日本共産党長野県会議員団

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議会質問

2025年9月定例会 山口典久議員一般質問

  1. 公共交通(バス路線)の確保と利便性の向上について
  2. リニア中央新幹線工事の要対策土問題について
  3. 地方創生と長野県の将来について

公共交通(バス路線)の確保と利便性の向上について

【山口典久議員】

 日本共産党県議団の山口典久です。
 最初に、公共交通(バス路線)の確保と利便性の向上について質問します。
 今年3月に長野市の民間バス6路線の廃止が公表され、中山間地の高齢者、また高校生など日常生活の足の確保が大きな問題になりました。この6路線は、それぞれ市営バスや乗合タクシーに切り替えて運行することになりましたが、利用者の間では、利便性の後退が指摘されているところです。
 さらに、8月には新たに屋代須坂線の減便や撤退を含めた見直しが公表され、諏訪市でも路線バスの再編成が行われる計画と聞いています。ルートやダイヤの再編も含め、県民の暮らしや産業を支える重要な社会インフラである公共交通、バス路線の在り方が、今、問われています。
 県内のバス路線の現状について伺います。
 政府が発表した25年版「交通政策白書」によれば、2023年度に廃止された全国の路線バスの距離は2,496キロで、前年度の1.5倍に一気に増加しています。事業者の経営悪化が目立ちます。バス車両30台以上を保有する217業者のうち、23年度の経常収支が黒字になったのは僅か26%とのことです。
 2019年度以降、この5年間で、長野県内で廃止された距離、事業者の経営悪化の状況はどうでしょうか。また、運転手の高齢化、給与が低いことなどによる運転手不足が問題になっていますが、長野県内の運転手不足の実態について伺います。

【村井企画振興部交通政策局長】

 私に質問をいただきました。
 県内路線バス事業の実態についてのお尋ねであります。
 まず、県内バス路線の廃止の状況につきましては、その後代替手段が確保されているものがありますけれども、令和元年度からの5年間で合計707キロメートルの路線が廃止となっております。
 続きまして、事業者の経営状況につきましては、把握できている範囲になりますが、県が運行欠損費を支援する路線バス事業者7社のうち6社において令和5年10月からの1年間の営業損益が赤字となっております。
 運転手不足につきましては、事業者からは運転手の超過勤務や休日出勤等によりバス路線を何とか維持していると伺っておりまして、さらなる担い手確保の取組が必要な状況にあります。

【山口典久議員】

 長野県は、これまでもバス路線に対する赤字補塡や県がバス車両を購入し事業者に貸与する県有民営方式、事業者の運転手確保の支援などに取り組んできましたし、市町村も各種の対策を講じてきました。
 しかし、このままではバス路線の廃止・減便が雪崩を打つ「交通崩壊」が現実となりかねない危機的な状況であると考えますが、現状に対する県の認識を伺います。

【村井企画振興部交通政策局長】

 県内バス路線の現状の受け止めについてであります。
 県では、これまでも国と協調した運行欠損機補助や人材確保に向けた支援など、路線バスの維持確保のために積極的に取り組んできたところであります。
 しかしながら、人口減少に伴う利用者の減少や運転手不足等によって、県内各地でバス路線の廃止・減便が相次いでおりまして、県の地域公共交通計画で掲げている通院・通学・観光の移動保証や、その品質の確保が困難になりかねない状況であり、深刻に受け止めております。
 地域公共交通を今後とも持続可能なものとしていくためには、公的関与を強化することが必要であり、こうした考え方の下、信州型広域バス路線支援制度を構築するなどの取組を進めているところであります。

