日本共産党長野県会議員団

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活動報告

新潟県現地調査を行いました

2013.05.23

523日、日本共産党県議団は新潟県の内水対策について調査を行いました。

① 最初に新潟県庁の土木部河川管理課より、洪水被害を抑えるために事業で整備された刈谷田川遊水地の概要説明を受けました。

平成167.13新潟・福島豪雨での水害を受け、県は刈谷田川災害復旧助成事業を行うことを決定。その事業の中で、もともと農地として活用している土地5か所を事業費34億円(工事費25億円、用地補償費9億円)で遊水地として整備することに。用地取得方式は地役権方式です。(地役権は一言でいうと、他人の土地を自分の役に立てるための権利です)遊水地に対する地役権補償は、「現堤防を切り下げ、浸冠水の頻度が以前よりも増加する」ことなど総合的に判断して、補償率35%としたそうです。

 

 遊水地が整備されてから、平成237月に新潟・福島豪雨が襲いました。平成16年の降雨よりも総雨量およびピーク雨量ともに大きかったとのこと。

 

 729日の深夜からの雨で刈谷田川の水位が上昇。早朝530分頃に遊水地越流堤の高さに達して越流がはじまり、約3時間続いたそうです。その後刈谷田川の水位低下に伴い、遊水地内に貯留した流水を放流したとのことでした。

遊水地の洪水調整機能により下流の水位を低減し、下流の外水氾濫を防止。平成16年には浸水面積1153ha、家屋浸水数2558戸だったものが、H23年には確認されず、解消することができました。

一方、遊水地には、020㎝の土砂が堆積、堆積土砂の量は約33,000?に。また流木や浮遊物も堆積し被害を受けました。その他、法面(のりめん)崩壊、農業用排水路が土砂埋没などの被害が。

そこで、遊水地の復旧を応急対応1400万円で、市道や農道に堆積した土砂や流木を除去、公共土木施設災害復旧事業約3億円で遊水地の洪水調整容量を侵している堆積土砂の除去などを行い、遊水地の農地復旧はH24年の作付け前に完了。その後、農地への影響が課題であることが明らかになる中で、この地区の人たちで組織する刈谷田遊水地協議会からの提言が出されました。

県としては、遊水地内で営農が続けられること、つまり遊水地の農地が管理されることが、遊水地機能の確保につながるとの認識から、遊水地内の地権者と耕作者と協力して、遊水地がよりよい形となるよう今後も検討を進めていくそうです。

 

② 県の説明を受けた後、実際に現地へ移動。その前に、「見附市田んぼダム事業」の現地調査に行きました。

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この事業は、田んぼの多面的機能の一つである「貯水能力」を活用して、大雨が降った時に田んぼに一時的に水を貯めることで、河川等への流出量を抑制し洪水被害を軽減する事業です。この田んぼダムの大原則は、「営農に影響を与えない」です。水田遊水地とは異なるとのこと。

 見附市は、平成167.13水害を教訓にして「災害から学び災害に強いまちづくり」を理念に、農地でできる防災事業として取組を開始しました。

田んぼダムのしくみは、河川への流出量を抑制する管を、排水口に設置するというもの。これで田んぼの放流水を調節するそうです。調整タイプは、写真の黒い筒の上の穴と横の穴のあるもの。

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大雨が降ったときこの筒を引き上げると、田んぼの水は横の小さい穴から用水路に流れ出します。そして田んぼは通常の水位(10センチ程度)から畦畔(けいはん)の高さ(約30センチ)まで水を溜めます。これが、広大な田んぼ全体で貯めることでダムの機能を発揮します。

しかし、田んぼダム機能を発揮させるためには、農家のみなさんが調整管の高さを調整する必要があるため、その操作をするかしないかによって田んぼダムの効果が変動してしまうという課題がありました。そこで新型調整管見附モデルを開発したそうです。

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真ん中の赤い筒のものがそうで、雨が降りだしたら筒を高く引き上げるという手間を省いて、なおかつ一定の排水量を保持するため、調整管がどの高さにあっても設置しているだけで100%効果が発揮できる改良型です。

田んぼダムの課題は、取り組みを行う自治体や土地改良区・農家のみなさんの負担が大きいため、今後は国や県の事業化等による支援等が必要、と分析されていました。また市街地等に居住する一般市民の理解と農業者への支援が必要とも。

また、取り組みをする場合のポイントは、ある程度の面積を有している圃場整備地区がのぞましいこと。軽減目的となる河川における田んぼダムの流域面積割合が大きいこと。また下流より上流のほうが、効果が高いとの事です。

取組地区および面積・本数は、一級河川貝喰川流域 県営圃場見附地区約1200ha 約3,000本(3000円/本)を設置。(事業費1500万円 全額見附市単独費)。

新潟大学農学部の研究チームが効果解析を実施。H23年の新潟・福島豪雨災害時のシミュレーションでは100%田んぼダムを実施した場合、被害を軽減した経済的価値は、約3億円!だそうです。

すでにある田んぼを生かしたコストの掛からない事業でした。

③ 次に、午前中に説明していただいた、刈谷田川の遊水地へ移動。現地で説明を受けました。

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信濃川の支流、刈谷田川(写真右手)の遊水地(写真左手)と刈谷田川から遊水地に水が流れ込むために堤防を低くした越流堤です。洪水になったらこの越流堤から川の水を遊水地に入れることで、洪水の量を減らし、下流で堤防が崩れたり、堤防から水が溢れたりすることを防ぐものです。

遊水地完成の翌年、H23年の豪雨でさっそくその効果を発揮した一方、農地の被害、堆積した土砂の粒子が細かすぎて処分に困った事、その土砂に交じって細かい木くずが田んぼの稲刈りの作業に支障をきたして大変だったことなどあったそうです。県の担当者さんは、地権者や耕作者のみなさんに「たくさんお叱りを受けました」そうですが、そうしたご意見を受けとめ、さらに遊水地機能を充実させ、農地と両立できるようにしていきたいと話されていました。(藤岡議員報告より)

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