という観点からも必要だというふうに昨年ご答弁がありました。
命を守る上で重要になっていますので、県立高校のエアコン設置状況について教育長に伺います。
特別教室のエアコン設置についてです。昨年までに県立高校の特別教室のエアコン設置は46.5%でした。改めて県立高校の特別教室。音楽室、家庭科室、理科室の各室、図書室、コンピューター室、教育相談室、空調設備の設置の状況をお伺いします。
また、職員室、保健室の設置状況についてもお伺いいたします。
- 【武田教育長】
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県立高校の空調設備についてのお尋ねでございます。
まず、県立高校の特別教室等への空調設備の設置状況についてでございます。令和7年8月1日現在の設置率でございますが、音楽室が96.9%、家庭科室が30.7%、理科教室につきましては化学教室が75.0%、生物教室が76.5%、物理教室が29.7%、地学教室が31.0%です。図書館は98.8%、コンピューター室が98.2%、教育相談室が42.6%でございます。職員室は60.7%、保健室は98.9%となっております。
- 【和田明子議員】
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体育館・武道場へのエアコン設置についてお伺いしてまいります。
昨年武田教育長は、「体育館へのエアコン整備の検討状況についてのお尋ねでございます。
県立高校においては、高校再編に伴い、改築が必要な5校の体育館において、断熱材や断熱ガラスの設置、断熱塗装等を進めており、このことにより日中の室温上昇を抑える効果が期待できると考えております」とご答弁でした。
高校再編に伴う改築は進んでいるのでしょうか。昨年度からの進捗状況についてお伺いします。
- 【武田教育長】
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高校再編に伴う体育館の断熱化を含めた改築の進捗状況についてでございます。議員ご指摘のとおり、高等学校の再編統合校の中で、改築を予定している小諸新校をはじめとする5校の体育館において、断熱化の計画が具体化しているところでございます。このうち小諸新校については、令和8年度中の供用開始に向け、体育館の建設工事を進めているところでございます。その他の4校につきましては現在、建設工事に向けた設計業務を進めているところでございます。
いずれの学校におきましても、外壁、天井、窓をそれぞれ断熱性の高い仕様とすることで、外気温の影響を抑える効果を見込んでいるところでございます。
- 【和田明子議員】
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高校再編に伴い改築が必要な5校と言われております。では、再編の対象にならない県立高校について、体育館へのエアコン設置を今後どのように進めるのか、空調設備設置の計画を策定するべきと考えますが、方針を教育長に伺います。
- 【武田教育長】
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再編対象外の高校への体育館空調の設置方針についてでございます。
県立学校体育館への空調設備の検討については、県内外の体育館を視察するとともに、構造や面積等が異なる県立特別支援学校3校の体育館をモデルとして、冷暖房効率や費用対効果などの観点から、空調設備の設置及び断熱改修の手法や効果を比較検証する調査の委託契約を締結し、調査に着手したところでございます。
県立高校体育館への空調設置についても、この調査結果を踏まえ、整備の必要性や効果を見極めながら優先順位を定めて適切な整備を検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。
- 【和田明子議員】
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ご答弁ありがとうございました。
特別教室のエアコン設置整備率、去年の46.5%から今年はそれぞれ個別にお聞きしました。
高いものから、まだ30%、20%というところもありますので、順次これを進めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
改めて、高校体育館、武道場へのエアコン設置は、この猛暑の中から生徒の命と健康を守るための教育環境を整えるために必要と思い、私は重ねて知事にお伺いしてまいります。
昨年は愛知県が2024年度から4年間で180億円予算をつけ、エアコン設置を始めていくということを申し上げました。実際に去年と今年でどうなっているのか、私たち共産党県議団は8月28日、愛知県へ視察に行ってまいりました。
愛知県教育委員会は、近年の猛暑を踏まえて熱中症対策を進めるため、2024年度から2027年までの4年間で愛知県全ての県立高校体育館・武道場に空調設備を順次整備する計画に沿って、昨年度は36校74棟、設計・施工、整備費は44億7,000万円、今年度は約48億円で34校で、設計・施工。ほぼ計画とおりに進めておりました。
当日、私たちの視察先は愛知県立愛知総合工科高校でありまして、工業教育の拠点だと紹介されました。8月28日はちょうど2学期の終業式で午前中体育館で始業式を行ったそうです。私たちが伺った午後は体育館で部活動をしておりました。愛知県では体育館の断熱対策に先行してエアコン設置を進めています。エアコンはバスケットリンクと同じくらいの位置に取り付けられて、運動などの妨げにはなっていません。体育館の断熱工事がなくても十分にエアコンが効いていて快適でありました。
猛暑の中で命と健康を守ること、体育と部活動などの教育活動を継続するためにエアコンは必要と校長先生は言われておりました。大村知事は、生徒を待たすわけにはいかない。4年間で設置を決めたこともその際にもお聞きをしました。
財政的に容易ではないこと、制約は分かりますが、災害級の猛暑が続く中、命の危険と言われる状況です。教育の継続はもとより、命を守るための空調設備整備の必要性が高まっています。県として整備の実施を決断するべきではないか、知事にお伺いいたします。
- 【阿部知事】
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県立高校の空調設備についての見解ということで、私の決断、決断と言われますが、何か私が止めているかのような誤解を生じる質問ではないかなというふうに思います。
先ほどから申し上げているように、生活保護も含めて空調設備の必要性というのは、これまで以上に高まってきているというふうに思っています。
ただ先ほど来、教育長からもご答弁申し上げているように、教育委員会においては整備の必要性とか効果とか、当然これは県民の皆様方の税金を使うわけですから、暑くなったからコストの問題とかどういう手法がいいか検討せずにどんどんやりますというわけには、それは無責任という話になってしまいますので、そういう意味では教育委員会に今しっかり検討して考え方、方針を整理してもらいたいというふうに思っています。
その上で、私としては教育委員会の考えをできるだけ尊重しながら、一方で県全体の財政の状況もありますから、そうしたことをしっかり考慮に入れた上で判断をしていきたいと考えております。
以上です。
- 【和田明子議員】
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知事が決断しないのがいけないと言っているわけではありませんので、あしからず。
高校へのエアコン設置に対して、国の補助は実はないというふうにお伺いしております。一方、義務、小中ですね。国の補助があってその補助を使ってエアコン、断熱などの工事を進めると、この際には断熱対策をやるということが一応要件に入っています。高校はその要件がないわけですから、エアコンを断熱対策よりも先に先行させる、そういう発想の転換をするということがどうかということを私は提案させていただきます。
この断熱工事をしないでエアコンをつけていくということで、一度そろばんを弾いてみてはいかがか。県外のそういう施設も調査、視察をしていただいているようですので、ぜひそういうことも兼ねて調査をしていただいて、できるだけ早く計画的に短期間に設置していただければ、高校生は本当によい環境で学べると思いますので、そのことをお願いをいたしまして、質問を終わります。