【山口典久議員】

 令和6年6月に長野県地域公共交通計画が策定されました。計画は、地域公共交通を民間業者の自助努力のみで維持していくことはもはや困難であり、官民連携の下、行政の主体的な関与により、地域公共交通の維持・発展、利便性の向上を図るとしています。
そして、「必要な移動の保証」を掲げ、通院は圏域の中核的な医療機関に午前中に通院でき午後の早い時間に帰宅できること、通学は始業前に登校できて下校は授業終了後、課外活動終了後に帰宅できることなどを挙げています。
 一方で、この間、廃止路線で代替手段が確保されても、高校の休憩時間や部活動などの活動時間の見直しを余儀なくされたり、土日が運休となる、また、路線が短縮されて乗り換えが必要になる事態も生じています。
私がお話を伺った方は、中山間地にお住みで、免許証を返上し、ご夫婦共にバスに頼っています。買物や行事への参加、文化活動などを制限されるとお困りでした。社会から取り残されたようだという声も聞いています。
 このような実際は、移動が保証されているとは言い難い路線もあるのです。
そこでお聞きいたします。設置された公共交通活性化協議会では、住民参加と住民の声の把握を進め、市町村、福祉や教育関係等と認識を共有した上で、課題の解決や要求実現に向けた取組を強めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

【村井企画振興部交通政策局長】

 公共交通活性化協議会における住民意見の十分な把握についてであります。
 路線廃止等に伴う代替手段の検討に当たりましては、住民の声を十分に把握することが極めて重要と認識しております。
 バス路線廃止に伴う代替手段につきましては、地域振興局単位で設置されている長野県公共交通活性化協議会地域別部会において議論をしております。この地域別部会には、市町村や交通事業者だけでなく、PTAやシニアクラブ等の代表者にもご参画をいただきまして、住民目線からのご意見を頂戴しているところであります。
 また今年度、事業者から見直しの申し出がありました屋代須坂線の代替手段の検討におきましては、関係市町村とも連携しまして、沿線の高校に通う生徒や病院利用者の実態を調査しているところであります。
 引き続き住民の皆様のご意見を丁寧に聞きながら、代替手段の検討を進めてまいります。

【山口典久議員】

 通院や通学に係る定期代など経済的負担を軽減することが欠かせなくなっています。例えば、通学定期代が毎月3万円以上になる地域もあります。また、相次ぐ運賃の引上げによって負担が重くのしかかっています。通院や通学に係る定期代など、経済的負担の軽減策を地域公共交通計画のサービスの品質向上にしっかり位置づけて積極的に取り組むべきと考えますが、いかがでしょうか。以上、交通政策局長に伺います。

【村井企画振興部交通政策局長】

 利用者の経済的負担の軽減についてであります。
 公共交通にかかる運賃につきましては、通院や通学で長距離の移動する方々などから、高額な運賃が負担という声があることも承知をしております。こうした中、交通事業者におきましては、定期券の通学割引等を自らの負担で実施しておりますほか、行政においても一部の市町村が地域の実情に応じ、高齢者や高校生への運賃助成を行いまして、利用者の負担軽減を図っているところであります。
 県では、公共交通に対して行政の関与を強化するという方針の下、信州型広域バス路線支援制度の創設など、事業者の経営基盤の強化を図るための支援策の充実や、国に対して交通事業者が行う学割等の公的性質を有する運賃割引への支援について、速やかな検討を求める旨の要望などを行っているところであります。
 こうした取組を通じまして、利用者の経済的負担の軽減につながるような環境整備に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。

【山口典久議員】

 県は、路線バス事業者への独自支援策として、運行経費の半分に加え、運転手の処遇改善を支援していく「信州型広域バス路線支援制度」を創設したところです。今までの枠を超えた取組として、バス路線の確保と利便性の向上に寄与することを期待するものです。
 一方で、自治体内を走行し地域内の移動を支える国の「地域内フィーダー系統補助」には、補助対象が限定的であること、予算の制約があり、執行額は申請額の半分にも満たないなどの課題があると聞きます。国に対して申請額の満額交付や補助率の引上げなどを求めるとともに、都道府県が「地域公共交通を守る基金」を設置できるよう要望すべきと考えます。
 知事は、令和4年2月定例会で、小林君男議員の質問に対して、公共交通の未来に向けて、一過性の支援ではなく、日本の国土、人口構成の変化、地域の将来像などを踏まえ、抜本的な仕組みや支援策を国に求めたいと答弁されていますが、その後の状況について、阿部知事に伺います。

【阿部知事】

 私には、東京交通に関連して国に対してその後どう支援策を求めるのかというご質問でございます。
 地域公共交通に関しては、何度もこの場でも申し上げているとおり、これまでの仕組みではもう限界だというふうに思っております。これまでの公共交通は事業者の自助努力を基本にして、ご質問にあったように支援も欠損補助を基本として行われていたわけでありますが、そもそもそうした発想では、もう地方の交通は成り立たないというふうに思っております。
 一方、地域の皆様との暮らしは、病院に行くにしても高校に通うにしても、公共交通がなければ本当に生活自体が成り立たないという状況になっておりますので、そういう意味で、私からは、特に今、国土交通省の交通政策審議会地域公共交通部会に臨時委員として参画をさせていただいておりますので、強く国に対して発想の転換を求めさせていただいているとこであります。
 具体的には、特に都市部と違った地方においてはパラダイムシフトが必要だと、これまでの発想を抜本的に転換して、事業者の自助努力を応援するのではなくて、行政が主導する取組に変えていく必要があるということ、それから公共交通の支援に係る国の予算については、飛躍的に増大させるべきことなど、私どものほうで出した提出資料で、例えば令和7年度の国土交通省の予算を見ますと、道路関係予算が約2兆3,000億円、地域公共交通関係予算、昨今は社会資本整備交付金も活用できるようになっておりますが、こうしたものを除けば209億円。2桁違う状況です。
 道路整備も必要でありますが、道路だけつくってバスも走れないような地域をどんどんつくってしまって本当にいいのかというのが私の問題意識でございます。
 それから、やはり交通体系については中央集権的な観点ではなくて、もっと地域で責任を持って決められるように権限を委ねてもらいたいと。法定の協議会もあり、関係の皆様方が集っているわけでありますので、やはりぜひ国の機関が許認可をするということよりも、むしろ民主的な仕組みにもっと委ねてもらいたいということ。この発想の転換による行政主導、それから予算の飛躍的な増大、さらにはもっと地方に決定権を委ねると、この大きく3点を訴えさせていただいております。
 つい最近もその議論の中間取りまとめの案が示されたわけでありますが、その際にも改めてこうした主張をさせていただいたところであります。どうしても予算の関係ともなると、各省庁が財務省に気を使うのか何か分かりませんけれども、はっきりとしたことを書かない傾向がありますので、事務方が入れにくくても、長野県の知事はこういった主張していたということでいいから記載してもらいたいということで主張をさせていただいたところです。ちょっとまだどうなるか分かりませんけれども。かなりそういう意味では強く求めさせていただいているところでございます。
 引き続き、国に対してはこの公的関与を強化、それから財源の拡充、さらには公共交通の維持確保を図っていくための権限については、もっと現場に近い協議会あるいは都道府県に委ねてもらうように強く求めていきたいと考えております。
 以上です。

【山口典久議員】

 路線バスの運転手の不足の問題について一言提案をさせていただきたいと思います。運転手に直接届く支援として、つまり経営基盤の強化はもちろん重要ですけれども、ダイレクトに運転手に届く支援として、県が給料に1人当たり年間20万円上乗せしているところもあります。特に自治体内の路線に関しては、長野県でもこうした直接支援の在り方をぜひ検討していただきたいと思います。

リニア中央新幹線工事の要対策土問題について

【山口典久議員】

次に、リニア中央新幹線工事の要対策土問題について質問をいたします。
 リニア中央新幹線で飯田市に計画している長野県駅周辺の橋脚工事で、基準値を超える自然由来のヒ素などを含む要対策土が投入されています。また、豊丘村本山の発生土置場でも要対策土を処分する計画が明らかになっています。
豊丘村本山の発生土置場は、伊那山地トンネルで発生した要対策土1.5万立方メートルを盛り土造成に活用するものです。JR東海は、要対策土には重金属の流出を抑制する不溶化、つまり溶けないようにする、そして固化、固める、そして被覆シートで覆うなど対策を講じると説明をしています。しかし、現地でお話を伺った「豊丘村の水を守る会」などの皆さんは、不溶化材の酸性雨による溶解、境界層の劣化による基礎の漏出の危険性などを指摘しています。
 豊丘村は、水道水の96%を、本山含め地元の山地の地下水に依存をしています。発生土置場は保安林が解除されたとはいえ、周辺は水源涵養林であり、地下水を下流域の住民に供給する山地です。ヒ素等が漏れ出せば、水道水や農業用水、生活用水を汚染する可能性が高く、また本山最下流部の調整池付近には、活動度Bの活断層が確認されています。
村全体に関わるこの計画に、住民の不安が広がり、埋立処分をしないよう求める署名は短期間で500筆以上集まっています。
 そこで要対策土の搬入は、地元の本山地縁団体の総会では受入れが賛成多数だったと聞きますが、今後の環境影響評価の手続について、環境部長に伺います。

【小林環境部長】

 豊丘村本山の発生土置場への要対策土搬入の計画に係る環境影響評価手続についてのお尋ねを頂戴しました。
 現在のところではJR東海から、当初計画の変更に係る環境保全計画書は提出されていないという状況でございます。今後JR東海から計画書が提出された場合、平成26年3月の環境影響評価準備書に対する知事意見の通知を踏まえまして、環境影響評価技術委員会での審議等、必要な対応を図ってまいる所存でございます。
 以上でございます。

【山口典久議員】

JR東海が令和元年8月に作成した「豊丘村発生土置場(本山)における環境保全について」では、「土壌汚染対策法に基づく土壌溶出量基準を超える自然由来の重金属等を含む発生土は搬入しない」と明記しておりました。ところが今年5月以降、豊丘村リニア対策委員会、全村民対象のJR東海の説明会、地縁団体総代会等で要対策土の搬入の意向が表明されました。
当初の計画に反して、要対策土を搬入することは重大な方針転換です。住民の間では、なぜ搬入することになったのか、飯田市の松川工区や南木曽町から出た要対策土は県外へ搬出したのに、なぜ本山で処理するのかなどの疑問があります。ところがJR東海からは全くこの説明がなく、当然ながら住民から経過や理由の説明を求める厳しい声が上がっています。
 そこで、本山発生土置場への搬入について、長野県には報告や説明があったのか伺います。
加えて、情報公開や説明責任を果たさないJR東海の姿勢は、これまでも度々問題になってきました。それは、長野県も直接JR東海に指摘してきたことだと思います。今回の件について、県の見解と対応を伺います。

【室賀建設部リニア整備推進局長】

 私に質問いただきました。
 豊丘村の本山発生土置場への要対策土搬入の計画についてです。
 JR東海では、伊那山地トンネル坂島工区において、当初から要対策土を判定するための試験を実施することとしておりました。その一方で、トンネル区間内の構造物上面、上端から地表面の深さ、いわゆる土被りが深いなどの理由によりまして、令和元年8月にJR東海が公表いたしました環境保全についての計画の時点では、要対策土の発生の有無や、発生量を予測することも困難であるため、豊丘村本山発生土置場に要対策土を搬入する計画とはしておりませんでした。
 その後、当該工区で要対策土が発生したことから、JR東海では本山発生土置場にも要対策土を搬入するよう計画を変更する方針と聞いております。
 この豊丘村本山発生土置場への要対策土の搬入に関しましては、県も地元説明会に出席をしてその内容は承知をしております。なお、JR東海からは、今後、地元の地権者団体との協議の内容について報告や説明を受けることとしております。県としましては、地域の皆様の不安払拭が重要だと考えております。そうした声に対しまして丁寧に説明し、理解を得る必要があると考えていますので、JR東海に対して、地域の皆様への一層の丁寧な説明を求めてまいります。

【山口典久議員】

 長野県内の発生土は約930万立方メートルと言われますが、要対策土は今後さらに発生することが見込まれます。県内での発生量の見込みや処分方法について、JR東海から長野県に対し、どのような説明があったのでしょうか。併せて県はどのように対応されるのでしょうか。
以上、リニア推進局長に質問をいたします。

【室賀建設部リニア整備推進局長】

 リニア中央新幹線工事の要対策土の発生の見込みについてです。
 JR東海ではリニア中央新幹線のトンネル掘削による発生土につきまして、掘削後に試験を行い、要対策土に該当するか判断することとしております。このため、事前に要対策土の発生量の見込みを示すことが難しい旨、JR東海から説明を受けているところです。
 一方で、県としましては、工事の進捗に伴い、要対策土の発生が見込まれる場合は速やかに地域の皆様に説明するとともに、その要対策土の処分、使用、それに対する管理方法を丁寧に説明し、工事進捗にもできる限り影響が出ないよう取り組むことが必要と考えております。
 今後、県内で要対策土の使用が計画される場合には、地域の皆様の不安払拭のために必要な対応を行い、十分な理解を得ることをJR東海に対し引き続き求めてまいります。
 以上です。

地方創生と長野県の将来について

【山口典久議員】

 地方創生と長野県の将来について質問します。
 2014年に始まった「地方創生」の大目標は、出生率の引上げと東京一極集中の是正でした。しかし、国の出生数は2015年に100.6万人が2022年には80万人以下となりました。本県の出生数も減少が続き、少子化に歯止めがかからず、総人口は200万人をついに割り込みました。
 東京圏への転入超過は、19年には13年の1.5倍になり、コロナ禍で若干抑制されましたが、23年には再び増加しています。一方、長野県の人口移動を見ると、若者の転出超過が大きく、特に女性の転出が目立ちます。
 この深刻な人口減少や一極集中を招いた要因について質問いたします。
 この間政府は、大都市圏においてデジタル化や大型開発を進めて、「世界で戦える国際都市」「稼げる都市」づくりを加速させてきました。結局、一極集中が一層進みました。
 一方、地方では「デジタル化の推進などによって、どこに住んでいても仕事や勉強ができ、必要な医療や福祉が受けられる」としてきましたが、実際はその逆の事態が進行をいたしました。公共施設等管理計画で、公営住宅、集会所やプールなど次々と廃止され、学校の統廃合も進められました。都市部との賃金の格差、公共交通の衰退など、地方で暮らし続けることがより困難になりました。
 こうした深刻な事態を招いた要因について明らかにしていくことは欠かせません。「地方創生」の看板で、効率優先、自己責任を強調する新自由主義的な考えが、人口減少や東京一極集中と過疎地方の疲弊を招いた根本的な要因と考えますが、いかがでしょうか。

【阿部知事】

 私には地方創生と長野県の将来についてということでご質問いただきました。
 地方創生についての見解というご質問でございます。
 これまでの取組、各自治体が主体的に行う創意工夫を凝らした取組を国が後押しするという基本的な国の考え方の下で進められてきたわけでありまして、県や市町村が主体的に地域課題の解決に取り組んできたというふうに考えております。
 本県においても、例えば昨年度の移住者数が過去最多3,700人を超えるといったような状況など、地方創生の取組は一定の成果が上がってきているというふうに考えております。また、この地方創生の取組は、単純に新自由主義的だというふうにも私は考えておりませんので、そこはちょっと見方が違うのかなというふうに思っております。
 しかしながら、これまでの取組の中で東京圏への過度な一極集中であったり、あるいは少子化に歯止めをかけるといったようなことまでには至っていないわけでありまして、こうした点については、さらに踏み込んだ取組対策が必要だというふうに考えております。
 企業や大学の地方の移転であったり、あるいは子ども医療費助成等のナショナルスタンダード化であったり、こうしたことを進めていかなければいけないわけでありますが、私としては地方の主体性を尊重していくというこれまでの姿勢は重要だというふうに思う反面、やはり国が責任を持って行うべきことは、やはり国も当事者、メインの役割を果たしていただくという姿勢がないと、地方に任せるだけではなかなか地方創生が進まない部分もあるのではないかというふうに思っております。
 今後とも国の考え方に従うということだけではなくて、長野県独自の視点もしっかり持ちながら、長野県が持続可能で活力ある地域となるように取り組んでいきたいと思っております。

【山口典久議員】

 知事は、6月定例県議会の議案説明で、「急速に子どもの数が減少する中で、子どもの医療費や保育料、学校給食費の負担軽減といった子ども子育て支援の根幹に関わる行政サービスについては、居住地に関係なく等しく受けられることが望ましいと考えます。このため国に対しては、全国的視野に立った責任ある対応を強く求めるとともに、地方税財源の偏在是正についても積極的に問題提起を行ってまいります」と述べられました。
 しかし一方で、学校給食費の負担軽減は、与党内でも一定の合意がされましたが、まだ動き始めていないようです。ほかにも、子育て支援は十分に進んでおりません。全国知事会長としての立場を踏まえ、学校給食費を含む子ども子育て支援の根幹に関わる行政サービスの全国一律での実現に向け、県としてどのように取り組んでいくのか。以上、阿部知事の見解を伺います。

【阿部知事】

 学校給食費を含む子ども・子育て支援の根幹に関わる行政サービスの全国一律での実現に向けてどう取り組むのかというご質問でございます。
 これについては、本県でも子ども医療費、あるいは保育料の負担軽減に市町村と一緒に取り組んでまいりました。
 ただ全国的に見ると自治体間の過度の競争を招いたり、あるいは財政力格差によってサービスのレベルが違ってしまったりという全国の視点で見ると課題もあるというふうに思っています。
 そうしたことを考えれば、やはりこれは今申し上げたように、国が責任を持っていただくべき分野だというふうに思っております。全国知事会としても、ナショナルスタンダードとなっているような政策については、国が責任を持って対応するようにということで求めていますしこれまでも、本県としても子ども医療費助成の全国一律制度の早期創設であったり、あるいは3歳未満児の保育料の無償化の早期実現であったり、こうしたことを求めてきています。
 さらに市町村からは、学校給食費について問題提起をいただいていますので、こうした学校給食費の地域の実情に合わせた無償化の実現、こうしたものも国に対して要望していきたいと考えております。

【山口典久議員】

地域医療、介護、学校、公共交通など、存亡の危機にある公共サービスを守り再生することは、安心して住み続けることができる地域づくりのために急務になっています。
特に医療機関においては、病院の6割7割が赤字という経営難です。直接お話を伺ったある病院では、夏の期末手当が大幅にカットされたそうです。処遇の改善が進まず、大勢の職員が離職した病院もありました。また、介護の柱と言われる訪問介護は各地で事業所の廃止、撤退が続き、事業所が一つもない自治体は県内で10自治体を超えています。県民の健康と命に関わる事態であり、思い切った財政支援など早急な対応が求められていると考えますが、健康福祉部長に見解を伺います。

【笹渕健康福祉部長】

 私には、医療機関や訪問介護事業所に対する財政支援などの早急な対応についてのご質問でございます。
 人口減少が進む中においても、県民誰もが安心して生活していくためには日々の暮らしに欠かせない公共サービスの維持確保は重要であると認識しております。
 こうした中、公定価格である診療報酬、介護報酬により運営される医療機関や訪問介護事業所を取り巻く経営環境は、物価の上昇や人件費の高騰など、社会経済情勢の変化を背景に、極めて厳しい状況にあります。
 こうした状況を踏まえて、県といたしましては、適切な診療報酬及び介護報酬の改定を行うよう国に対して要望を行ってまいりました。特に訪問介護につきましては、本年8月12日に知事と共に厚生労働省へ赴き、地域の実情に応じた報酬設定、地方への国費の充実など、制度改善、適時適切な報酬改定の3点について直接要望を行ってまいりました。
 加えて、県としては経営環境が厳しい訪問介護事業所に対し、担い手確保に向けたヘルパー同行支援や経営改善支援、介護職員等の一時金などによる人件費の改善や介護助手を募集する取組などへの支援、処遇改善加算の新規取得に向けたアドバイザー派遣などに取り組んでいるところです。
 また、医療機関への財政支援につきましては、不採算でありながら県民生活に不可欠な医療を確保するため、精神疾患と身体的な病気やけがの両方の治療を必要とされる方を新規に精神病床で受け入れる医療機関に対し助成することとし、9月補正予算案として計上させていただきました。
 さらに、来年度当初予算に向けては、救急医療や周産期医療など、その他の政策医療についても県として必要な支援策の検討を進めてまいります。
 医療・介護のいずれも、次期報酬改定に向けて国で検討が進められているため、その動向も注視しつつ、誰もが安心して暮らし続けられる長野県を目指し、今後も必要な要望や支援を行ってまいります。
 以上です。

【山口典久議員】

 人口減少や一極集中を克服していく上でも、地域医療や介護を守る上でも、根本的には新自由主義的な考えにより失われた公共を地域から再構築していくこと、権限、財源の両面で地方自治を確立していくことが求められていると考えますが、阿部知事の見解を伺います。

【阿部知事】

 新自由主義によって失われた公共を地域から再構築し、権限財源の両面で地方自治を確立していくことが求められると考えるがどうかというご質問でございます。
 急激な人口減少等で、地域社会の在り方、大きく変化をしつつあります。そうした中で県民の皆様方の安心した暮らしを守るためには、先ほどもご質問いただいた公共交通であったり、医療、教育、環境、こうした分野をしっかりと維持発展させていくということが大変重要だというふうに考えております。
 本県はしあわせ信州創造プラン3.0の中の基本目標では、いわゆる社会的共通資本を多様な関係者と共に維持発展をさせていくという方向性を示させていただいております。
 社会的共通資本の考え方は、ご承知のとおり故宇沢弘文先生が提唱された概念であります。若くしてシカゴ大学の教授になられた、日本人としては、本当はご存命であればノーベル経済学賞に最も近い方ではなかったかなというふうに思いますが、かつての同僚であった市場原理主義を進めたミルトン・フリードマンとかなり批判的な論争した方でも知られているわけでありまして、まさにこの社会的共通資本の考え方は経済学におけるいわゆる制度主義の立場に立って、人間的尊厳であったり市民的な権利を最大限守るという仕組みを目指して多様な方々の参加による分権的で民主的な社会的な管理を重視している思想であります。
 長野県としては、こうした考え方を中心にこれからも政策を進めていきたいというふうに思っておりますし、やはり地域の実情は様々違いますので、より分権的な社会の実現に向けても、しっかりと国に対して問題提起を行っていきたいと考えております。

【山口典久議員】

 子ども、そして子育て支援の根幹に関わるサービスについては、国が本当に役割を果たすべきだと思います。同時にそれを進める上でも、地域から地方からの取組をつくっていく、広げていくことが大事だと思います。もちろんそれは財源的な対応措置も必要となります。
 長野県からも大いにこういう根幹に関わるサービスを広げていくことを求めまして、質問を終わります。

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